【海外OTA】Klookの「空港送迎タクシー」を日本で利用してみた

Klookの「空港送迎タクシー」を日本で利用してみた

訪日外国人観光客の急増に伴い、外資系OTA(Online Travel Agency:オンライン旅行代理店)の存在感が拡大している。「ブッキング・ドットコム」「Klook」「agoda」などが代表例で、2023年度の日本旅館協会の調査では、訪日客の約45%がOTA経由で宿泊を予約していた。

ただしOTAは、あくまで旅行者と現地の旅行会社をつなぐ仲介役である。要するに、実際に旅行商品や移動サービスを提供するのは、OTAではなく旅行会社だ。当然、いろいろな運営方針・クォリティの業者が混在することになる。

さて、2023年には「海外OTA経由で日本の空港送迎タクシーを予約したら、白タクが配車された」という報道事例があり(>>TRAICYの記事)、海外OTA各社で対応が進められた。

現在は、どこの海外OTAも日本国内では事業用の緑ナンバー車両を配車しているとされる。しかし緑ナンバーとはいえ、OTA上の1万件以上ある口コミを読んでみると

ドライバーの王さん(※中国人の仮名)は中国語に堪能だった
車内では10人乗りで広々としていた

…などと、日本で一般的に見られるタクシーのイメージとはすこし違うらしい。口コミの大半は外国人によるもので、日本人による体験談はほぼ皆無である。Googleで検索してみても、個人のブログすらほとんどヒットしないほどに情報が少ない。

では、今の「空港送迎タクシー」は、どんなクルマとドライバーがやって来るのだろうか。その謎を探るため、私は2025年9月に海外OTAの一つである「>>Klook」で空港送迎タクシーを手配し、実際に乗車してみることにした。

【備考:一応念のため】

当記事は、特定の旅行会社やドライバー個人を批判する意図はなく、あくまで利用者目線での記録を皆様にシェアするのが趣旨である旨はご理解いただきたい。

※ Klookでは「貸切空港送迎」というサービス名ではあるが、他OTAでは「空港送迎タクシー」という名が多数派のようだ。当ページでは(Klook含め)外資系OTAによるタクシー仲介サービスは、便宜上「空港送迎タクシー」の表記に統一する。

まずは予約しよう

予約は、乗車前日にKlookの公式アプリから行った。

トップ画面の「すべてのカテゴリ」→「貸切空港送迎」を選んで利用区間を入力すると、以下のようにタクシーを仲介する旅行会社の一覧が表示される。

「貸切空港送迎」の予約画面。「空港ピックアップ」が空港、「空港ドロップオフ」が空港の予約となる。
旅行会社の選択画面。値段や各旅行会社の特典(無料待機時間)などを比較して選択する。

いずれも私が初めて目にする会社名ばかりであり、Googleで「(社名) airport」などと調べてもヒットしない旅行会社が多かった。

「選ぶ基準」になるような情報はほとんどないが、今回は「比較的評判がよい」「ドライバーの語学力(中国語や英語)を評価する口コミが多い」を基準に、ある旅行会社のA社(→「備考」も参照)に依頼してみることにした。

乗車区間は、清澄白河駅(東京都江東区)羽田空港第3ターミナルで、走行距離はおよそ21〜22km。例によって、私が土地勘のあるエリアで乗ることにした。

【備考:社名はあえて伏せます】

当記事は特定の旅行会社、及び手配されたタクシーを批判するのが目的ではなく、あくまで私の一体験をお伝えするのが趣旨である。

そのため、実際の会社名の表記は控えることにした。記事内「A社」も、実在の旅行会社の頭文字ではない点に留意されたい。

料金は8,384円。定価8,884円のところ、初回限定クーポン適用でこの価格になった。この区間は一般的な法人タクシーで行っても7,000~9,000円程度かかるため、無難な価格帯と言えよう。

個人情報を入力〜支払をオンラインで済ませて2時間ほど経ったころ、Klookから「予約が確定しました!」というメールとアプリ通知が届いた。

Klookから届くメール。
当日運転を担当するドライバーの方から届いたwhatsappのメッセージ。なぜか英語。

旅行会社の電話番号も表示されており、頭に国番号「+86」がついていることから中国の会社らしい。相前後して、Whatsapp(META社が提供するチャットアプリ)にも明日のドライバーという人からメッセージが届き、名前から推測するに中国系の方のようである。

結果として、「海外の旅行会社にお金を払い、外国籍のドライバーの運転するタクシーに乗って、日本国内を移動する」格好になったわけだ。これはこれで(日本人の私にとっては)珍しい体験と思うことにして、当日を迎えた。

乗車場所へ

乗車当日の朝、Klookのマイページを確認すると「乗車バウチャー」なるものが表示されている。これはいわばタクシーの“乗車券”で、乗車時にドライバーに見せて利用するらしい。

清澄白河駅には、出発10分前の10:40に到着。ドライバー氏に「もう着いた?」とWhatsappを英語で送ったところ、駅の出口から少し行った脇道の写真が送られてきた。

すぐ近くだったので歩いていくと、そこでは白いハイエースと若いドライバー氏が待っている。どうやら、このクルマに乗ることになるようだ。

清澄白河駅のB1出口。出口のすぐ隣にはコンフォートホテル東京清澄白河があり、待ち合わせ時の目印になる。
タクシーは、コンフォートホテル脇の側道で待機していた。

乗車時に「荷物はこれだけね?」と確認され、車内へ。タクシーは9人乗りのハイエースで、私が>>ニアミーに乗った時と同じモデルのようだ。さっそく、運転席のすぐ後ろの席に腰を下ろす。

出発~羽田空港まで

私が乗りこんでから、ドライバー氏は運転席でGoogle Mapを確認していた。なにか手間取っているようだったので「第3ターミナルでお願いします」と声をかけたが、「えっと…」とあまり理解されていない様子

もっとも、これくらいは想定の範囲内だ。すかさず、事前にGoogle翻訳で調べておいた「羽田空港では第3ターミナルで降ろしてください」の中国語をスマホに表示したところ、ドライバー氏は笑顔で親指をグッと立ててみせてきた。とりあえず、悪い人ではなさそうである。

その後もドライバー氏はGoogle Mapをあちこち調べ続け、5分ほど経った10:53にタクシーを発進させた。

車内の様子。
運転席まわりの様子。車載のナビに加え、Google Mapによるナビも併用されていたのは安心感があった。

Google Mapを見る限り、清澄白河駅~羽田空港のルートは

塩浜入口(首都高速・9号深川線)辰巳JCT~(首都高速・湾岸線)~羽田空港

が典型らしい。しかし、ドライバー氏はどういうわけか塩浜とは門前仲町方面へ向けて走り出し、気づいたら鍜治橋通りに入って八丁堀駅のわきまで来ていた。

「すると京橋出入口から首都高速 都心環状線(C1)に入るのか…?」と思っていたところ、ビンゴ。距離的にはC1経由・湾岸線経由どちらも21~22kmだが、Google Mapを見ると湾岸線のコース上に真っ赤なラインが表示(=渋滞)されていた。

出発前にドライバー氏がGoogle Mapの確認にえらく時間をかけていたあたりから、(推測だが)渋滞を避けてこのルートを選んだのだろうか。意外にと言っては失礼だが、サービスのきめ細さを垣間見ることができた。

清澄白河駅~羽田空港までの典型(とされる)ルート。右左折が少なく、湾岸道は道幅も広い。
今回の走行ルート。高速に乗るまではあちこち曲がり、都心環状線~1号羽田線の制限速度も50~60km/hではあるが、ほぼ直線距離で無駄がないルートと言えそうだ。

首都高速に入ったところで、ドライバー氏が「それ飲んでいいよ」と運転席わきのミネラルウォーターのボトルを指さした。ありがたく、ちびちび飲みながらくつろぐ。彼は中国生まれで、来日して10年以上になるとのこと。

首都高速都心環状線を抜けたタクシーは、そのまま1号羽田線に入った。Google Mapを見ると、湾岸線は渋滞を示す真っ赤なラインが相変わらず表示されていたが、こちらの1号羽田線はとても順調に流れている。

クルマ通りの少ない1号羽田線を快走。
途中、東京モノレールの車庫前を通る。

羽田空港に到着

私を乗せたタクシーは、11:18に空港西ICで首都高速道路を降り、11:21に環状8号線(東京都道311号線・いわゆる「環八」)に入った。今回は羽田空港第3ターミナルが目的地なので、ここまで来ればあとは速い。

羽田空港2丁目のT字路で左折。羽田エアポートガーデンの脇を抜け、11:24に羽田空港第3ターミナル1階の車寄せに無事到着した。

無事に羽田空港に到着して一枚。

降り際、ドライバー氏に「良かったですよ!」と感謝を伝えたところ、笑顔で「ありがとうございます〜」と言いながら手を合わせてくれた。

日本人が海外旅行に行くと、現地人に合掌されるというのは私も遭遇したことがあるが、まさか日本国内でやられるとは想定外だった。まぁ、これも一つの思い出にはなるか。

で、実際どうだったのか

少なくとも私が利用したケースでは、緑ナンバーの事業用車両が配車され、運転も安全快適だった。

料金も日本の法人タクシーと大差なく、OTA上で全て予約できるのは利便性が高い。「空港送迎タクシー」の口コミの多くが訪日外国人によって書かれているのも、何となく理解はできた。

とは言っても、評価は分かれるかな

とはいえ、海外OTAの「空港送迎タクシー」は人(特に日本人)により評価が分かれるかなというのもまた、私の正直な感想である。

① 気にする人は気にするかも?

今回乗ったタクシーは、海外の旅行会社によって手配された。別に海外の旅行会社だからというわけではないが、たとえばタクシーが来なかったり事故に遭ったりした場合の対応がいかほどのものなのかについては、気にする方がいるかもしれない。

② 日本なのに英語でのやりとり?

今回はタクシーが確定した段階で、ドライバーからはWhatsappで直に連絡があった。ただ、私のときは(たまたまかもしれないが)いきなり英語で届いている。

推測だが、Klookの空港送迎タクシーはそれだけ訪日外国人に利用されている、ということなのだろう。日本人の私は正直面食らったし、訪日外国人の利用がメインなのかなと感じずにはいられなかった。

私自身は、このやり取りも日本にいながら海外体験のようなものを感じられて面白かったが、人によって判断が分かれそうだ。

③ タクシー会社はいろいろある?

私が今回乗ったタクシーには、車体に社名とロゴが貼り付けられていた(※例によって社名は挙げない)

しかし、帰宅後に「どんな会社なのだろう」と会社の所在地をGoogleストリートビューで検索してみたところ、そこはオフィスビルの一室だった。(少なくとも私が調べた範囲では)営業所や車庫、整備拠点などは情報が見つけられていない。

まぁ憶測であれこれ語っても仕方ないし、海外OTAの「空港送迎タクシー」全てがそうというわけでは決してないだろう。ひとまず本件は「私が利用した事業者はこういうところだった」程度の記録として、参考程度にとどめていただければと思う。

おわりに

海外OTAによる日本の「空港送迎タクシー」を体験してみたが、感想を一言で言うならば「ちょっとした海外旅行の気分だった」に尽きる。

ドライバー氏は渋滞を避けるなどとても頑張ってくれて、移動そのものはとても快適だった。今回の体験は一回の利用による一例に過ぎないが、ニーズによっては有効な選択肢になりうるかもしれない。

ちなみに私個人が今後利用するかは、この際置いておくことにする。日本人利用者の体験談が増えてくるなど興味深い動きがあれば、今後も見守っていきたい。

口コミを投稿して、今回の取材は終了。さて、次はどんなタクシーに乗ってみようか。

(タクシーという意味での)関連項目

【ライドシェア】空港送迎「ニアミー」に乗ってみた
【ライドシェア】「自家用タクシー」に乗ってみた

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