14系15形 ブルートレイン「たらぎ」

目次

フロント・共有スペース(オハネ15 6)
B寝台「ソロ」下段(オハネ15 2003)
B寝台「ソロ」上段(オハネ15 2003)
開放型B寝台(スハネフ14 3)
「ブルートレインたらぎ」へのアクセス
人吉IC~人吉駅までの徒歩経路

14系15形 ブルートレイン「たらぎ」

かつて東京と熊本を結んだブルートレイン「はやぶさ」。末期に使用されていたJR九州所属の14系15形を再利用して登場した簡易宿泊施設が、この「ブルートレインたらぎ」です。

この「ブルートレインたらぎ」、(マニア的には)日本唯一の14系15形に宿泊できるという特徴のある施設なのですが、それ以上に“特徴”なのは多良木町が運営しているということ。全国にあるブルートレインの宿でも、自治体が運営に携わっているのはこの「ブルートレインたらぎ」が唯一です。

取材時にスタッフの方に伺ったところ、オープン13年目ながら利用者数は堅調に推移しているそうです。私が取材したのは平日でしたが、B個室「ソロ」は7組、開放型B寝台2組となかなかの盛況ぶりでした(→「コラム」も参照)。さっそく車内を見ていきましょう。

【コラム:ブルートレインたらぎのマーケティング戦略考】

「ブルートレインたらぎ」を運営する多良木町は、「ブルートレインを(単なるマニア向け施設ではなく)宿泊施設としてどう売り込むか」という、言うなればマーケティング戦略を仕掛けているのが特徴です。

多良木町へのふるさと納税返礼品に「ブルートレインたらぎ 宿泊券」があるほか、多拠点生活・ワーケーションのサブスクリプションサービスを提供する「>>ADDress」にも展開。定額料金でさまざまな家やシェアハウスなどに泊まれるサービスで、「ブルートレインたらぎ」は>>多良木A邸として登録されていました。

取材中の私に声をかけてきてくださった宿泊者の方が、まさにこの「ADDress」経由で予約されていたので詳しく伺ったところ、「自分は鉄道に特段興味はないが、昔の寝台列車に泊まれるとは面白そうだと思って、今回泊まってみた」とのことでした。

オープン13年目にして、堅調な数の利用者に支えられている「ブルートレインたらぎ」の今は、こういった鉄道ファン“以外”の層の地道な開拓があってのことなのかもしれません。

客車への入口(左/上)と行先表示(右/下)の様子。

行先表示は、基本的に「はやぶさ 東京」を掲出しているようです。2010年の保存開始からすでに13年(2023年現在)が経っていますが、破れや日焼けもなく非常に良い状態でした。

モケット

(↑)ベンチ

撮影日時・場所

撮影日:2023年5月

撮影場所:くま川鉄道 多良木駅付近 ブルートレイン「たらぎ」

備考

・撮影及び掲載にあたっては、現地スタッフの方から許諾を得た上で行っています。

フロント・共有スペース(オハネ15 6)

「ブルートレインたらぎ」は3両連結となっており、メインの出入口(公式サイトの表現では「正面入口」)フロント・共有スペースを有する2両目脇にあります。

まずはフロント・共有スペースの「オハネ15 6」から見ていきましょう。

【補足:オハネ15 6の車歴】

日 時内 容
1978/07/24落成
早 岐に配置
「あかつき」で運用
1984/02/01向日町へ転属
「あかつき」「明星」などで運用
1986/11/01熊 本へ転属
「さくら」「みずほ」「彗星」などで運用
1997/11/29長 崎へ転属
「さくら」「富士」などで運用
2005/03/01熊 本へ転属
「はやぶさ」「富士」で運用
2009/03/14寝台特急「はやぶさ」「富士」廃止
定期運用消滅
2010/03/05 
2010/07/01「ブルートレインたらぎ」として
多良木駅前で宿泊施設として開業
参考HP:https://www5.big.or.jp/~hagi/rail/lexp/14/

フロント・共有スペースの全景。

寝台は奥の1.5区画を除いて全て撤去されており、代わりにテーブルと椅子を置いてフロント・共有スペースとしています。「ブルートレインたらぎ」では寝台での飲食が禁止されているので、食事や晩酌の際はこちらを利用しましょう(→「備考」も参照)

寝台が撤去されて現役時代とはだいぶ雰囲気が変わっているものの、通路(写真左手部分)や天井に開放型B寝台の面影が残っています。

【備考】

ブルートレインの保存車を活用した宿泊施設は全国にいくつかありますが、この「ブルートレインたらぎ」はフロントが客車内にあるのが特徴です。

他のブルトレの宿のフロントは総じて客車と別の建物内に存在しており、「チェックインから宿泊までが客車内で完結できる」のは「ブルートレインたらぎ」ならではと言えるでしょう。

共有スペース部分を反対から見た様子(左/上)と天井の様子(右/下)。

開放型B寝台時代にあった仕切りの類がほぼ全て撤去されたためか、車内に立ち入ったときの印象は「思った以上に広いに尽きます。

天井を別アングルから見た様子(左/上)と、窓際の椅子を展開した状態(右/下)。

通路上にある荷物置き場は残っており、写真のようにダンボール箱が陳列されていました。スタッフの方に伺ったところ、現在も運営に必要な物品を置いておく「倉庫」として使用しているそうです。

テレビ・ゴミ箱コーナー・パンフレットラックなど(左/上)の様子。

ゴミの分別は「燃えるゴミ」「ペットボトル」「缶」となっており、ゴミ箱が4つ並ぶ割にはそこまで細かい分別ではないようです(笑)。

テレビの下では、「ブルートレインたらぎ」と同じ車両の鉄道模型(Nゲージ)を展示(右/下)。テレビの下に隠れて初見では分かりにくいですが、訪れた際にはぜひ見てみてください。

受付・食事スペース

フロント(左/上)と、フロント周りの設備の様子(右/下)。

フロントは昼間はスタッフの方が常駐しているほか、深夜帯は夜間警備員がこちらに詰めており、事実上の「常時有人体制」が確保されています。フロント脇には冷水器、ポット、トースターなどが備わり、設備面も充実。このように、人的にも設備的にもサービスが手厚いのは「ブルートレインたらぎ」の長所と言えそうです。

客車の窓上には一定間隔で通風孔が新設されており(左/上)、それを外から見た様子が(右/下)。

「ブルートレインたらぎ」に限らず、この手の保存車は法令上「建造物」の扱いになるそうです。スタッフの方に伺ったところ、この客車を移設した際に法令上の要件を満たすため通風孔を設けたとのこと。保存車を宿泊施設にするのも、「ただ置けばよい」とはいかないのが垣間見えます。

デッキの設備

正面入口(フロント・共有スペースのある2号車デッキ)には、見ての通りアルコールスプレーと傘立てが備わっています(左/上)。

傘立てには宿泊者向けの貸し傘もセット済。カサ入れに使用されている箱は、細部の特徴から現役時代はゴミ箱として使用されていたものでしょうか。いまや貴重な「熊本運転所」のシールが残っていました(→「補足」も参照)

【補足:「熊本運転所」】

「熊本運転所」とは、1987年の国鉄分割民営化時にJR九州で発足した機関の名称です。その後1999年の熊本鉄道事業部の設立に伴い「熊本運輸センター」に改称され、さらに2006年には熊本車両センターに改称されました。

このオハネ15 6はJR化後、長崎所属だった1997~2005年を除いて熊本に在籍していましたが、再び熊本に戻った2005年の時点で既に「熊本運転所」の名称は消滅していました。

従って、この「熊本運転所」のシールは1997年以前に貼り付けられたものと思われます。

洗面台

フロント・共有スペース奥のデッキの様子(左/上)。「ブルートレインたらぎ」保存車の洗面台・トイレは使用できず、あくまで「見るだけ」になります。

デビュー当時から大きく手を加えられた形跡はなく、昔ながらの雰囲気が色濃く残っています。私の取材時は、なぜか九州の路線図が洗面台上に立てかけてありました。

宿泊者用トイレ・洗面台

「ブルートレインたらぎ」では客車の洗面台・トイレが使用できないため、隣の「ソロ」のデッキ直結の別棟にトイレ・洗面台が設置されているのが特徴です。

(左/上)が入口、(右/下)がトイレ内部の様子。客車と洗面台・トイレ棟は完全に直結しているため、雨天時でも濡れずに使用できるのはありがたいところです。なお、トイレはウォシュレット付き・男女共用となります。

宿泊時のミニ情報

この項目では、宿泊を検討されている方へのミニ情報として「ブルートレインたらぎ」近隣の施設をご紹介します。

・近隣の食事事情 ~食事~

まずは食料調達事情から。(左/上)は「ローソン球磨多良木店」、(右/下)は「ゆめマート多良木(スーパーマーケット)」になります。

ブルートレインたらぎを出たら右折して踏切を渡って50mほど歩いた交差点脇に「ローソン」、交差点を渡ってから右折すると左手に「ゆめマート」があります。私が歩いてみたところ、「ローソン」は徒歩3分、「ゆめマート」も徒歩5~6分程度でした。

わざわざ遠方まで行ってコンビニ・スーパー飯かよ」というのも分かりますが、(文字通り)食いっぱぐれの心配がないのは本当に安心です。「こだわらなければ食料や飲料は現地調達できる」と言っても、決して過言ではありません。

・近隣の施設 ~お風呂・シャワー~

「ブルートレインたらぎ」にはシャワー・風呂の設備がありません。その代わりとして、宿泊者に近隣の銭湯「えびすの湯」の無料入浴券を1泊につき1人1枚配布しています。

(左/上)が「えびすの湯(写真奥のドーム状の建物)、(右/下)は風呂上がりに過ごせる休憩スペースの様子。見ての通り、「ブルートレインたらぎ」とは目と鼻の先でした(→「注意」も参照)

【注意:お風呂に入りたいなら毎月第二火曜日は要注意】

この「えびすの湯」は、毎月第二火曜日(その日が祝祭日の場合はその翌日)は定休日です。無料入浴券自体はもらえますが、多良木エリアには「えびすの湯」以外の銭湯が一切ありません。

従って毎月第二火曜日チェックインの場合、「えびすの湯」が再びオープンする翌日午前10時までお風呂はお預けとなります。旅程を立てる際は注意しましょう。

・近隣の施設事情 ~レンタサイクル~

おまけ。「ブルートレインたらぎ」にはレンタサイクルがあり、宿泊者は300円・宿泊者以外は510円で1日利用できます(2023年9月現在)

レンタサイクルには「ブルートレインたらぎ」の文字のほか、「10号車」の文字が(右/下)。ブルートレインの客車(1~3号車)だけでなく、レンタサイクルにも「号車」番号が振られているようです(笑)。

おまけ:(懐)特製お弁当

※ 2023年現在は提供されていません。

懐かしい写真を紹介。その昔、「ブルートレインたらぎ」宿泊者向けの朝食「特製お弁当」が販売されていた時期がありました(600円)。

前日までにフロントで予約すると、近所の弁当屋が翌早朝に作りたてを配達。客車をかたどった海苔は、一枚一枚手作業で切られていたそうです。

この朝食弁当は2014年まで提供され、2015年からはフロントでのパン販売に変更となりました。2023年現在ではそれも廃止されており、朝食は上述のスーパー・コンビニほかでの手配が基本となります。

【参考:その他の提供アメニティ・サービス】

設 備有無設 備有無
シャワーパジャマ×
ボディーソープ電子レンジ
シャンプー冷蔵庫×
リンスポット
歯ブラシ
(有料)
トイレ
シーツ手洗い場
(石鹸あり)
▲は近隣の「えびすの湯」にある旨を指す。
※2023年10月現在

このページは6ページ構成です。次は>>B寝台「ソロ」 下段 編です。

目次

フロント・共有スペース(オハネ15 6)
B寝台「ソロ」下段(オハネ15 2003)
B寝台「ソロ」上段(オハネ15 2003)
開放型B寝台(スハネフ14 3)
「ブルートレインたらぎ」へのアクセス
人吉IC~人吉駅までの徒歩経路

概説

デビュー年:2010年(施設)

「ブルートレインたらぎ」とは、くま川鉄道多良木駅前にある簡易宿泊施設。多良木町が運営しており、かつて寝台特急「はやぶさ」「さくら」で使用された14系15形客車を使用している。

編成は3両で、共通スペース、B寝台「ソロ」及び開放型B寝台。開放型B寝台、「ソロ」いずれも宿泊が可能。宿泊に使われる車両の設備はほぼ現役当時のまま残されている。毛布やシーツなどは宿泊料金に含まれているため、持ち込みの必要はない。

宿泊料金は「ソロ」、開放型B寝台ともに同一料金。最寄りのコンビニまでは徒歩10分程度。施設内に風呂はないが、「えびすの湯」(銭湯)が徒歩圏内にある。なお「えびすの湯」は毎月第二火曜日が定休日となっており、その場合は利用できる銭湯が至近にないため、旅程を立てる際は注意したい。

「ブルートレインたらぎ」公式HP:
http://www.bluetrain-taragi.com/

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