目次
・デュエット下段・共用トイレ・シャワー
・デュエット上段・洗面台・車掌室
・開放型B寝台
・開放型B寝台 洗面台・車掌室
・「オハネフの宿」へのアクセス
・「内野々集落センター」バス停からの徒歩ルート
24系25形 四国遍路の駅「オハネフの宿」 – デュエット上段・洗面台・車掌室
黄昏時の「オハネフの宿」の遠景(左/上)と、「なは」のヘッドマークのアップ(右/下)。
(左/上)の写真、客車の右手にはビニールハウスがありますが、ここが「宿泊受付(要はフロント)」「トイレ」「シャワー」の入るスペースとなっています。
床下の室外機(左/上)と、ドア上にある「B寝台デュエット」のロゴ(右/下)。
この室外機は、>>24系25形「阿久根ツーリングSTAYtion」時代の空調が長年の放置からか使用できないことが発覚し、「オハネフの宿」への移設時に急遽設置したものだそうです。
移設にあたっては客車内の空調吹き出し口を極力活用したそうで、(他のブルトレ宿で見られるような、車内に空調を増設したことによる)客車内の違和感は全くありませんでした。
モケット
(左)デュエット (右)車掌室
撮影日時・場所
撮影日:2023年7月
撮影場所:香川県観音寺市 四国遍路の駅「 オハネフの宿」敷地内
備考
・編集の都合上、「オハネフの宿」と略して記載する場合があります。
・私は取材時に下段個室に宿泊しましたが、本項で掲載する上段個室の撮影・掲載にあたっては、ブルートレインのオーナー様より許諾を得た上で行っています。
・>>24系25形「阿久根ツーリングSTAYtion」の項も併せてご覧ください。
デュエット 上段
変わって「デュエット」上段を見ていきます。
上段ということもあり「階段が個室内にある」「窓にかけて天井が湾曲している」「ベッドの転落防止サクがない(というか階段手すりと兼用)」などの違いはありますが、基本的な設備は先に紹介した’「デュエット」下段と大差ありません。
ベッドの全景(左/上)と正面から見た様子(右/下)。
(左/上)の写真で、壁のハンガー脇にある“何かを撤去したような跡”(4つのピンがついている場所)ですが、これは現役時代にかかっていた「絵画」の跡です。
JR九州のブルートレインは「B寝台の個室内に絵画がかかっている」のが、なぜか“お決まり”でした。>>阿久根ツーリングSTAYtionの時点ですでに撤去されていたため、JR九州からの譲渡時に取り外されたと思われます。
リネン類をセットしていない状態の寝台全景(左/上)と、正面から見た様子(右/下)。
マットが一つデンッとあるだけの下段個室に対し、こちらはクッションが2つに分かれているほか、クッションの形状も下段個室のそれと異なります。私は取材時に下段個室を利用しましたが、機会があれば上段寝台にも宿泊して「寝心地の比較」をしてみたいところです。
個室内の設備
ベッド間のサイドテーブル・照明操作パネル(左/上)と、鏡・ハンガーなどの様子(右/下)。
寝台周りの設備は、下段寝台のそれと同一です。
ベッドサイドのランプ(左/上)と、通路上の荷物置き場(右/下)。
下段個室の荷物置き場は「開口部は狭く中でスペースが広がる」タイプですが、こちらは開口部と荷物置き場の全幅が同じ長さです。大型のスーツケースとともに旅行する場合は、この方が使いやすいかもしれません。
階段回りの様子
個室内の階段を下(左/上)と上(右/下)から。
上から見ると、上段個室が通路からかなり高い位置にあるのがお分かりいただけるかと思います。
階段手すり(左/上)と、階段途中にあるフットライトのアップ(右/下)。
洗面台 オハネフ25 2209
続いてデッキの洗面台スペースを見ていきます。まずは全景の様子(左/上)とトイレ、冷水器(右/下)のアップから。
冷水器はすでに使用停止となっているほか、車両のトイレは施錠されており、利用者は上述のビニールハウス内にあるトイレを利用することになります(→「余談」も参照)。
【余談:オハネフ25 2209のトイレ事情】
余談ですが、このトイレは「阿久根ツーリングSTAYtion」時代は開放されており、実際にトイレとして使用可能でした。ただトイレの水洗機構が動作しないため、「使用後は、向かいの洗面台下に置いてあるバケツに水を汲んでトイレに持っていき、便器内に流し込む方式」だったと記憶しています。
この「流し方」がちょっとアレに感じる人、あるいは洋式希望の場合は、NPO法人BigUpの事務所内または阿久根駅のトイレ(但しどちらも夜間閉鎖)を使用するよう案内されていました。
このトイレが「オハネフの宿」への移設後も使用されず、ビニールハウスにトイレが別に設けられているところから、すでにこのトイレは水洗機構が使用できなくなっているものと思われます。
洗面台の全景(左/上)とシンクのアップ(右/下)。
洗面台は当時の蛇口が残っていますが、そのまま使えなかったようで新たに蛇口を設置して対応しています。各部の特徴から、洗面台周りは>>阿久根ツーリングSTAYtion当時のそれを引き続き使用しているようです。
洗面台脇のくずもの入れ(左/上)と、洗面台上の照明の様子(右/下)。
くずもの入れはあくまで「展示」であり、現在はゴミ箱としては使用できません。洗面台部分の照明は格子模様のルーバーを通して照らす、妙に凝ったデザインなのが面白いところです。この車両が改造された当時のトレンドだったのでしょうか。
デッキ
続いて車両最後尾のデッキに入ります。全景(左/上)と貫通扉の様子(右/下)。
貫通路上には、この車両の現役時代に使用されていたと思われるジャンパ管(鉄道車両の制御回路・ブレーキ・空調などを連結する装置)が置いてあります。
デッキ部分の天井(左/上)と、デッキに備わる灰皿のアップ(右/下)。
ブルートレインの個室寝台車は最後まで喫煙可能だったため、デッキにも灰皿が最後まで残っていました。灰皿は全体的に青いサビ(いわゆる緑青)が浮いており、この車両と灰皿の長い歴史を感じます。
車掌室
オーナー氏立ち会いのもと、車掌室内も見学・撮影させていただきました。
全景(左/上)と車掌室内のテーブルの様子(右/下)です。
車掌室の座席(左/上)と補助いす(右/下)の様子。補助いすもモケットがしっかり揃えられているのが面白いです。
一応「補助いす」と書きましたが、車掌室の中に2人入るのは現実的に厳しそうです。いすというよりは、車掌の方が休む時に使う「オットマン」のような位置付けなのかもしれません。
車掌室内の機器
車掌室内のスイッチ類(左/上)とドアスイッチの様子(右/下)。
(左/上)は、車両の蓄電池「入」「切」スイッチ(=平たく言うと「車両全体の電源スイッチ」に相当)や照明操作、行先表示の指定など、列車の運行に欠かせないスイッチ類です。私の宿泊時は、オーナーの方が車掌室に入って照明などを随時設定されていました。
車掌室内の天井(左/上)と、行先表示の対照表(右/下)。
「オハネフの宿」保存車の行先表示は「観音寺行き」の幕を内側から貼り付けて掲出しており(>>冒頭で紹介)、字幕の回転は一部を除いて出来なくなっていますが対照表はそのまま残っています。
基本的に行先は西日本地域が中心となっており、「かいもん」「日南」など九州内で完結する列車(63番~)が見られるのはJR九州車らしいところでしょうか。
また、なぜか(オハネフ25 2206の車歴上、実際に充当されるとは考えにくい)「あけぼの」「はくつる」といった東日本地域の表示(33~39番)が入っているのも興味深いところです(→「備考」も参照)。
【備考:「かいもん」「日南」について】
「かいもん」「日南」は、かつて門司港~西鹿児島を結んだ夜行急行列車です。1993年の廃止直前は、いずれも鹿児島所属の12系(座席車)+24系25形(寝台車)という編成でした。
このオハネフ25 2209は「かいもん」「日南」が廃止される前の1991年に(当時は「デュエット」改造前の開放型B寝台車として)鹿児島に転属しており、その時に「かいもん」「日南」の行先表示が追加されたものと思われます。
併結切り替えスイッチ
オーナー様立ち会いのもと、「併結切換スイッチ」「併結戸ジメ切換スイッチ」を見学させていただきました。
24系を使用する「なは」は、最末期に14系の「あかつき」と異形式の併結運転を行っていた時期があり、このスイッチはその併結運転に伴って設置されたもの。現在、このスイッチが日常的に拝めるのは恐らく「オハネフの宿」が唯一であり、非常に貴重なスイッチです。
【補足:なぜ電源方式が違う24系と14系が併結できたのか?】
客車のサービス電源方式には、24系の「集中電源方式」(電源車から各車に一括給電)と14系の「分散電源方式」(数両おきに客車床下に発電機を設けて各車へ給電)があり、これが異なる24系と14系は基本的に併結して使用できません。
そのため「あかつき」直後に連結される「なは」の24系デュエット車には、「編成全車が24系の場合」「14系と併結する場合」で客車への給電方式を変更できるスイッチが設けられていました。
「全車24系モード」(上写真のスイッチが「24系側」)の場合は「24系の電源車から全車給電」、「14系と併結モード」(上写真のスイッチが「14系側」)の場合、電源供給は「14系・24系それぞれの中で完結」となります。
このページは6ページ構成です。次は>>開放型B寝台 編です。
目次
・デュエット下段・共用トイレ・シャワー
・デュエット上段・洗面台・車掌室
・開放型B寝台
・開放型B寝台 洗面台・車掌室
・「オハネフの宿」へのアクセス
・「内野々集落センター」バス停からの徒歩ルート
概説
デビュー年:2023年4月(「オハネフの宿」としてのデビュー)
「四国遍路の駅『オハネフの宿』」とは、香川県観音寺市内で運営されている宿泊施設。
かつてNPO法人BigUpが運営していた宿泊施設「阿久根ツーリングSTAYtion」(2008~2014年)で使用されていた客車を、クラウドファンディングによる資金調達で香川県内に移設したもの。
客車は「阿久根ツーリングSTAYtion」が2014年5月頃に閉館して以降、長らく阿久根駅前に放置されていたが、2021年にクラウドファンディングの成立により、相次いで香川県内に移設。2年間の整備を経て2023年4月8日から宿泊受付を開始した。
宿泊料金は開放型B寝台が5,000円、「デュエット」1室が12,000円。2024年2月現在、予約受付は電話のみ。予約受付期間(不定期に営業しない日場合あり)の告知・受付開始のお知らせは、全て公式X(Twitter)で行われる。