413系「北陸地区」

413系「北陸地区」

国鉄の分割民営化前後に深刻な財政難に悩まされていた国鉄が、「安く近郊型電車を作ろう」というコンセプトのもとに登場させたのがこの413系です。当時余剰となっていた475系列の足回りだけを流用し、車体だけを新造するという手法でコストカットを図りながら1986年にデビュー。それまで急行型車両や客車が主流だった北陸地域のローカル輸送の改善に大きく貢献しました。

すっかり521系の天下となった北陸で生きながらえてきた同車ですが、やはり既に改造からも30年が経過し、足回りはそれ以上に古い同車。“寄る年派”にはかなわなかったようで、2021年3月にJR西日本からは完全に引退しています。2000年代は敦賀~直江津の広範囲で見られましたが、最末期は七尾線がメインの運用線区となっていました。

モケット

(左)座席 (右)カーテン

撮影日時・場所

撮影日:2019年6月2日

撮影場所:七尾線 七尾駅 車内

備考

特にありません。

車内全景 – 体質改善工事・施行車

では車内に入ります。写真は2013年頃から施された体質改善工事(平たく言うと設備の近代化)が施されており、工事前と比べて「つり革・握り手・手すりが黄色いものに交換されている」「ドア部分に黄色いシールが貼られている」「床材の交換」などの違いが見られますが、それ以外は大きく変わっていません。

ドア間はボックスシート主体ですが、(後述する)車端部はロングシートのみと、通勤輸送と長距離輸送を両立させた「落としどころ」がこれなのかなと感じる車内です。パッと見では国鉄型そのものの車内ですが、ドア脇の仕切に妙に曲線が導入されているなど、“直線的”で“無骨”な内装が多かった国鉄型車両らしからぬ一面もあり、そこがこの車両の面白いところでもあります。

車内全景 – 体質改善工事・未施行車

続いて未施行車の車内と座席もご紹介。上の施行車の車内と比較しながらご覧になってみてください。各所が黄色くなっていないほか、床材も施行車と比べて明らかに年季が入っているのがお分かりいただけるかと思います。

比較用にこちらは中間車で撮影していますが、先頭車と比べて天井がやや低く、空調設備の形状も異なる点に注目。これは、中間車の屋根上にパンタグラフがある関係で屋根上の機器配置が先頭車のそれと異なるためです。一般の人にとってはどうでも良いことなのでしょうが、実際に乗ってみると思った以上に「開放感」の差があるので紹介してみました。なお、座席の詳説は次項に譲ります。

※ 以後の写真は、体質改善工事・施行車で撮影しています。

座席 – ボックスシート

ボックス席から見ていきます。413系のボックス席は、種車となった475系列の発生品が使用されているとのことで、急行型特有の大きなボックス席が今でも残っています。惜しむらくは、急行型ボックス席の“象徴”とも言えた窓側のひじ掛けが、改造に伴って撤去されてしまっている点でしょうか。通勤輸送も担える車両という性格柄、通路幅の確保は必須だったのかもしれませんが、マニア的にはやや残念な感は否めません。

ちなみにこのボックス席、国鉄型車両の中でもかなり初期に製造されたものと思われます。フレームが全体的に薄い、座席肩部にはカマボコ型(半円型ともいう)の握り手があるのが特徴です。車両の置換が進んだ現代では、もはや「骨董品」とも言える座席でした。

座席 – ドア脇ロングシート

続いてドア脇のロングシート。2人がけのこぢんまりとしたスペースです。ドア脇には強化ガラス製の風防が設けられており、冬場にドアが開いたときに風が吹き込まないよう工夫されている…そうですが、実際のところどの程度まで効果があるのかは気になるところです。

座席 – 車端部ロングシート(優先席なし)

車端部はロングシートとなっており、通勤輸送にも(主に立ち客の詰め込み的な観点で)対応できる作りとなっています。この車端部ロングシート、一見同じように見えて実はかなりバリエーションがあるので、しばらくはロングシートの紹介が連発されますが気長にお付き合いください(笑)。

まず一発目は中間車・七尾方にある「オール一般席」の車端部区画。よく見ると、左側は「2人+3人+2人」、右が「3人+4人」(ただしほぼ同一長の座席を配しているので実測は3.5人+3.5人が正しい)の作りになっているのが面白いところです。

座席 – 車端部ロングシート(優先席あり)

続いて中間車・金沢方の「優先席あり」の車端部区画。座席の配置は、やはり「片側が2+3+2、もう片側は3+4」になっています。そのため、写真左は優先席が2人がけ、右は3~4人がけ程度とちぐはぐなことになっています。写真(右)の座席、果たして何人がけが正なのでしょう?(笑)

座席 – 運転台直後のロングシート(優先席なし)

続いて先頭車・七尾方運転台直後の区画はこんな感じ。4人がけ程度のロングシートが設置されています。

座席 – 運転台直後のロングシート(優先席あり)

続いて先頭車・金沢方運転台直後の区画はこんな感じ。運転台後ろの張り出し方が七尾方先頭車のそれと異なり、写真(右)の座席が七尾方のそれに比べ、全長がやや長いのが特徴です。だから何?と言われればそれまでなのですが…。

座席 – 車端部トイレ付き区画

続いて、トイレのある金沢方先頭車(七尾線基準)の車端部はこんな感じ。、その部分の座席はこんな感じ。トイレの位置は種車となった475系列から変わっておらず、種車の足回りはトイレの配管も含めて極力活用されたようですい。

こちらの区画はロングシートと、トイレの入口向かい側になぜかボックス席が片側だけ設けられています。そのままロングシートをトイレ前まで伸ばしてしまうと、トイレに出入りする際にロングシートの利用者と目があってしまうのを避けるためなのでしょうが、いずれにしてもロングシートに着座している利用者の横顔を常時見ながら座る形になるので、正直あまり居心地の良い場所ではなさそうです。

またボックス席の通路側は、下手に脚を投げ出すとロングシート部分の利用者の脚とぶつかってしまいかねません。そのためか、比較的混雑している時間帯に乗車した時も、この区画の利用者はあまり見かけなかったように記憶しています。

トイレと反対側のロングシート(左/上)とボックス席の片割れの様子(右/下)。このボックス席、パッと見では他の区画と大差ないように見えますが、よく見かけるとクッションの形状や張り出し方が微妙に異なっています。そもそも急行型のボックス席が通路のある車端部に設置されることはないので、推測ですが近郊型電車の交換品を持ってきたように思います。

余談ですが、近郊型車両のボックス席のうち、もっとも車端部に配置される座席は貫通路(車両間を行き来する通路)の関係で、通常のボックス席よりもやや小ぶりのものが配されています。こちらに配置されているものもそれと同一で、実際に着座すると思った以上に横幅の違いを感じます。ぜひ比較してみてください…と言いたいところですが、こちらはトイレ脇なので長時間の滞在はオススメしません(笑)。

各種車内設備

先頭車の天井(左/上)と荷物棚の様子(右/下)。空調設備、荷物棚ともに種車となった475系列のものを流用しているようです。

通路の様子(左/上)と車両番号表記、非常通報器(右/下)の様子。車両番号は銘板ではなく、化粧板に直接記載されています。

握り手とつり革

ボックス席の握り手(左/上)とロングシート部分のつり革(右/下)の様子。いずれも体質改善工事に伴って黄色に塗装されています。ボックス席の握り手は、昔ながらの金属製のものは握るとけっこう冷たかったのですが(笑)、黄色に塗られてからは塗料に樹脂か何かが含まれているのか、そこまで“寒々しさ”は感じなくなりました。

ドア

乗降用ドアの様子。ドア部分には一段ステップが設けられています。

※以後、トイレ内部の写真が含まれます。

トイレ内部

トイレの様子。国鉄型のいわゆる「列車便所」が最後まで現役でした。

車両概説

デビュー年:1986年

1980年代に深刻な赤字に悩まされていた国鉄が、少ない費用で輸送の改善を図るため、余剰となっていた急行型の471系と473系を改造して近郊型電車としたもの。1986年に登場した。車体は両開きの2つドア、車内もセミクロスシートとなっているため、通勤輸送に対応できる。

JR西日本からは2021年3月のダイヤ改正をもって引退。最末期は北陸本線の小松~金沢、及び七尾線をメインに運用されていた。一部の車両が「あいの風とやま鉄道」「えちごトキめき鉄道」に譲渡されたものの、「あいの風とやま鉄道」所属車は既に全車が引退している。

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