キハ47形「新潟地区 クロスシート車」
新潟地区の非電化路線は、2010年代に入ってもまだまだキハ40系列が主流でした。磐越西線や只見線といった非電化路線はもちろん、電化されていながら交流・直流区間が混在する羽越本線の普通列車にも使用されるなど、幅広いエリアで活躍。「青春18きっぷ」での旅行でお世話になった方も多いのではないでしょうか。
しかし“寄る年派”には抗えなかったのか、2010年代後半に入ってから後継車の導入が一気に進行。2020年3月での完全引退も発表されました。かつて「国鉄型大国」とも呼ばれたらしい新潟のJR各線も、確実に車両の世代交代が進んでいるということなのでしょう。
さて、このページではそんな新潟エリアのキハ47形を扱います。キハ47形とは、いわゆる「キハ40系列」のうち、「ドアが両開き+片運転台」の車両です。こちらは昔ながらのクロスシートを最後まで残しており、車内に入るととても“令和の時代”とは思えないノスタルジーを感じたものです。さっそく見ていくことにしましょう。
モケット
(左)座席 (右)カーテン
撮影日時・場所
撮影日:2019年12月12日
撮影場所:磐越西線 新潟駅 車内
備考
説明の簡略化のため、運転台やドアの形状に違いがありますが基本構造は同一であることから「キハ40・47・48形」を総称して「キハ40系列」と呼称する場合があります。
車内全景
車内の様子。冷房化改造こそされているものの、それ以外大きく手を加えられた形跡はありません。国鉄時代から変わらない濃紺のモケットも相まって、これが(平成を通り越して)本当に令和の時代なのか?と思ってしまうほどのノスタルジーに溢れた空間がそこにあります。
またしても車内の様子ですが、座席ひじ掛けの色に注目(左/上)。車両によってはひじ掛けがブラウンに塗装されていました。JR分割民営化後に、車両によって体質改善工事を受けたかどうかの違いと思われます。
写真(右/下)は天井の様子。空調機器が後付けされたわりには、ゴツゴツした雰囲気もなくすっきりとまとまっています。現代の基準からすると、照明機器がやや間隔を置いて配されているためか、特に夜間はやや薄暗い車内となります。
ボックスシート
というわけでボックスシートの様子。(左/上)が先に紹介した原型、(右/下)がひじ掛けの色違いとなります。
見慣れた国鉄型車両のボックスシートですが、写真の個体はその中でも比較的後期に製造されたタイプと思われます。初期のそれに比べて腰部分の張り出しが大きい、フレームが全体的に分厚く作りが堅牢などが、見分けのポイントと言えるでしょうか。
キハ40系列に共通する話なのですが、座席下には(国鉄型の車両にしては珍しく)空間があるので、通路側、かつ空いていれば座席下に脚を伸ばせるでしょう。もっとも、暖房だかのダクトがある関係で、窓側は足元がやや狭くなってしまいすが…。
ボックス席を表面から見た様子。(左/上)と(右/下)は、例によってひじ掛けの色違いとなります。
ドア脇 – ロングシート
ドア脇の座席のはロングシートとなっていますが、ドア間方向のそれはスペースの関係で2人がけ(左)と3人がけ(右)が存在します。
座面は擦り切れることもなくきれいな状態を保っているものの、座面のスプリングは経年的にそろそろ限界が来ている感は否めません。
運転台直後 – ロングシート
運転台直後の座席は5人がけのロングシートとなっており(左/上)、座席のアップが(右/下)となります。5人がけはとはいえ、よく見ると上の項目で紹介したドア脇のロングシートと同じ、2人がけと3人がけを並べたもの。うまく出来ているなと感じずにはいられません(笑)。
ちなみに片側の荷物棚上には、黄色いホロで覆われたモノが設置されていますが、これは非常用のハシゴとのこと。この上に荷物を置くわけにはいかないので、網棚を使いたい場合は他の区画を選んだ方が良さそうです。
車端部 – ロング&クロスシート
変わって車端部の様子(左/上)。3人がけロングシート、3人がけ優先席と続いて、一番奥がボックス席1区画となっています。優先席部分(右/下)は、JR東日本共通の優先席モケットに換装されているほか、つり革も近年黄色いものに交換されています。
車端側にあるボックス席の様子(左/上)。貫通扉がある関係で、壁に接する側の座席は他のボックス席よりやや幅が狭くなっているのが特徴です。
写真(右/下)がそのアップですが、左側の座席と右側のそれをぜひ比較してみてください。ちなみに実際に見ると、写真で見る以上に幅の違いがあります。
車内設備
網棚の様子(左/上)と窓間のコートかけの様子(右/下)。文字通りの“網”棚も、このタイプのコートかけも最近では一気に見かけなくなった気がします。
通路の様子(左/上)。昔ながらのボックス席、濃紺の座席モケットとグレーのひじ掛けがずらっと並ぶこの光景は、近年ではまさに絶滅危惧種と言っても過言ではなく、すっかり貴重になってしまいました。
写真(右/)はドアの開閉ボタン。こちらはJR東日本の一世代前のスタンダードです。
座席肩部の握り手(左)。こちらも国鉄型の“標準装備品”ですが、見かけに反して角がない設計なためか、どこを握っても握りやすく、手が痛くなることもないように感じます。
写真(右)はロングシートを真横から見た様子。デビュー当時から特に変わっていないものと思われますが、座面と背もたれの間がどうなっているのか分かるアングルなので紹介してみました。
おまけ
新潟地区のキハ40系列は「濃紺のモケットをまとったボックス席に、二段式の窓」という、まさに「ザ・国鉄型」と言っても過言ではない空間を令和の初頭まで残していました。たまたま私が取材した列車が、全区間にわたり私の貸切だったことから、車内を歩いてみた動画もご紹介します。写真では伝わり切らない本系列の雰囲気をぜひ感じてみてください。
なお、動画は>>キハ40系列「新潟地区 ロングシート車」の車内も含めて撮影しています。コンテンツと併せてどうぞ。
概説
デビュー年:1977年(車両)
1950年代に製造されたキハ10系を初めとする通勤用気動車の後継として1977年にデビュー。1982年までに888両が製造され、日本全国の非電化区間で主に普通列車として用いられた。
基本は両運転台のキハ40系列、片運転台のキハ48形、両開きの乗降ドアを備えたキハ47系に大別されるが、製造後、各地へ転配されたことから必要に応じた改造を受ける車両も多く、番台区分は多岐に渡る。