目次
・フロント・共有スペース(オハネ15 6)
・B寝台「ソロ」下段(オハネ15 2003)
・B寝台「ソロ」上段(オハネ15 2003)
・開放型B寝台(スハネフ14 3)
・「ブルートレインたらぎ」へのアクセス
・人吉IC~人吉駅までの徒歩経路
14系15形 ブルートレイン「たらぎ」
「ブルートレインたらぎ」の鍵・入浴券・宿泊券(左/上)と、深夜のテールマーク周りのアップ(右/下)。
チェックイン時に鍵と同時に渡される「宿泊券・乗車券」は、JRの寝台券を模したデザインとなっています。単なるノベルティかと思いましたが、私の宿泊時にはチェックインしてから外出~客車に戻ってきた際、係員(夜間はガードマン)の方からこの「宿泊券」の提示を求められる場合がありました。
従って、「宿泊者であることの証明」の意味合いもあるようです。念のため、外出時はこの「宿泊券・乗車券」を携行した方が無難かと思われます。
モケット
(左)寝台 (右)カーテン
撮影日時・場所
撮影日:2023年5月
撮影場所:くま川鉄道 多良木駅付近 ブルートレイン「たらぎ」
備考
・撮影及び掲載にあたっては、現地スタッフの方から許諾を得た上で行っています。
開放型B寝台 外観
変わってこのページでは、「ブルートレインたらぎ」で保存されている開放型B寝台のスハネフ14 3を見ていきましょう。
この開放型B寝台、「ブルートレインたらぎ」では「4ベッドタイプ」と呼ばれています。寝台単位で販売されており(従って混雑時は相席の場合あり)、料金は先に紹介した「ソロ」と同一の3,140円(2023年現在)です。
【備考:「開放型B寝台」の呼び方について】
「ブルートレインたらぎ」の公式サイトにおいてこの開放型B寝台は「4ベッドタイプ」として紹介されていますが、当サイトでは比較的一般的な呼称である「開放型B寝台」の名を用いることとします。
【補足:スハネフ14 3の車歴】
日 時 | 内 容 |
---|---|
1971/09/14 | 14系の試作車として落成 品 川に配置 急行「瀬戸」「はくつる51・52号」で運用 |
1972/03/15 | ダイヤ改正実施 「さくら」「みずほ」「紀伊」などで運用 |
1984/03/13 | 寝台を3段式から2段式に改修 |
1986/11/01 | 熊 本に転属 「さくら」「みずほ」などで運用 |
1994/12/03 | 長 崎へ転属 「さくら」で運用 |
2005/03/01 | 熊 本へ転属 「はやぶさ」「富士」で運用 |
2009/03/14 | 寝台特急「はやぶさ」「富士」廃止 定期運用消滅 |
2010/03/05 | 廃 車 |
2010/07/01 | 「ブルートレインたらぎ」として 多良木駅前で宿泊施設として開業 |
開放型B寝台 廊下
車内に入ります。廊下の全景(左/上)と、通路窓側の椅子を展開した状態(右/下)。
廊下にはやはり「非常口」のピクトグラムが新設されていますが、それ以外は特段何か改造されているわけでもなく、かつての風情を色濃く残しています。
開放型B寝台 全景
開放型B寝台の全景。
JR九州所属時代に、モケットの貼り替え・寝台内の化粧板の交換(ベージュ)が施されて現在に至っています。最末期の「九州ブルトレ」の定番とも言える内装でした。
現役時代から大きく変わった点はありませんが、「背もたれの横長シートカバーがない」「コンセントの新設」「一部読書灯の交換(後述)」などが「ブルートレインたらぎ」移設後の違いとなります。
開放型B寝台 下段
下段の全景(左/上)と寝台のアップ(右/下)。
保存開始から13年(2023年現在)が経過していますが、寝台モケットの擦れやほつれは全くと言って良いほどなく、寝台単体としては非常に良い状態が保たれているように感じました。
(許可を得ての上)空席に着座してみたのですが、座席内部の詰め物も適度なハリを堅持。視覚上・感覚上どちらを取っても「現役時代そのまま」と言っても過言ではありません(→「余談」も参照)。
【余談:最末期の九州ブルトレのモケット事情】
「九州ブルトレ」の最末期にJR九州が保有していた14系・24系の開放型B寝台は、このタイプまたは>>「オハネフの宿」保存車のタイプのいずれかに統一されていました。
当初は「編成ごとに内装を統一」していたようですが、その後編成の組換や引退が進むと末期は「同じ編成内でもどちらかの内装がランダムに現れる」状態に。
どちらに当たるかは当日乗ってみるまで分からず、それも一つの楽しみだったように記憶しています。
(左/上)と、寝台にセットされているハンガーのアップ(右/下)。
転落防止柵は経年からかややガタ付きがあったものの、現役時代から似たような感じでした。
開放型B寝台 上段
続いて上段寝台の全景(左/上)と寝台表面のアップ(右/下)。
冒頭で述べた通り、「ブルートレインたらぎ」の開放型B寝台は「寝台単位」で予約を受け付けています。従って、(空きがあれば)この上段寝台を指定して泊まることも可能。あえて上段に泊まってみるのも面白いかもしれません。
荷物スペース
通路上のスペースを使用した荷物置き場のアップ(左/上)と、隣寝台との仕切り部分(右/下)。
荷物置き場とは全く関係ありませんが、天井周りに天窓を新設(左/上)し、さらに仕切り部分は一部を網に張り替えるなどの改造が施されているのが分かります。
スタッフの方に伺ったところ、これも建造物・宿泊施設としての基準を満たすために設置したとのこと。私は法律の類は本当に疎く、根拠法令や運用などは知る由もありませんが、隅々まで「換気」を考慮した改造が施されているのは興味深いところです。
寝台ハシゴ
上段寝台へのハシゴの様子。
デフォルトでは(左/上)のように収納されており、上段に上がる場合は(右/下)のように展開して使用します。
読書灯2種
読書灯は現役時代からのオリジナルタイプ(左/上)と、「ブルートレインたらぎ」移設後に交換されたタイプ(右/下)の2種類が存在します。
読書灯のスイッチは「入ボタン(左)を押すと切ボタン(右)が上がる」仕組み(当然その逆も)ですが、スタッフの方に聞いたところボタン部分が故障または固着してしまう場合があり、そういった場合に(右/下)の読書灯に交換しているのこと。
内外ともに、概してきれいな「ブルートレインたらぎ」。さすがに移設から13年が経った今、内装には少しずつ“年季”が入り始めているのは否めないようです。
その他の車内設備
通路上にある化粧直し用の窓(左/上)と、廊下部分のコンセント(右/下)。
廊下部分のコンセントは「ブルートレインたらぎ」移設後に新設されたものですが、こちらを利用する場合はフロントの許可が必要だそうです。大人数で利用する場合はテーブルタップなどを持参して、寝台内のコンセントだけでやりくりした方が無難かもしれません。
通路の突き当たり部分(左/上)と、懐かしい針式の温度計(右/下)。
やや見づらいものの、温度計の中には「JNR」の文字が残っていました。
車掌室
車掌室のあるデッキを2アングルから。
車掌室は通常施錠されていますが、スタッフ立会のもと見学が可能です。なお、私が訪れた時に見学できたのは(左/上)のみでした。
案内してくださったスタッフの方は(右/下)側の車掌室について特に言及しておらず(右/下)側は基本的に公開していないものと思われます(→「注意」も参照)。
【注意:車掌室の見学について】
車掌室の見学は、スタッフの都合や施設都合でできない場合もあるとのことです。
当サイトでは「見学が可能」と記載していますが、これは施設上可能という意味合いであり、全ての宿泊者が見学できる旨を保証するものではありません。
車掌室の全景(左/上)と、車内放送用の機器・オルゴールなどの様子(右/下)。
車内放送用マイクやオルゴールも含め、車掌室内の設備はほぼ完全な状態で残っています。なお譲渡時に配線は切られてしまい、今はこの機器類を使用しての車内放送はできなくなっているそうです。
振り返って、各種のスイッチ盤(左/上)と行先表示の対照表(右/下)の様子。
行先表示には「富士」「はやぶさ」「さくら」など往年の九州ブルトレがズラッと並んでいるほか、実際に充当されるとは考えにくい「日本海」「あけぼの」「ゆうづる」(31~37)がなぜか入っているのが特徴です。
変わり種としては69~70の「急行瀬戸 東京・宇野」でしょうか。これは解説してみたら非常に長くなってしまったので、「備考」として別立てでまとめました。興味のある方は読んでみてください(→「備考」も参照)。
【備考:なぜ急行「瀬戸」の行先表示があるのか?】
14系はデビュー間もない1971~1972年の一時期、急行「瀬戸」(下り1号・上り2号)で運用されていたことがあり、この対照表・字幕はその名残です。
そもそも1971年に試作車(いわば最初期ロット)の10両(スハネフ14 1~3、オハネ14 1~7)がデビューした14系には数々の新機軸が取り入れられており、当時としては「全く新しいブルートレイン」でした。
従っていきなり本格的に運用に投入するのはまずいと踏んだのか、当時の国鉄は既存の車両と連結して実際に運用しながら実証実験(+新車のデモンストレーション)を行うことにします。
その“実験の場”として選ばれたのが、当時「10系(寝台車)+旧型客車」で運行されていた急行「瀬戸」でした。
さっそく1971年10月に10系が編成から外され、代わりに新造ほやほやの14系を連結。翌年3月の改正前まで「14系+旧型客車」で運用されました。
字幕の場所が69・70という「超すみっこ」なのも、元々短期間しか使用しない前提ゆえでしょう。
こうした事情から、「急行瀬戸」の対照表・字幕は14系の試作車でのみ見られた仕様であり、同時に「ブルートレインたらぎ」のスハネフ14 3は、その唯一の生き残りと言えます。
余談ですが、ダイヤ改正後14系は「さくら」「みずほ」など本来の活躍場所に移り、他方の急行「瀬戸」は特急に格上げされるとともに車両も20系に変更されました。
デッキ
閑話休題。最後に、洗面台・トイレを有するデッキ周りを見ていきます。
(左/上)は2号車側から、(右/下)はB寝台側からデッキを見た様子。トイレやデッキの扉はなぜか真っ青ですが、これは現役時代に施行された体質改善工事(平たく言えば内装や機器類の近代化)に改装されたものと思われます。
デッキには冷水器が残っていますが、冷水の吐水口とゴミ箱(使用済紙コップ入れ)が一体成型されているのが面白いところです。
トイレ・冷水器の全景(左/上)と洗面台のアップ(右/下)。
トイレは施錠されていますが、洗面台は現在も「洗面台」として使用可能です。
このページは6ページ構成です。次は>>「ブルートレインたらぎへのアクセス」 編です。
目次
・フロント・共有スペース(オハネ15 6)
・B寝台「ソロ」下段(オハネ15-2003)
・B寝台「ソロ」上段(オハネ15-2003)
・開放型B寝台(スハネフ14-3)
・「ブルートレインたらぎ」へのアクセス
・人吉IC~人吉駅までの徒歩経路
概説
デビュー年:2010年(施設)
「ブルートレインたらぎ」とは、くま川鉄道多良木駅前にある簡易宿泊施設。多良木町が運営しており、かつて寝台特急「はやぶさ」「さくら」で使用された14系15形客車を使用している。
編成は3両で、共通スペース、B寝台「ソロ」及び開放型B寝台。開放型B寝台、「ソロ」いずれも宿泊が可能。宿泊に使われる車両の設備はほぼ現役当時のまま残されている。毛布やシーツなどは宿泊料金に含まれているため、持ち込みの必要はない。
宿泊料金は「ソロ」、開放型B寝台ともに同一料金。最寄りのコンビニまでは徒歩10分程度。施設内に風呂はないが、「えびすの湯」(銭湯)が徒歩圏内にある。なお「えびすの湯」は毎月第二火曜日が定休日となっており、その場合は利用できる銭湯が至近にないため、旅程を立てる際は注意したい。
「ブルートレインたらぎ」公式HP:
http://www.bluetrain-taragi.com/