先日、ネットサーフィンをしていた時に「横濱ベイサイドライン」なるページを見つけた。
ん?何なに?
2時間以内で、安く横浜を回れて、しかも大型観光バスに乗れるバスツアー??
バス大好き人間な私だから、安いバスツアーと聞いたら黙っていられない。
しかも主催元は横浜市交通局だ。
調べると、なんと1200円で、横浜の観光名所をバスの中にいながら見られるらしい。
そういえば、横浜って世界的な観光地なのに、ほとんど行ったこと、なかったよなぁ~。
いわゆる「灯台元暗し」というやつで、みなとみらいすらよく分からない私だ。
せっかくの機会だし、参加してみようか。
というわけで、後先考えずにインターネットで予約を入れ、今日を迎えた。
私が乗るのは第2便で、桜木町駅を16:35に出発し、
開国博会場Y150→車窓から横浜三塔→港の見える丘公園→ベイブリッジ、大黒ふ頭→中華街→赤レンガ倉庫
と経由して、横浜駅に18:15に戻ってくる。
これで1200円はかなりオトクなのではないだろうか?
当日、桜木町駅に行くと、バスターミナルに見慣れないバスが停まっていた。
真っ赤な車体は普通の観光バスみたいだが、よく見ると、横浜市交通局とあるので、今日私が乗るのはどうやらこれらしい。
横浜市交通局とはいえども、開国博だから新車導入に力を入れているのかなぁ~。
集合場所として指定されていたのは、桜木町駅前の観光案内所。
言われたとおり、16:10に向かったが、案内所の前には誰もいない。
中に入っていくと、係員とバスガイドらしき女性が二人がいたので声をかけると、こちらが名乗るより前に、
「あ、抜け蔵様、お待ちしておりました。」
と帰ってきた。
少々違和感を感じつつも、チケットとパンフレットをもらい、出発までまだ時間があるのでそれまで外で待っていてくれ、と言われた。
付近に同じツアーに参加しそうな人を探したが、周りにいるのは学生かサラリーマンだけで、それらしき人は全くいない。
うかうかしているうちに出発時刻の16:35まで5分を切ったので、指示された6番乗り場へ向かうと、バスはすでに停留所に停まっていたので、運転手さんとガイドさんに挨拶をして乗り込む。
座席は事前に指定されており、今回は一番前の左側、1A席。
そして、出発まであとわずかになったというのに、誰も乗ってきそうな気配がないので、
私は思い切ってそばにいたガイドさんに聞いてみた。
「ひょっとして第2便、自分だけですか?」
「そうなんですよ。開国博会場からお客様が乗ってこられるかもしれませんが、
あまり乗ってこられないので、ほとんどお客様だけの貸切が決定ですね♪」(ガイドさん)
やっぱりそうか。
でも、開国博までやっているのに、ガラガラなんだなぁ~。
あとでガイドさんから聞いたが、このクイックビューイングはまだ始まったばかりであるだけでなく、イマイチPR不足な感は否めないとのことだった。
時間になり、ドアが閉まると、運転手さんとガイドさんがわざわざ私の席まで来て挨拶してくれた!
まるで「エクゼクティブ」か何かにでもなった気分だ。
去年11月に入ったばかりだという最新型の観光バスを、運転手さんとガイドさん二人が、自分だけのために走らせてくれているのだから嬉しくなってしまう。
しかもビックリだったのが、私がこのクイックビューイング第2便の、正真正銘、初めての乗客だったこと。ガイドさんによると、5/11の運行開始以来、この2便は一人も乗客がいなかったそうだ。
これまで多くの電車やバスに乗ってきたが、「初めての乗客」になったのは、多分今回が初めて。
思わぬ経験をしてしまったなぁ、と嬉しくなっていたら、バスはゆっくりと動き出した。
桜木町駅~開国博会場Y150
バスが出発すると、天井に収納されていた液晶パネルが降りてきた。
ガイドさんによると、このバスにはGPSがついているそうで、位置情報に応じて、付近の観光地のテレビ案内が自動的に行われるらしい。
(左)観光地の歴史や隠れエピソードなども、音声とともに分かりやすく案内される。
(右)バスは一路赤レンガ倉庫へ。
出発したバスは、ランドマークタワーの前を通り、赤レンガ倉庫方面へ向かった。
開国博のベイサイドエリアの入口になっているそうで、今日は平日だからすいているものの、休日は多くのお客さんで賑わうという。
赤レンガ倉庫は、そのノスタルジックな見かけから、使われていたのは戦前の話なのだろうと勝手に思っていたが、実際は1989年まで使われていたらしく、意外だった。
中はショッピングセンターになっていて、小物屋や雑貨屋などが軒を連ねるとのこと。
夜はなかなかいい感じにライトアップされるらしいので、一見の価値があるそうだ。
と、このように、横浜市民ながら知らなかったような情報が多く、なかなか興味深い。
いや、自分が単にこの地域になじみがないだけなのかなぁ?
それにしても、ガイドさんの話やテレビの内容は、近場とはいえ侮ってはならないほど興味深い。
交差点で信号待ちをしていた時、奇妙な形をした乗り物が目に入った。
自転車みたいなもののようだが、屋根もついている。
(↑)ベロタクシー。いわゆる自転車タクシーだ。
ガイドさんによると、これはベロタクシーと呼ばれる自転車タクシーだそうで、環境にやさしい乗り物として、各国の観光地などで導入が進んでいるものらしい。
アトラクション的要素も大きいが、かなり定着しているそうで、桜木町からこれに乗って山下公園まで行ってしまう人もいるのだそうだ。
すると運転手さんが口を開いた。
「開国博になってから、ベロタクシー増えているんですよねぇ。
ほら、自転車ってチョロチョロまかすじゃないですか?
あれ、バス運転していてけっこうヒヤヒヤさせられるんですよ。」
カーブだと巻き込む危険もあるので、気を使うことが増えたらしい。
普段はなかなか聞けないような、運転手さんからならではの情報だった。
赤レンガ倉庫~横浜三塔~港の見える丘公園
次に向かったのが、横浜三塔である。
横浜三塔はかつて、港の目印(=ランドマーク)になっていた、県庁本庁舎、税関本庁舎、開港記念館の3つの建物だ。
(↑)横浜三塔の一つ、「開国記念館」。開国50周年を記念して建てられたもの。
上の写真の「開国記念館」は、今から100年前に、横浜市開港50年を記念して建てられたものらしい。
それから100年も経ってまだきれいに残っているなんて、なんだか不思議な感じだ。
この建物3つが同時に見えるビュースポットが3ヶ所あり、それを全て回って横浜三塔を見ると願いが叶う、という「横浜三塔物語」という伝説があるらしい。
それには2つの説があり、「外国の船乗りが、横浜三塔に航海の安全を願掛けした言い伝えによるもの」と、「三塔が震災などの試練を乗り越えてきたことからカップルが困難を乗り越えて結ばれる」というものだそう。いずれにしても、なかなかファンタジックな話である。
その後バスは大通りから狭い通りへ入り、元町商店街のそばを通って、港の見える丘公園へ向かった。
(左)元町商店街。かつては外国人居留者らで賑わったそうだ。
(右)狭い道路を縫うようにして走っていく。
港の見える丘公園には16:54に到着。ここで、17:15まで休憩。
乗客はこの間、港の見える丘公園を見学できるということだったので、見に行ってみることにした。
今日は平日ということもあって公園の中もガラガラだったが、学校が終わる時間帯だったためか、学生服を着たカップルも見かけた。
(左)展望台の入口。平日夕方ということもあり人の姿はまばら。
(右)望台からの眺め。確かに「港は見えるものの、高架道路や住宅が目の前に見えてしまい、景色はやや残念といったところ。
こいつらこんないいところで毎日デートしているのかなぁ~。
そんな中、私は一人、カメラ片手にほっつきまわっていた。
周りからの視線がやや痛かったが仕方ない。
(左)洋風の庭園が整備されている。どこか欧州の観光地に来たような、非日本的な雰囲気を感じた。
(右)洋風の建物ながら、屋根だけは瓦屋根といった組み合わせが珍しい。
あとでガイドさんに聞いたところ、このあたりの景色は夜になるとなかなか素晴らしいそう。
機会があったら、今度は夜に来てみようかなぁ~。
遠くには大型客船「SILVER SEA」が大桟橋に接岸しているのが見えた。
それ以外にも多くの貨物船や小さなボートなどがたくさん見えたので、双眼鏡を持ってきても面白いかもしれない。
(↑)港の見える丘公園入口から。私のためだけに20分待っていてくれた。
高速道路へ ベイブリッジ~大黒ふ頭
17:15、定刻に港の見える丘公園を発車。
元来た道を戻ると、バスは新山下入口から首都高速道路に入った。
このままバスはベイブリッジを通過し、大黒ふ頭を見ながら大黒SAで折り返し、再びベイブリッジを走行して先ほどの場所へ戻る。完全に「ベイブリッジを渡るためだけ」に走るわけだ。
ガイドさんいわく、このバスツアーにおけるクライマックスがここらしい。こういうあたりは、かなり観光客を意識した感じがする。
バスは思ったより加速しないまま、ゆっくりと左側車線を行く。
運転手さんによると、今日は横風が非常に強いからだというが、元からベイブリッジを「内部から」見てもらうのが目的なので、基本的にスピードは抑え目にしているという。
(左)ベイブリッジの様子。
(右)大黒ふ頭の様子。以前は隙間がないくらいに車が停まっていた。
バスはそのままベイブリッジを通過するとすぐに左へそれて大黒PAへ向かった。
大黒ふ頭は、海外へ輸出する車を船へ積み込む場所なので、積み込み待ちの新車がたくさん見られる。
大黒PAへ向かう道は大きな螺旋を描いているのだが、その途中から見えることは知っていた。
だが、この不況の煽りをうけてか、以前私が見た時は、それこそ所せましと車が並んでいたが、今はかなりスカスカである。全く車が置いていないエリアも結構広い。
不況の深刻さを目で見て実感することになった。
大黒PAに到着、ここで降りることはなく、そのまま通過して反対側の車線へ向かう。この大黒SAから見る夜景は一見の価値があるそうで、SA内に展望台もあるという。しかし、それを知ったのはここを過ぎてからだった。
頼んで停めてもらえばよかったかなぁ~。どうせ今日自分一人なんだし…。
再び首都高速へ戻った。先ほどまでの強い横風も幾分弱まったのか、バスは90km/h近いスピードでベイブリッジを駆け抜けていく。
(左)大黒PAへ進入。
(右)帰りのベイブリッジはハイスピードで通過。ちょっとした高速バス気分を味わえる。
マリンタワー~大桟橋~中華街
新山下で首都高を降り、マリンタワーの脇を通過。
マリンタワーの外側は灰色だが、中側はブラウンオリーブという色に塗られているので、外側とのギャップが面白いということだが、オープンは5/23とのこと。まだ見られないのは残念だった。
その後、山下公園の脇を通り抜けて、バスは中華街へ向かった。とはいっても中を通り抜けていくわけにはいかないので、外側を通るだけ。
運転手さんによると、さっきのベロタクシーはこのあたりが一番多いらしい。さらにこのシーズン、各地から修学旅行の生徒が押し寄せるのだが、どうも道路いっぱいに広がって歩く子が多く、困っているとのこと。
ベロタクシーと違って、妙にチョロチョロしないだけまだいい、と笑っていた。
実際、私たちのバスも何度か学生服のグループを追い抜いたが、運転手さんとガイドさんはハンドルの取り回しや後方確認に負われていて、とっても大変そう。
実際、運転手さんは「このあたりが一番気を使います」と苦笑いしていた。
(左)日も傾いてきた横浜を走るバスの車窓から見えたマリンタワー。
(右)中華街付近。大きな観光バスでは、取り回しに非常に気をつかうそう。
開国博会場ベイサイドエリア~パシフィコ横浜~横浜駅東口
狭~い中華街を通り抜け、山下公園脇を経て横浜三塔車は再び桜木町へ戻り、開国博会場のベイサイドエリアへやってきた。
楽しかったバスツアーも、あとはパシフィコ横浜を車窓から見たらおしまいである。
そういえばあの丸い物体、何だろう?
開国博会場脇の道路のすぐそばに、大きな白い球体の物体が放置されている。
何か、液体をためておくためのタンクなのだろうか?
でも、わざわざこんな目立つ場所に置くかなぁ?
気になったので、信号待ちをしていた時に、運転手さんに聞いてみた。
「運転手さん、あそこにある丸い大きなもの何ですか?」
「あぁ、あれ?あれは気球です。夜になるとあれが宙に浮いて、地球みたいに輝くんです。
メッチャきれいですよ!!」
へぇ、そんな仕掛けが隠されていたのかぁ~。
一見しただけではプラスチックでできているように見える。
帰ってからインターネットで調べてみたが、本当にみなとみらいの空に地球が浮かび上がっていた。
(左)地上にいる気球にしては形が整っている。これが夜になると浮かび上がるらしい。
(右)パシフィコ横浜。ライブ会場などとしても有名。
ベイサイドエリアの脇を通り過ぎると、インターコンチネンタルホテルの前でバスは左折し、パシフィコ横浜を右に見ながら横浜駅へ向かった。
このあたりは近年、高層マンションが急速に整備されたが、見かけはオフィスビルやホテルのようで、生活感が全くない。
洗濯物一つ、干してないので気になったが、ガイドさんによると、このマンションは景観の問題で、ベランダに洗濯物を干すのは禁止なのだという。
ならばどこに干すのかと聞いたら、部屋の中に乾かすための装備があるらしいのだ。
こんなきれいなマンションに、みんなが洗濯物を干していたら、それはそれで違和感があって面白いと思うのだが、きれいなマンションに憧れて、入居した人もいるのだろうし、そういうわけにはいかないのだろう。
というより、こんなところに住んでいる子供たちは、果たしてどこの学校に通っているのだろうか?
このバスツアーではみなとみらいエリアをいろいろ走ってきたが、小中学校の類を全く見かけなかった。
それを運転手さんに話したら、
「ハハハ、そんなの私立行かせているに決まっています♪」(運転手さん)
「そうですよ!私達にはきっと関係ない世界の人たちです!(笑)」(ガイドさん)
う~ん、それはちょっと偏見じゃないかなぁ?とも思ったが、実際ここから通うとしたら、公立行くにしても遠すぎるような気がする。
そういえば石川町あたりに、私立の学校はけっこうあるし、運転手さんやガイドさんの言うとおり、私立に通わせているのかもしれない。
(左)高層マンションの開発が進むみなとみらいを行く。
(右)横浜駅改札前に到着。
おしゃべりしているうちに、バスはいつのまにか横羽線の高架と並行して走っていた。
横浜駅が見えてきたあたりで、
ガイドさんと運転手さんが、突然慌て出し、申し訳なさそうな顔をして私に言った。
「そういえばお客様、私ども名前も名乗っていませんでした。申し訳ありません。本当に申し遅れました、私、ガイドの○○です。」(ガイドさん)
「申し訳ない、運転士の△△です。いや、お客さん一人だったので、最初から自然に話しはじめちゃいましたよ。」(運転手さん)
二人によると、本当は出発前にする「ご案内」の放送の中で名前を言うらしいが、今日は私だけだったので、なんとなくそのまま話し出してしまった、とのこと。
もう、そんな細かいこと、どうだっていいじゃないですかぁ~♪
こんな大型バスを、しかも乗務員を2人もつけて、1人で乗れるなんて、それだけでも大満足だ。
そして18:15、定刻ぴったりにバスは横浜駅改札前に到着。あっという間の1時間40分が終わった。
運転手さんとガイドさんにお礼を言ってバスを下車すると、私以外降りるお客もいないこのバスは、すぐに正面の表示を消灯し、車庫へと帰っていった。
今回、何気なくネットサーフィンをしていて見つけたこのツアーだが、生まれも育ちも横浜の私でも、なかなか行かないような場所を、短時間で一気に見られたのは良かったと思う。
横浜の主要観光地に関する知識もついたので案内することもできるだろうし、そうでなくても大体の位置関係がつかめたので、これから一人で回るにしても、ガイドブックなどが分かりやすく読めるはずだ。
横浜市交通局が導入した新車の観光バスでめぐる「横浜クイックビューイングコース」。これからの発展に期待したい。
※この記事は、2009年5月に当時の私が書いた乗車記を、一部修正のうえほぼそのまま掲載したものです。
※「横浜クイックビューイングコース」は横浜市営バスが企画・運行する貸切バス「横濱ベイサイドライン」でしたが、2016年9月で廃止となりました。当時導入された観光バスは、現在も貸切バスとして使用されています。