719系5000番台「山形線」

719系5000番台「山形線」

山形新幹線の開業に伴って、既存の在来線車両が入線できなくなる改軌区間(→「備考」も参照)ローカル輸送を担うために1991年に登場したのがこの719系5000番台です。

台車が標準軌(1,435mm)なのを除けば、基本的な仕様は719系0番台とほぼ共通。仙台地区で運用されていた0番台が2020年に、改造車の「フルーティアふくしま」が2023年に引退した後は、唯一の719系列となりました。

2024年で登場から実に33年ですが、福島~米沢~山形のほか朝夕は新庄まで顔を出すなど山形線全線で運用されています。さっそく車内を見ていきましょう。

【備考:新幹線と在来線で異なる軌間幅】

山形新幹線は、既存の在来線の軌間(1,067mm)を新幹線のそれ(1,435mm)に広げて乗り入れを可能にした所謂“ミニ新幹線”です。在来線の設備をほぼ活かしながら新幹線車両を直通させられるメリットはありますが、代わりにこれまで使っていた車両は一切入線できなくなります。

719系5000番台は、山形新幹線と線路を共用する区間のいわば“専用車”として登場。同様の例として、秋田新幹線との線路共用区間で運用される701系5000番台が存在します。

モケット

(左)座席 (中)カーテン (右)床

撮影日時・場所

撮影日時:2024年3月

場所:山形線 米沢駅 車内

備考

特にありません。

普通車 車内

車内の様子。

3ドア&セミクロスシート」という基本的な作りこそ211系と同じですが、719系ではボックス席の配置に集団見合い式を採用しているのが特徴です。

天井(左/上)と、ベンチレーターのアップ(右/下)。

天井中央に等間隔で並ぶ吹出口のようなものは、いわゆるベンチレーター(通風孔)。他方、空調の吹出口はベンチレーターの左右に2列並ぶラインのようです。

ボックス席

719系の車内は、一見単純な作りに見えてけっこう座席がいろいろあるのが特徴です。まずはボックス席から。全景(左/上)と2人掛け部分(右/下)。

座席の作りはモケットを除き、211系と全く同一の作りになっています。身体が直立気味になるほど角度の浅い背もたれ、ヘタった詰め物に腰かけた時のバフッとした感覚(語彙力)あの座り心地まで同じです(→「備考」も参照)。

【備考:719系のシートピッチ事情】

シートピッチはボックス席が1,490mm(113系2000番台以降の標準)、2人掛け席が845mm。2人掛け席はボックス席のそれを2で割った数値(745mm)から+100mmのシートピッチが確保されており、開発者のささやかな“心遣い”のようなものが垣間見えます。

とは言っても着座した時の視界は「すぐ目の前にFRPの仕切りが845mmのシートピッチでそびえ立つ」であり、視覚上(と物理的にも)あまり広いものではありません。

個人的には、ラッシュ時ならロングシート・閑散時間帯はボックス席1人占めが快適かなというのが本音です。

座席を正面から見た様子(左/上)と、窓枠のアップ(右/下)。

窓枠部分はフチ部分が若干盛り上がっており、簡易なテーブルとして使うことができます。もっとも山形線内はそれなりに揺れるので、置くのはペットボトルなど栓のできる飲料だけにした方が無難かと思います。

ドア脇ロングシート

変わってドア脇のロングシート(左/上)。

基本的な見付はやはり211系そのものですが、ドア脇には風避けと思われるカバーがついているのが特徴です(右/下)。寒冷地を走る路線柄ゆえでしょうか。

ドア脇優先席

ドア脇の優先席(左/上)と、ボックス席と接する部分の肘掛け(右/下)。

福島寄り先頭車(クハ718)には車端部にトイレがあることから、同車の優先席はこちらに“移動”してきています。モケットが優先席仕様・つり革が黄色いほかは、一般席区画と大差ありません。

車端部 優先席

新庄寄り先頭車(クモハ719)の優先席は車端部にあり、こちらは片側5人がけとなっています。

仕切り部分の風避けは、網棚部分まで続くいわば“フルスクリーン”とも言える構造です。実際に真冬(1月)に乗車した限りでも、ドアが開いたときに寒さを感じたのは足元だけでした。風避けとしての効果はかなり高いものと思われます。

トイレ脇の区画

トイレつきの車端部の様子。

一見なんの変哲もないトイレ脇ですが、座席的に見ればさにあらず。「2人がけロングシート」「3人がけロングシート」「クロスシート半分」と、実に3パターンの座席がこの狭い空間に仲良くおさまっています(笑)。

まずはトイレ脇の2人がけ席から。座席そのものは上で紹介した「ドア脇ロングシート」に同じですが、窓が戸袋窓になっているのに注目です(→「備考」も参照)

【備考:719系の戸袋窓事情】

719系の戸袋窓は「一番前の乗降用ドアと運転台の間」「トイレ脇」に存在します。従って719系において「戸袋窓×ロングシート」の組み合わせは(後述する)運転台直後とこのトイレ脇の区画のみです。

見た目はそっくりながら各ドア脇に戸袋窓がある211系と比較して、719系ではちょっとした“レア席”と言えるため紹介しました。

向かい側の3人がけ席(左/上)と、奥の2人がけ席(右/下)。

奥の2人がけは、なぜかクロスシート(の片割れ)然となっています。そのままロングシートを配置するとトイレに出入りする人と視線が合ってしまいかねず、これを避ける意図があるとのこと。

座席本体はロングシートのそれと同一ですが、通路側は金属パイプによる仕切りなのが特徴です。

運転台直後の区画

運転台直後の全景(左/上)と座席のアップ(右/下)。

他の車両と比較して、運転台との仕切部分の窓がズバ抜けて大きいのが719系の特徴でした。最前のロングシートに座れば、(首を始終ひねっている必要こそありますが)展望席」と言っても過言ではないほどの前面展望が望めたように記憶しています。

しかし2010年代後半から始まったデジタル無線化工事に伴い、運転台内に新たな機器が設置されることに。現在は見てのように助手席側(運転席の向かい側)が黒いテープで目張りされており、かつてのような眺望は望めなくなりました。

ドア

乗降用ドア(左/上)と、ドアボタンのアップ(右/下)。

このドアボタンは、かつて211系(JR東日本の3000番台車)で見られたものと同タイプです。後年211系では新タイプのボタンに順次交換されましたが、この719系5000番台は昔ながらのドアボタンが現在まで残っていました。

その他の車内設備

荷物棚(左/上)と、窓間のコートかけのアップ(右/下)。

通路(左/上)と荷物棚上にある機器箱のアップ(右/下)。

この機器箱は、各車両もっとも運転席寄りのボックス席上に設置されています。見た目には比較的新しそうですが、何の箱なのでしょう?

ゴミ箱・トイレ

トイレ脇のゴミ箱(左/上)と、トイレ内部の様子(右/下)。

719系はJR化後に登場した車両ですが、ベースとなった211系は国鉄時代の設計です。それゆえか、トイレ内部は昔ながらの「列車便所」に近い雰囲気が色濃いのが面白いところです。

おまけ

おまけ。719系5000番台の車内から見るE3系「つばさ」と、山形線の峠駅で買える「峠の力餅」。

峠の力餅」には本店(峠駅で買える力餅)米沢支店(本店から暖簾分けされた分家:米沢駅から徒歩数分)があり、包装や味が異なっています。購入は米沢支店の方が遥かに簡単ですが、両方食べた身としては個人的に“本店推し”です。食べ比べしてみるのも面白いかもしれません。

概説

デビュー年:1991年(719系5000番台のデビュー)

山形新幹線の開業に伴って、標準軌に改軌される福島~山形(あとに新庄)間の普通列車用として1991年にデビュー。

山形新幹線の標準軌に合わせた台車を採用しているほか、車体カラーリングなどが異なっている。2002年以降にY-1~6編成にワンマン化工事(整理券発行機・運賃箱の設置など)が施されたが、それ以外はデビュー時から大きな変化はない。

山形線の福島~山形を中心に活躍しているが、1往復のみ山形~新庄まで乗り入れる運用が存在(ワンマン対応編成のみ)。2024年4月現在、定期運用がある唯一の719系である。

タイトルとURLをコピーしました