113系「SHINOBI-TRAIN」(草津線)

113系「SHINOBI-TRAIN」(草津線)

関西の草津駅と柘植駅を結ぶのがJR草津線ですが、この草津線の沿線には「甲賀忍者」「伊賀忍者」の根拠地があり、近年では「忍者」による町おこしが行われているようです。その一環として、2017年2月に同路線で忍者をテーマにした「SHINOBI-TRAIN」が運行を開始しました。黒を基調に忍者や流線模様が大胆にあしらわれており、一見では113系とは思えないほどに作りこまれたデザインです。

写真は夕暮れの柘植駅で発車待ちの様子。日ごろ緑一色の113系や117系がメインの草津線をメインに運行されているだけに、なかなかに目立つ存在の「SHINOBI-TRAIN」です。さっそく車内を見てみることにしましょう。

車体側面の様子。私は歴史系の知識はさっぱりなので詳しい説明はできませんが(笑)、忍者のシルエットが多数あしらわれているのがお分かりいただけるかと思います。また、ドア脇にも「忍電車」の文字が描かれていますが、こちらも筆書きの字体になっており、細かいところまで凝って作られているのが垣間見えます。

モケット

(左)座席 (中)床材 (右)カーテン

撮影日時・場所

撮影日:2017年6月14日

撮影場所:草津線 柘植駅 車内

備考

特にありません。

車内全景


では車内の様子。「SHINOBI-TRAIN」の種車となった編成は、既に1998年以降から一部の車両に施行された体質改善工事を受けています。そのため、内装は223系と同一の転換クロスシートが展開しており、一見では113系らしさのようなものは全く感じない作りになっています。

「SHINOBI-TRAIN」への改造に伴っての最大の特徴は、車内の中づり広告が全て“のれん”をイメージしたものに交換されていることで、それ以外は他の車両と大きな差はありません(苦笑)。こののれん、よく見るとのれんが捲れている部分から忍者が顔をのぞかせています。元々ブラウンを基調とした車内のためか、こののれんはかなり目立って見えます。

座席

座席に移ります。座席は223系の中でもコストカットが図られた2000番台に準じた座席が配置されているほか、近年他の223系などと同じくモケットの交換が施されています。座り心地は草津線としての利用時間を考えればまぁこんなものか、という感じですが、背もたれが写真で見る以上に“真っ平”に近いので、実際に腰掛けるとどうしても浅く腰掛けざるを得ず、長時間の着座では腰にどうしても負担がかかります。

また、(右/下)のドア脇の座席はご覧の通り、ほぼ直立に近い姿勢を強いられ、写真で見るほど快適ではないのが正直なところです。座席下は空間があるので、下から脚を前席の下まで投げ出す前提なのかもしれません。

座席を向かい合わせにした状態(左/上)の様子。ドア脇の座席は方向が固定されているため、ドア間には片側1区画、このように向かい合わせの区画が発生します。知り合いと座るならまだしも、知らない人4人でこのシートピッチはかなり厳しいものがありますが、取材時に見ていた限りでも始発駅ではこの区画だけなかなか埋まりませんでした。沿線住民の方もそのあたりは心得ているようですね(笑)。

変わって(右/下)はドア脇の仕切の様子。223系ではこの区画に引出式の補助席が設けられていますが、本系列の改造車では省略されています。

車端部

車端部(左/上)とその区画の座席(右/下)。元々この区画は片側ボックス席1区画とロングシート2人がけが配されていましたが、ロングシートは体質改善工事時に撤去され、ボックス席のみとなっています。

フリースペース

草津線を基準とした場合の京都寄り先頭車はトイレが設けられているほか、その向かい側は車いすやベビーカー向けのフリースペースとなっています。こちらの区画、体質改善車では数少ないロングシートがドア脇に残っているのが特徴です。

で、そのロングシートの様子(左/上)。座席下がふさがっており、また座面・背もたれともに成型されていない旧態依然なロングシートが残っています。もっとも、詰め物は体質改善工事時に交換されているためかヘタった感じはせず、それなりに張りのある座席でした。

(右/下)は一般席と優先席の境目部分を映したもの。頭部分のカバーが異なるだけで、座席モケットは共通です。

運転台直後の区画

運転台直後の区画を見ていきます。こちら、かつては写真左に2人がけロングシート、写真右に3人がけロングシートが配されていましたが、体質改善工事時に2人がけ席が右側に移設され、写真左は単なる立ち席スペースとなっています。京都地区の普通列車が朝夕それなりに混雑するのもあるのでしょうが、この体質改善工事は全体的に見て、立ち席スペースの拡充がかなり重視されているように感じます。

(右/下)はその移設された2人がけ席。ドア脇に妙にスペースがあるのは、こちらが元々3人がけ席だったことによるものです。

その他の車内設備

天井(左/上)と荷物棚(右/下)の様子。天井は体質改善工事時にパネルが貼られてフラットになり、すっきりした雰囲気になっています。また、荷物棚は223系にも通じる前飾り付きのものに交換されています。

つり革(左/上)と通路の様子(右/下)。一部のつり革には、見ての通り忍者の巻物がつけられており、天井ののれんと並んで、車内で「SHINOBI-TRAIN」を感じられる数少ないポイントです(笑)。

乗降用ドア

乗降用ドア(左/上)と、半自動時のドアボタン(右/下)。ドアは半自動扱いにも対応しており、ボタンで開閉できます。

車両概説

デビュー年:2017年(SHINOBI-TRAINとしてのデビュー)

草津線の沿線が「甲賀忍者」「伊賀忍者」の根拠地であることにちなみ、113系4両編成1本(L6編成)に塗色変更、内装の広告の交換などを行って2017年にデビュー。

車体に忍者のシルエットが描かれているほか、内装にも忍者をイメージした装飾が施されていたのが特徴。草津線を中心に運用されるが、運用の関係で東海道本線、湖西線などにも乗り入れていた。

当時は2019年までの予定だったが、好評のため延長。2021年6月の検査入場時に、「SHINOBI-TRAIN」としてのラッピングを剥がす必要があることから運行を終了した。

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