【1/14新設】E721系「仙台地区」

E721系「仙台地区」

21世紀初頭の仙台地区では、まだまだ国鉄時代の417系や455系が主役級を張る日々が続いていました。これらをいわば‟一掃”する目的で2006年から導入が始まったのが、このE721系です。増備は怒涛の勢いで進み、翌2007年3月までに東北・常磐・仙山線の国鉄車をすべて置き換えています。

当時最新鋭のE231・E233・E531系をベースに、「基本の2両編成(→「備考」も参照)組み合わせて最大8両編成が組成できる」「仙台地区の低床ホームに対応する」など、地域の事情にカスタマイズした設計なのが特徴です。

写真は駅停車中の様子。車体側面はいかにも「JR東日本の電車」といった感じで目新しさはありませんが、車内に入ると本系列ならではの仕様が随所に見られました。さっそく見ていきましょう。

【備考:E721系0・500番台は2両編成、1000番台は4両編成】

E721系の基本形である0番台・仙台空港アクセス専用の500番台は2両編成ですが、2016年から導入された1000番台は4両編成で製造されています。

1000番台が置換対象とした719系は2両編成でしたが、実際の運用は4両または6両編成がほとんどでした。ゆえに「わざわざ(719系に合わせて)2両編成でつくる必要ある?」と判断されたとのこと。

また、これとは別に「運転台を減らせば車内の混雑が緩和できる」という副次的なメリットも考慮されたそうで(※登場当時のプレスによる)、要はさまざまな事情が総合的に判断されて4両になったということのようです。

モケット

(左)普通車

撮影日時・場所

撮影日:2024年2月

撮影場所:仙台駅 車内ほか

備考

特にありません。

普通車 車内

車内の全景。

車内はクロスシートを中心に、ドア脇のみロングシートとなる所謂「セミクロスシート」が採用されています。JR東日本が製造した3ドア車は数多くあれど、この座席配置は実に211系ぶりの採用となりました。

座席 – クロスシート

座席(左/上)と、窓側のスペーサー(右/下)の様子。

一見ではE231系後期型やE531系などのモケット違いですが、スペースの関係かシートピッチは1,585mmです(E231系やE531系は1,500mm)。私は取材時にこれを知らないで乗車しましたが、着座した瞬間から「ん、なんか広いな」と感じたほか、乗車中に向かいの人と膝がぶつかることもありませんでした。数値以上の効果はありそうです。

また窓と座席の間にはスペーサーが入っていますが、目立ちにくくするためか化粧板と同じカラーを採用しています。

座席まわりの握り手(左/上)と、窓側テーブルのアップ(右/下)。

クロスシート中央部の窓枠がすこし広くなっているほか、窓側には小テーブルが設けられています。缶飲料が2本置けるだけのスペースは一応ありますが、言うてこの車両けっこう揺れます(苦笑)。利用はボトル缶などにしておくと無難かもしれません。

座席 – ドア脇2人がけ

続いてドア脇のロングシート(左/上)と、クロスシート側の手すり(右/下)。

JR東日本の近郊型・通勤型車両の座席は「片持ち式」が基本ですが、E721系ではロングシート部分のみ昔ながらのカバー付きとなっているのが特徴です。機器を設置する関係とのことですが、具体的に何の機器なのでしょう?

座席 – ドア脇2人がけ優先席

で、こちらはドア脇が優先席となっているパターン。全景(左/上)と、床面のアップ(右/下)。

黒磯方先頭車(クハE720)は車端部にフリースペース・トイレがある関係で、ご覧のように優先席の位置がクロスシート側となっています。

車端部 優先席

仙台・盛岡方先頭車の車端部は、4人がけロングシートの優先席区画になっています。全景(左/上)と、座席のアップ(右/下)。

座席とは何も関係ありませんが、貫通扉は701系から引き続いて両開きとなっています。ワンマン運転時の乗客移動をスムーズにするための仕様だそうで、E721系もその流れを汲んだものでしょう。

座面(左/上)とつり革(右/下)のアップ。

E721系のデビューは2006年ですが、この時期はちょうどE231系からE233系への過渡期でした。そのためかは知りませんが、床面のゼブラ模様・少し黄色がかった化粧板などはE233系譲りの仕様ながら、つり革などはE231系以前の小型タイプとなっています。

このように、「E231系とE233系の折衷」のような内装が随所に見られるのが面白いところです。

フリースペース

黒磯方の先頭車(クハE720)には車いす対応トイレ・フリースペースが設けられています。全景(左/上)と、トイレ脇の2人掛け席(右/下)。

この2人がけ席の仕切は、ほかの区画と異なり背の低いタイプが採用されています。車いすやベビーカー利用の付き添い者の便を図ってでしょうか。

で、フリースペースのアップ(左/上)と非常用通報器など(右/下)。

寒冷地を走るゆえか、ヒーターが横長の大型タイプなのが特徴です。

その他の車内設備

天井(左/上)と荷物棚のアップ(右/下)。

ラインデリア(天井中央の吹出口)のルーバーはE233系を感じるデザインですが、荷物棚はE231系以前のポールを並べたタイプ。(先述しましたが)E231系とE233系のちょうど過渡期に生まれた車両らしいポイントと言えそうです。

つり革(左/上)と窓のアップ(右/下)。

つり革自体は、E231系で導入されているものと大差ありません。

運転台直後(左/上)と、車両番号表記のアップ(右/下)。

貫通路(中央の通路)横開き式となっており、ふつうの中間車のようなデザインです。

ドア

乗降用ドアの様子(左/上)と、ドアボタンの様子(右/下)。

ドア内側はE231系・E531系以前と同じ無塗装です。

トイレ

(上の「フリースペース」の項でフライング的に紹介してしまいましたが)最後に車いすでの利用に対応したトイレの様子を。外側から見た様子(左/上)と、トイレの入り口部分(右/下)。

トイレ部分には窓がないため、外から見るとかなりのっぺりした雰囲気なのが特徴です。

トイレ内部(左/上)と、鏡や各種ボタン類の様子(右/下)。

基本的にはE231系以降の仕様を継承しつつ、洗面台まわりなどのデザインはE721系オリジナルです。

概説

デビュー年:2006年

仙台近郊で使用されてきた455・457・417・717系の置換用として2006年11月にデビュー。

JR東日本の交流近郊型電車としては、701系以来の登場である。基本的なメカニズムや構造は同時期に製造されていたE231系・E233系・E531系をベースとしているが、寒冷地での運用を想定した耐寒構造となっている。

2006年11月のデビュー後、翌2007年10月までに東北本線・常磐線・仙山線で使用されていた旧型車を置き換えた。2016年からはその後も残っていた719系と入れ替わる形E721系1000番台の投入が開始され、翌2017年までに全車を置き換えている。

2025年現在はJR東日本の仙台地区で普通・快速列車に使用されている。

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