700系7000番台「ひかりレールスター」

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普通車指定席・コンパートメント
普通車自由席

700系7000番台「ひかりレールスター」普通車指定席・コンパートメント 編

かつて新幹線より航空の方が優勢だった京阪神と北九州の移動シェアを奪還すべく、JR西日本は1988年から0系新幹線を改造した「ウエストひかり」を運行していました。しかし0系では高速化や近代化に限界があり、‟後継”として導入されたのが700系7000番台「ひかりレールスター」です。

運行開始早々に「レールスターは満席続き、一方ののぞみはガラガラ」というのが常態化したという話は有名ですが、文字通り「山陽新幹線の‟看板”列車」として君臨。九州新幹線が開業した2011年以降は徐々に「ひかり」運用が減少し、現在は山陽新幹線内の「こだま」がメインの活躍の場となっています(→「備考」も参照)

写真は深夜の新山口駅にたたずむ700系7000番台。さっそく車内を見ていきましょう。

【備考:「ひかりレールスター」も1日1本だけあります】

2024年6月現在、この車両が「ひかりレールスター」として定期運用される便は「ひかり」590号(新下関0611→岡山0823)の上り1本のみです。

列車名こそ「ひかり」ですが厚狭以外は各駅停車となっており、実質「こだま」に近いダイヤとなっています。

モケット

(左)座席 (中)コンパートメント (右)カーテン

撮影日時・場所

撮影日時:2024年2月、一部2009年・2021年3月・2022年10月

場所:「こだま」789号、一部博多南線 車内

備考

当ページでは自由席での運用を想定した1~3号車を「自由席」、指定席を想定した4~8号車を「指定席」として記載します。

特に「こだま」運用時は、列車により自由席・指定席の号車が異なる場合があります。

4~8号車 普通車指定席「サルーンシート」

車内に入ります。まずは4~8号車の「指定席」区画から。

指定席は、「ウエストひかり」から引き続いて2+2配置を採用。新幹線で2+2配置と言えばグリーン車と同じ配置であり、車内の雰囲気は普通車とは思えないほどゆったりとしているように感じます。

車内を反対から見た様子(左/上)と、天井(右/下)の様子。

4~8号車 普通車指定席 座席

座席の様子。一般席(左/上)と車端部区画(右/下)です。

付帯設備は背面テーブル・カップホルダー・コンセント(車端部のみ)とシンプルですが、700系7000番台が登場した2000年当時としては平均的な水準と言えるでしょう。着座した感覚はやや固めです。

近年すっかり見慣れた、車端部の大型耐荷重テーブルコンセント。実は、これを最初に導入したのが「ひかりレールスター」だったりします。2022年10月までは5~8号車の進行方向最前列が「オフィスシート」と呼ばれ、通常の普通車とは別枠で発売されていました。(→「備考」も参照)

【備考:4号車のオフィスシートとコンセント事情】

一部で「ひかりレールスターの4号車にはコンセントがない」という記載を見かけることがありますが、結論から言うと4号車にもコンセントはあります。

「ひかりレールスター」の4号車はかつて「サイレンスカー」となっており、1両まるごと別枠で発売されていました。この‟1両まるごと別枠”というのがポイントで、4号車の進行方向最前列はあくまで「サイレンスカー」としての発売です。

要するに「4号車の進行方向最前列席にはコンセントはあるが(指定席の発売枠としての)オフィスシートはない」が正解です。これは「オフィスシート」の意味を‟設備”として捉えるか、‟指定席の発売枠”と解するかで生じる齟齬と言えるでしょう。

ただ、車内の案内表記には5〜8号車の進行方向最前列にはコンセントがありますとの記載がありました。かつて「5~8号車の(中略)オフィスシートです」と案内されていた頃の名残かは不明ですが、このような勘違いが起こるのも致し方ない気はします。

(さらに備考)
サイレンスカー車内では車内放送の省略・車内改札はチケットホルダーで完結・車掌や車内販売は声かけ省略などが行われていました。2011年3月改正で設定が廃止されています。

7号車 車椅子対応区画

7号車の新大阪寄りには車いすでの利用に対応した区画があり、該当の部分は1人掛けとなっています。

全景(左/上)と、1人掛け席のアップ(右/下)。1人がけ席は2列ありますが、車いすでの利用に対応しているのは2列目の12A席のみです。13A席も1人がけですが、よく見ると固定用ベルトなどの車いす対応設備がありません。

車椅子対応区画の座席(左/上)と、全展開時の様子(右/下)。

車いすの固定用器具があるのを除き、他の普通席と大きな違いはなさそうです(→「備考」も参照)

【備考:700系7000番台の車いす対応席事情】

7号車は、「こだま」運用時は基本的に自由席として使用されています。この車いす対応席は‟隣が確実に来ない席”ということもあってか、「知る人ぞ知る座席」として認知されているようです。

私は700系7000番台を都合3回取材していますが、毎回のように始発駅でこの席に直行する常連ふうの方を見かけました。もちろん「こだま」で隣に人が来ること自体まれなので本当にこの設備を必要とする方が見えたら、譲るようにしましょう。

座席まわりの設備

センターアームレスト(左/上)と、座席肩部のビニールレザー(右/下)。

アームレストは、大きさのわりにビニールレザーの肘掛け・木目調はシート(しかも座席により擦れあり)ややチープな見た目です…があくまで「普通席」なので相応の仕様でしょう。アームレストのサイズはグリーン車レベルですが、設備は普通車水準という奇妙なコラボがそこにあります。

ソデ体(座席両端のアームレスト)には引き起こし式のカップホルダーが設けられています。

サイズは車内販売のコーヒーを想定したものとみられ、ペットボトルが微妙に入らない中途半端な大きさでした。

特大荷物スペース

指定席号車の最後部座席は近年「特大荷物スペースつき座席」となっており、指定席として使用される号車の該当部分にはご覧のようにその旨のシールが貼られています。

なお「こだま」の指定席は基本的に4~6号車ですが、繁忙期など不定期に7・8号車も指定席となる場合があります。取材時に確認したところ、7号車も4~6号車と同一の仕様になっていました(8号車は後述)

で、こちらが8号車の「特大荷物スペースつき座席」の様子。

一見、コンパートメントと普通席の間にある‟荷物置き場然としたところ”が「特大荷物スペース」に見えますが、実際には他の号車と同じ場所(上述)なので注意してください(→「備考」も参照)

【備考:8号車の謎の荷物スペース事情】

この‟荷物置き場然としたところ”は、車内では特段案内されていません。

(あくまで管理人の推測ですが)コンパートメントを設置した結果「座席を1列置くには狭すぎるデッドスペース」が生まれてしまい、それを荷物置き場として活用したものと思われます。

その他の車内設備

通路(左/上)と窓(右/下)の様子。

やけに通路が広く見えますが、これは決して写真の都合ではありません(笑)。座席の横幅がわずかに広いだけの座席を2+2配置で配しているため、実際には写真で見る以上に広いです。

荷物棚(左/上)と、窓間のコートかけのアップ(右/下)。

他の700系と比べ、特に内装が大きく異なる7000番台。しかし、荷物棚だけは全てこの仕様で統一されています(笑)。棚の窓は擦りガラスとなっており、着座した状態でも荷物の有無程度は確認できます。

車内のLED案内表示(左/上)と、「ひかりレールスター」運用時のみ見られる「Rail Star」のロゴ(右/下)。

8号車 コンパートメント 通路

続いて、700系7000番台の‟目玉設備”とも言える「コンパートメント」を見ていきます。まずは通路の様子から。

新幹線のコンパートメントは100系以来の登場ということで、デビュー当時かなり話題になったとか。ちなみに、2024年現在でも新幹線で唯一のコンパートメントです。

8号車 コンパートメント 室内

※ 以降の写真は2021年3月・2022年10月撮影

コンパートメントの全景。

ブルー系が中心の普通車に対し、コンパートメントはブラウンを基調としたシックな仕上がりです。4人分のボックス席となっていますが、予約・利用は3人以上から可能となっています(→「備考」も参照)

【備考:「コンパートメント」は2人以下では使えないのか?】

結論から言うと「山陽新幹線ではNG、博多南線では一部列車で自由席としてOK(後述)との回答でした。2023年・2024年に私が問い合わせたところ、コンパートメントは3名または4名での予約・利用が必須となっているとのことです。

一部では「1〜2人でも3名分以上の指定席券・乗車券を購入すれば利用可能」との情報が発信されていますが、2024年現在は一律でNGとなっているとのことなのでご注意ください。

(さらに補足)
念のため、取材時に(失礼を承知で)駅窓口の方に伺ったところ
実際に乗車しない人の乗車券・特急券を発売することはできないため、定員未満の利用はそもそもNG。これまでOKだった・規定が変わったというわけではない。3名分以上の料金を払っていれば、実際乗っているのが2人以下でもなあなあで‟黙認”される場合があったというだけ。現在は一律でお断りしている」(意訳)
とのことでした。

荷物棚(左/上)と、コンパートメントの仕切り部分・照明(右/下)の様子。

天井部分はスルー構造となっており、「コンパートメント」と言えど完全な個室ではありません。荷物棚まわりも一般席と同一の構造になっており、(推測ですが)その気になればコンパートメントを撤去して一般席への作り替えが可能な設計となっているようです。

8号車 コンパートメント 座席

コンパートメントの座席の様子。通常状態(左/上)と全展開状態(右/下)。

座席後ろはパーティションに阻まれているため、座面を前にスライドしてリクライニングする方式が採用されています。座り心地は博多~博多南の8分間は撮影だけで手一杯だったためほぼ座れていませんが座面・背もたれともに柔らかめでした。

リクライニングした状態の座面のアップ(左/上)と、中央のアームレストを跳ね上げた様子。

個室内の設備

各個室の窓際にあるテーブルランプ(左/上)と操作盤(右/下)のそれぞれアップ。

操作盤にはコンセント(1口)のほか、テーブルランプ・天井灯の入切スイッチが備わります。

中央テーブルを展開した状態(左/上)と、博多南線内での利用に関する表記(右/下)。

博多南線内では基本的に閉鎖されるこのコンパートメントですが、一部の列車では自由席として開放されています。現状では、この博多南線が3人未満で合法的にコンパートメントを利用できる唯一の手段となります。

【備考:博多南線でコンパートメントに乗れる?】

山陽新幹線から直通する「こだま」の本系列充当便のうち、一部(※)にコンパートメントの発売がある列車があります。この列車のコンパートメントは博多南線内では自由席となるため、空いていれば2人以下でも利用可能です。

また、これとは別に2020年8月~2023年春頃の一時期、混雑緩和を目的としたコンパートメントの開放が行われていた時期がありました。

なお、当サイトで掲載しているコンパートメント内部の写真はすべて博多南線運用時に撮影しています。

(※)時刻表上で「700系グリーン車なし」「8号車が指定席」の両方を満たす「こだま」

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概説

デビュー年:2000年

航空とのシェア争いが激しい京阪神間の需要喚起と、老朽化の進んでいた「ウエストひかり」の置換を目的として2000年にデビュー。

最高速度は285km/hで、これは「のぞみ」用(当時)の700系と同一。デビュー時は「スピードはのぞみ並み、設備はのぞみ以上」とも評され、好評を博した。全車両が普通車、指定席車両は2+2配置など、「ウエストひかり」の要素を受け継いでいるのが特徴。また、新たな試みとして8号車に普通個室が4室設けられた。

2011年の九州新幹線開業後は、「さくら」と入れ替わる形で「ひかりレールスター」が減便となり、「こだま」運用が増加した。2024年現在、「ひかりレールスター」の定期運用は上り1本のみとなっており、「こだま」主体の運用となっている。

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