185系「踊り子」「湘南ライナー」 普通車

185系「踊り子」「湘南ライナー」 – グリーン車 / 普通車

平成の時代の伊豆を支えた2種の特急型車両が伊豆急下田駅で顔を並べます(左/上)。行先表示は昔ながらの字幕式(右/下)。

モケット

(左)普通車 (右)床材

撮影日時・場所

撮影日:2014年3月15日、2016年4月19日、2019年12月10日ほか

撮影場所:伊豆急下田駅 車内ほか

備考

特にありません。

普通車

変わって普通車の車内に入ります。普通車も2000年代に入る頃からリニューアルが行われ、座席、化粧板、床材の交換が施されました。かつては化粧板や貫通路が、コルクというか木目調のような妙に凝った柄だったのですが、リニューアルを機にモスグリーンのような色調になっています。座席の色もグリーン系なので、この車内のコンセプトカラーは「緑」なのでしょう。

ちなみにリニューアル前は、座席モケットこそ異なるものの同時期にデビューした“近郊型”の>>117系と同じ座席が配置されていました。

車内を後ろから見たところ(左/上)と天井の様子(右/下)。座席の背面テーブルは黄ばんでいるものとそうでないのが混在しているのが面白いところです。

普通車 座席

座席の様子。(左/上)が一般席区画、(右/下)が車端部の区画となります。

座席は「1990年代の特急の座席」として、一大勢力を築いたといっても過言ではないR55系列のR55Iが配されました。背もたれは張りがあってそこそこ固め、座面も経年によるヘタりは見受けられるものの、比較的固めの掛け心地になります。

車端部の区画におけるテーブルはご覧のように一枚板。テーブル上の丸い窪みは、リニューアル工事に伴って取り付けられたものでしょうか。もっともこの185系、(特に伊豆急行線内では)それなりに揺れるので、ここに紙コップを置くのはやや勇気がいりそうです。

座席背面のアップ(左/上)と座席を正面から見た様子(右/下)。リニューアル工事からも20年が経過し、一部のテーブルは相当に黄ばみが進行していました。
あまりに黄ばみのひどいものや、汚損・破損したものは適宜交換されているようで、末期は写真のような「通路側と窓側でテーブルの“色”が異なる座席」も散見されました。

各種車内設備

荷物棚の様子(左/上)と窓間のコートかけ(右/下)の様子。こちらはデビュー当初から特に変わりないようです。

車内から見た窓(左/上)と通路(右/下)の様子。特急の側面窓は国鉄時代から「固定」というのがもはやお決まりでしたが、185系では普通列車としての運用を考慮して開閉式が採用されています。

当時、鉄道車両の窓は、国鉄メークの通勤型・近郊型車両で見られる「二段窓」が主流でした。しかしこれを採用すると、“いかにも普通列車”な見栄えになるのは避けられません。これが“「特急」としての運用時に問題がある”と開発陣が判断したため、「二段窓」の採用は見送りに。結果、当時としては斬新だった一段開閉式を採用し、普通列車向けの開閉できる窓特急のイメージに相応しい外観の両立が図られています。

国鉄時代の「特急」は、旅客列車では最上等の種別であり、車内設備はもとより見た目のイメージも重視されたようです。ちょっとした本系列ならではのエピソードなので、こちらで紹介してみました。

デッキと客室の仕切扉

デッキと客室の仕切扉(左/上)と非常通報器や「スワローあかぎ」の案内など(右/下)。

従来、デッキとの仕切扉は、完全に開けた状態でも取っ手部分の“引き残し”が生じていました。185系はこれを、化粧板部分に切り欠きを設けて“取っ手の入り込む場所”を作り、有効開口幅を他の特急車と比較して7cm拡大し、(他の特急型と比べて)スムーズな乗降を可能にしているそうです。たかが7cmですが、ラッシュ時にはきっと無視できない7cmになったのでしょう。

普通に利用していると気づくこともないポイントですが、こんなところにまで「特急にも、普通にも使える車両」を実現するための要素が隠されているのが面白いところです。

一部デッキにはかつて自動販売機が設置(左/上)されていましたが、横幅の関係で緑茶とポカリスエットのみのラインナップでした。現在は使用中止となっており、自動販売機本体は表面を裏返しただけでそのまま残されています。

先述した「スワローあかぎ」の案内はデッキにも残っていました(右/下)。「スワローあかぎ」から185系が撤退して久しいですが、その後も651系の故障時など極めてまれに代走で入る場合があり、それを想定して最後まで残していたものと思われます。

トイレ・洗面台

洗面台の様子(左/上)とシンクのアップ(右/下)。国鉄型の特急・急行型車両ではよく見かけた仕様で、デビュー当時から大きく変わっていないと思われます。

細かいところですが、蛇口部分が金属製(左/上)と陶器製(右/下)など、個体によって細かい差異が見られるのが面白いところです。これは製造時期による違いでしょうか。

トイレの様子。和式トイレには何パターンかあるようで、(左/上)がデビュー当時からの残すもの、(右/下)が便器の陶器化、化粧板の張り替えなどのリフレッシュが行われたものになります。この2枚の写真は同一編成で撮影しており、同一編成でもトイレの内装は統一されていないようでした。

>>このページは2ページ構成です。<<「グリーン車 編」を再度ご覧になる場合はこちらをどうぞ。

概説

デビュー年:1980年(車両)

国鉄時代に「特急から普通列車まで幅広く使える車両」をコンセプトに開発され、1980年にデビュー。

特急・急行での使用を見据えてデッキと客室は分離されているが、普通列車としての運用時に乗客がスムーズに乗降できるよう、他の特急車両に比べてドア幅が大きく取られているのが特徴。

2014年以降は、全車が大宮車両センターに所属していた。主に「踊り子」(東京~伊豆急下田・修善寺)のほか、早朝深夜に「湘南ライナー」など各種ライナー運用、繁忙期は「ムーンライトながら」(東京~大垣)などと幅広い地域に顔を出す。
かつては「草津」(上野~万座・鹿沢口)、「はまかいじ」(横浜~松本)などでも使用されていた。

1980~1982年に製造された車両ながら、2013年3月まで1両も廃車が出なかったものの、同年4月1日に中間の付随車が廃車になった。以後、2021年3月改正で「踊り子」から引退し、以後は一部の編成が波動用として臨時列車・団体列車で使用されている。

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