413系「北陸地区」
国鉄の分割民営化前後に深刻な財政難に悩まされていた国鉄が、「安く近郊型電車を作ろう」というコンセプトのもとに登場させたのがこの413系です。
当時余剰となっていた475系列の足回りを流用し、車体だけを新造するという手法でコストカットを図って1986年にデビュー。急行型車両や客車が主流だった、北陸地域のローカル輸送の改善に大きく貢献しました。
521系の投入に伴い、2021年3月にJR西日本からは完全に引退。2000年代は敦賀~直江津の広範囲で見られましたが、最末期は七尾線がメインの運用線区となっていました。
モケット
(左)座席 (右)カーテン
車内全景 – 体質改善工事・施行車
車内の様子。
2013年頃から施された体質改善工事(平たく言うと設備の近代化)が施されており、工事前と比べて「つり革・握り手・手すりが黄色いものに交換されている・ドア部分に黄色いシールが貼られている・床材の交換などの違いが見られます。
車内全景 – 体質改善工事・未施行車
比較用に未施行車の様子を。車内全景(左/上)と座席の様子(右/下)。
パッと見では国鉄型の車内ですが、ドア脇の仕切に曲線が導入されているのが特徴です。“直線的”で“無骨”な内装が多かった国鉄型車両らしからぬ一面もあり、そこがこの車両の面白いところでもあります。
※ 以後の写真は、体質改善工事・施行車で撮影しています。
座席 – ボックスシート
ボックス席から見ていきます。
413系のボックス席は、種車となった475系列のものを流用したものです。窓側のひじ掛けこそ撤去されていましたが、急行型のボックス席を令和まで残した貴重な存在でした(→「備考」も参照)。
【備考;この座席、ヴィンテージ品かも】
ちなみにこのボックス席は、国鉄型車両の中でもかなり初期に製造されたものと思われます。
フレームが全体的に薄い、座席肩部にはカマボコ型(半円型ともいう)の握り手があるのが特徴です。車両の置換が進んだ現代では、もはや「骨董品」とも言える座席でした。
座席 – ドア脇ロングシート
続いてドア脇のロングシート。全景(左/上)と、正面から見た様子(右/下)。
ドア脇には強化ガラス製の風防が設けられており、冬場の室内保温に配慮されているようです。実際の効果は…書かないでおきます(笑)。
座席 – 車端部ロングシート(優先席なし)
続いて車端部のロングシートを見ていきます。この区画はかなりバリエーションがあるので、しばらくロングシートの写真が連発されますが気長にお付き合いください(笑)。
まず一発目は中間車・七尾方にある「オール一般席」の車端部区画。
よく見ると、左側は「2人+3人+2人」、右が「3人+4人」(ただしほぼ同一長の座席を配しているので実測は3.5人+3.5人が正しい)の作りになっています。
座席 – 車端部ロングシート(優先席あり)
続いて中間車・金沢方の「優先席あり」の車端部区画。
座席の配置は、やはり「片側が2+3+2、もう片側は3+4」。そのため、写真左は優先席が2人がけ・右は3~4人がけ程度と、左右で席数に違いが生じています。
座席 – 運転台直後のロングシート(優先席なし)
次は先頭車・七尾方の運転台直後の区画。
4人がけ程度のロングシートが設置されています。
座席 – 運転台直後のロングシート(優先席あり)
そして、先頭車・金沢方運転台直後の区画はこんな感じ。
運転台後ろがやや出っ張っている構造のため、写真左側の席数が1人分少ないのが特徴です。だから何?と言われればそれまでなのですが…。
座席 – 車端部トイレ付き区画
ロングシートのフィナーレを飾るのは、トイレがある金沢方先頭車(七尾線基準)の車端部。
トイレの入口向かい側には、なぜかボックス席の‟片割れ”が。トイレに出入りする際に、ロングシートの利用者と目があってしまうのを避けるためでしょうか(→「備考」も参照)。
【備考:片割れボックス席の居住性事情】
この座席、「すぐ脇がトイレ」という時点で居住性は望むらくもありませんが、すわった状態の視線は‟ロングシートの人の横顔を常時見る”ような形になります。
またボックス席の通路側で脚を投げ出すと、ロングシートの利用者とどうしても干渉してしまいがちでもありました。
居心地のよい空間とはお世辞にも言えず、比較的混雑している時間帯もこの区画はわりと空席のことが多かったように記憶しています。
トイレと反対側のロングシート(左/上)と、ボックス席の片割れの様子(右/下)。
このボックス席、よく見るとクッションの形状や張り出し方が、ほかの区画と比べて微妙に異なるのと特徴です。推測ですが、細部の形状などから近郊型と同一の座席(415系など)を配置しているように見えます。
各種車内設備
先頭車の天井(左/上)と荷物棚の様子(右/下)。
空調設備、荷物棚ともに種車となった475系列のものを流用しているようです。
通路の様子(左/上)と車両番号表記、非常通報器(右/下)の様子。
車両番号は銘板ではなく、化粧板に直接表記されています。
握り手とつり革
ボックス席の握り手(左/上)とロングシート部分のつり革(右/下)の様子。
いずれも体質改善工事に伴って、黄色に塗装されています。塗料に樹脂か何かが含まれているのか、にぎった時に感じる金属特有の“寒々しさ”は少なくなりました。
ドア
乗降用ドアの様子。ドア部分には一段ステップが設けられています。
※以後、トイレ内部の写真が含まれます。
トイレ内部
トイレの様子。国鉄型のいわゆる「列車便所」が最後まで現役でした。
車両概説
デビュー年:1986年
1980年代に深刻な赤字に悩まされていた国鉄が、少ない費用で輸送の改善を図るため、余剰となっていた急行型の471系と473系を改造して近郊型電車としたもの。1986年に登場した。車体は両開きの2つドア、車内もセミクロスシートとなっているため、通勤輸送に対応できる。
JR西日本からは2021年3月のダイヤ改正をもって引退。最末期は北陸本線の小松~金沢、及び七尾線をメインに運用されていた。一部の車両が「あいの風とやま鉄道」「えちごトキめき鉄道」に譲渡されたものの、「あいの風とやま鉄道」所属車は既に全車が引退している。