251系「スーパービュー踊り子」

251系「スーパービュー踊り子」 – グリーン車 / 個室・サロン / 普通車その他

伊豆急下田駅で肩を並べる2本のスーパービュー踊り子（左／上）。（右／下）はSVOのロゴで、先頭車に設けられています。車体のサビや波うちが目立っていた末期、このロゴだけが相変わらず輝いているのは、どこか寂しさを感じずにはいられませんでした。

4・6・8・10号車 普通車（偶数号車）

かつて251系の普通車は「カスタムユニット」と呼ばれていました。フランス製の座席を使った全国的にも類を見ない車内だったのですが、2002年からのリニューアル改造で国内メーカーの座席に全て換装されています。前置きが長くなりましたが、まず偶数号車の普通車から見ていきます。

座席モケットに大胆にあしらわれた赤系のカラーはとても眩しく、視界に訴える効果は十分です。ちなみにこの座席のカラーは、ズバリ「ハイビスカスピンク」というそうで、いかにも「海」らしいネーミングです。

車内を後ろから見たところ（左／上）と10号車2階席の様子（右／下）。10号車は2階建て構造となっており、その2階が普通席。やや天井が低く、荷物棚もないため天井回りがすっきりしているのが特徴です。

3・5・7・9号車 普通車（奇数号車）

変わってこちらが奇数号車の車内。こちらは先ほどの「ハイビスカスピンク」とは対照的に、ブルーでまとめた車内となります。こちらの名称は「オーシャンブルー」。やっぱり「海」なのですね（笑）。

車内を後ろから見たところ（左／上）と通路の様子（右／下）。グリーン車は、通路から座席がさらに一段高いセミハイデッキ構造でしたが、普通席は通路も座席部分も同一のフロアです。

座席

ようやく座席です。偶数号車の通常区画（左／上）と車端部（右／下）の様子。座席そのものは同時期にデビューした「リゾートしらかみ・ブナ」とほぼ同一ですが、こちらは座席背面のシートバックテーブルがありません。結果、付帯設備はインアームテーブルのみとなっています。

変わって奇数号車はこんな感じ。座面は柔らかめ、背もたれは固めというアンバランスな座り心地です。設備がやや少ないことも相まって、座席全体の居住性としては、今一つの評価を付けざるを得ません。
設備に限って言えば、同時期にデビューした「快速」のリゾートしらかみの方が、インアーム・背面テーブル、カップホルダー付きという逆転現象が発生していました（苦笑）。

1O号車　普通車 展望席

東京寄り10号車は普通席の展望席区画となっており、3列12席が配されています。こちらは東京方面行きにおいて先頭となり、天井周りなどの設備は1号車のグリーン車のそれと共通です。

展望席を前から見た様子（左）と座席の様子（右）。座席そのものは先に紹介した普通席のそれと同一ですが、グリーン車にはない設備として最前列には一枚板のテーブルが設けられています。

その他の車内設備

天井（左／上）と荷物棚（右／下）の様子。天井は、中央にルーバーを設け、ルーバー上の光源が天井を照らす間接照明となっています。窓が大きいこともあって照度はそこまで高くなく、トンネル走行中や夜間のライナー運用では非常に薄暗い車内でした。

荷物棚は、鉄道では珍しいハットラック式。旅客機の荷物棚と同じ構造です。このハットトラック、同時期にデビューした253系「成田エクスプレス」や、651系「スーパーひたち」グリーン車でも見られました。

着座位置からはえらく離れていますが、一応読書灯とスポット空調も設けられています（左／上）。そのぶん照度はかなり高く、実際にトンネル走行中につけてみたところ、読書に適す照度というほどではないものの、多少は手元が明るくなりました。スイッチは読書灯脇にあるので、読書灯をつけるには一旦立ち上がる必要があり、実際の使い勝手としてはややイマイチな気がします。

（右／下）はデッキと客室の仕切扉。仕切扉脇にはLEDによる案内表示がありますが、251系がデビューした1990年といえばLED表示装置の黎明期で、案内表示は最後までほぼ日本語のみでした。

251系の窓を車内から見た様子（左／上）。腰から頭上にまで至るといっても過言ではない大きな窓は、デビュー当時はもちろん、それから30年が経った現在でも多くの利用者を惹きつけてきました。

写真（右／下）はデッキで見つけた車両番号表記の様子。写真の編成はなぜか「国鉄書体」でしたが、編成によっては通常の書体だったりと「個体差」があったようです。

10号車1階 プレイルーム

東京寄り先頭車の10号車1階には、子供用のプレイルームがあります。安全確保のためか、車内はクッションが多用されており、鉄道車両ではまず見ることのない内装なのが面白いです。

写真奥にはグリーン車サロンと同じくテレビが設けられており、こちらもかつてはアニメなどが放映されていたとのこと。しかし、私が取材した時はやはり「故障中」。引退まで、このテレビが再度活躍することはなかったようです。

プレイルームのまた別の例。こちらは2014年3月に撮影したものとなります。ネットで適当に調べてみた限りでも、これ以外にもクッションの色違いは数パターンあったようです。
たかがプレイルームですが、されどプレイルーム。趣味的にも意外に奥が深いようです（笑）。

プレイルームの奥には、カーテンで仕切れる授乳用スペースが設けられています。ベビーベッドも設けられており、おむつ替えなどにも対応した本格的なものでした。
なお、こちらのソファのシートモケットは、（単にプレイルームがあるのが10号車だから、ということなのでしょうが）普通車の偶数号車のそれと同じものが採用されています。

ちなみに、授乳用スペースの脇にはマガジンラックがありますが、私が取材した時は何も入っていませんでした。かつては、ここに絵本が陳列されていた時代もあったようです。

デッキと売店（5号車）

大型荷物置き場を備える3・7号車のデッキの様子（左／上）。右側は元々喫煙スペースですが、全面禁煙化に伴ってスタンドだけが残っています。
写真（右／下）は5号車の売店。先述の1号車のサロンはグリーン車の利用者専用となっており、普通車の利用者はこちらの売店を使うことになります。車内販売の基地も兼ねていると思われます。

乗降用ドア

乗降用ドアの様子。ドアは珍しく外吊り式を採用しています。ハイデッカーを売りにしている車両ゆえ、仕方ないのかもしれませんが、ドアからは2段ステップを登る必要がありました。

（参考）リニューアル前の様子

当時、小学5年生だった私が2001年頃に撮影した写真が出てきたのでご紹介。リニューアル前の外観と、普通席の座席の様子です。
リニューアル前はフランス製の座席が搭載されており、オーディオパネルもついているなど、いろいろバブリーな仕様でした。リニューアルに伴ってこの座席は全て交換され、現存しません。

トイレ・洗面台

最後にトイレ、洗面台を一気にご紹介。洗面台はグリーン車、普通車とも共通の仕様です。自動水栓となっており、温水も温度調節が可能でした。

トイレは全て男女共用の洋式となっています。一部は子供用の椅子が後付けで設置されており、ファミリー層への配慮がなされていました。もっとも、トイレ内部は普通のそれと同じなので、たとえ赤ん坊と入ったとしてもかなり狭いのでしょうが…（笑）。

男子小用トイレ（左／上）と10号車の車いす対応トイレ（右／下）。手すりは赤で統一されていました。

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概説

デビュー年：1990年(車両)

「乗ったらそこは伊豆」をコンセプトとして、伊豆方面への特急列車用の車両として1990年にデビュー。

編成は10両編成で、全てハイデッカー構造となっているのが特筆される。窓を天井付近まで回り込ませ、乗客が景色を楽しめるよう配慮された。また、9・10号車には大型テーブルを設けたボックス席を、10号車には子供用のプレイルームを設置してファミリー層に配慮するなど、観光輸送に特化した設計になっているのが特徴。

1990～1992年にかけて10両編成4本が製造され、登場以来、一貫して「スーパービュー踊り子」で運用された。
2002～2004年にかけてリニューアル工事が行われ、座席の交換、塗色の変更、ボックス席の一般席化などが施され、「おはようライナー新宿」「ホームライナー小田原」にも導入されるようになった。また、過去に「デラックスビュー南房総」（新宿～千倉）、「ビュー草津」（上野～万座・鹿沢口）、「ビュー谷川」（上野～水上）など、多数の臨時列車に充当された経歴がある。

直接の後継となる「サフィール踊り子」のデビューにより、2020年3月に「スーパービュー踊り子」は廃止。本系列は同年4～9月にかけて全車が廃車され、全車解体となった。