500系「山陽こだま」 – 指定席/自由席・お子様用運転席
史上初の300km/h運転を開始し、東京~博多の最速到達時間を4時間49分にまで引き上げた車両がこの500系です。技術面で様々な新機軸を盛り込み、1997年のデビュー以来、一貫して「のぞみ」で使用され続けました。
N700系の増備が進んだ2008年以降は、8両編成に短縮されて山陽新幹線「こだま」に転身。すでに2027年の引退が決定していますが、現在でも先頭部で‟記念撮影大会”が毎日繰り広げられるほどに、その人気は不動のようです。
さて、当ページでは最後の活躍を見せる500系の車内を見ていきましょう。
モケット
(↑)普通席 (↑)カーテン (↑)普通席
※4・5号車のカーテンは「自由席」の項参照
撮影日時・場所
撮影日:2017年01月05日
撮影場所:新山口駅 「こだま」767号 車内
備考
特にありません。
6号車 指定席 – 車内全景
山陽「こだま」の500系には3パターンの内装があります。どのような順番で掲載するか散々迷ったのですが、一応「座席が良い順」で6号車から見ていきましょう。
前置きが長くなりましたが、6号車の指定席車内の様子です。16両編成時代はグリーン車である10号車に連結されており、「こだま」への転用に伴って普通席化されたものです。
車内を反対から見た様子(左/上)と、天井の様子(右/下)。
「こだま」への転用時に、床はカーペット敷きから単なる「床」になりました。もっとも、カーペット時代に近いカラーの床材となっており、元の雰囲気を壊さないような配慮が垣間見えます。
6号車 指定席 – 座席
一般席(左/上)と車端部(右/下)。
座席そのものはグリーン席時代と同じですが、普通車へのダウングレード化に伴い、ピロー・フットレスト・オーディオパネルの撤去、座席肩部に手すりを兼ねたレザーの新設が施されているのが特徴です。
座席まわりの設備
座席肩部のレザーによる手かけ(左/上)と、オーディオパネルの跡地(右/下)。
「こだま」への転用改造時にオーディオユニットは撤去され、現在は見ての通りカバーがかけられています(→「備考」も参照)。
【備考:500系グリーン車のひじ掛け事情】
グリーン車時代にはこのひじ掛け先端部分に読書灯の操作スイッチが配されており、利用者は座ったまま読書灯のオンオフができました。
「こだま」への移設に伴い、このカバー部分は完全に交換されたようで、スイッチは跡形もなくなっています。
6号車 車内設備
座席番号・荷物棚(左/上)と通路の様子(右/下)。
「こだま」転用に伴って荷物棚は完全に交換されており、かつてあった読書灯はなくなりました。もっとも交換後の部品も内装に合ったカラーで、全体の雰囲気を壊さない仕上がりに配慮されているのが垣間見える気がします。
客室とデッキの仕切扉(左/上)と車内のAEDの様子(右/下)。
荷物棚上にはあるAEDボックスは、天井の丸みに合った形に成型された専用のものが使われています。
4・5号車 車内全景
続いて4・5号車の普通車を見ていきます。
この座席に見覚えのある方も多いと思うのですが、>>700系「ひかりレールスター」の指定席車両と全く同じです(→「備考」も参照)。
【備考:4・5号車が「ひかりレールスター」の座席になったわけ】
8両編成「こだま」の指定席は6号車のみでしたが、多客期などは加えて4・5号車も指定席となる場合がありました。その場合、6号車はグリーン車お下がりの2+2配置、4・5号車は従前通りの2+3配置と、同じ料金ながらサービスの格差が生じてしまいます。
これを解消するために行われたのが、4・5号車の2+2配置化。2013年10月からスタートし、同年12月までに全編成の工事が完了しています。
車内を後ろから見たところ(左/上)と通路の様子(右/下)。
座席以外は改造前から大きく変わった点は見られませんが、左右の座席で台座の形状が異なっているのがポイントです。元3人がけ側の台座(写真右側)は明らかに大きく、「改造前のなんらかの痕跡」を隠すためと思われます。
座席本体の底部も左右で異なる構造をしており、座席の型番も違うとのこと。一見では見つけにくいですが、非常に「改造車らしいポイント」なので乗車されたときにはぜひ見てみてください。
4・5号車 座席
座席の全景(左/上)と、アームレスト部分のアップ(右/下)。基本的な設備や座り心地は、>>700系7000番台「ひかりレールスター」に同じです。
2+2配置化されたとはいえ、元々グリーン車の6号車と比較するとどうしても見劣りしてしまうのはやむを得ないところです。
「こだま」指定席利用の割引乗車券では、この4・5号車が優先的に割り当てられるらしいという‟ウワサは”ありますが…念のため正規料金で指定席をとる場合は、6号車を指名した方が良さそうです。
4・5号車 車端部区画
車端部区画の全景(左/上)と、新設された1人がけの様子(右/下)。
今回の改造で、最も大きな変化があったのがデッキ寄りの座席です。一見では車いす対応席か何かのようにも見えますが、あくまで一般の座席である点がポイントでしょうか(→「備考」も参照)。
【備考:車端部がふしぎな配置になったわけ】
普通車のデッキ・客室仕切扉は、2+3配置時代の名残で片側に寄っています。
ここの元2人がけ側に大ぶりな「ひかりレールスター」仕様の座席をおくと、通路側の席は仕切扉のまん前。改造車とはいえこれはまずいと判断されたのか、上記のようなふしぎな配置が採用されました。
改造内容は、主に「元2人がけ側は1人がけに変更」「パーティション新設」の2点。車内を出入りする利用者の動線を確保しつつ、上記の問題を解消しています。
元々3人がけだった部分に設置された2人がけ席(左/上)と、1人掛け席直後の2人掛け(右/下)。
1人がけ席の直後にある2人がけは、進行方向によっては通路側のテーブルがなくなります。パーティションにテーブルが設けられてはいますが、テーブルの位置はかなり前と使い勝手は大したものではありません。
このパーティションの主たる目的は、あくまで利用者の動線の分離なのでしょう。
このページは2ページ構成です。次は>>自由席・お子様用運転席 編です。
概説
デビュー年:1997年
対航空機への競争力強化のために、JR西日本が開発した「のぞみ」用の車両。それまでの東海道・山陽新幹線の車両とは一線を画す、斬新なデザインと先進技術の投入が当初は注目された。
高速化による騒音対策や、空気抵抗の減少によるスピードアップを図っているため、先頭部分は戦闘機のような細い形状が取り入られている。また、車体全体も航空機に類似した円形に近いものになっており、これまでの車両とは全く異なるデザインが導入された。T型パンタグラフなど過去に例を見ない技術もふんだんに取り入れられたが、一方で車内定員が300系や700系と異なることから、特にダイヤ乱れ時の柔軟な運用ができないなどの問題があった。
16両編成9本が製造され、長らく「のぞみ」の最速達列車に充当された。後継となる700系の最高速度が285km/hであり、N700系の登場まで「最高速」車両として不動の地位を確立していた。
2007年以降、500系と同じく300km/h運転が可能なN700系が増備されたことにより、本系列は2010年をもって「のぞみ」運用から撤退。これと前後して8両編成への短縮が行われ、現在は山陽新幹線内限定で「こだま」にて運用されている。
山陽「こだま」への転用に伴い、最高速度は285km/hへダウンしているほか、特徴的だったT型パンタグラフはシングルアーム式に交換、喫煙ルームの新設などが行われている。
現在は新大阪~博多の「こだま」および博多南線で運用されている。かつては8両編成による「ひかり」の定期運用が存在した。