東京都交通局5500形「浅草線」

東京都交通局5500形「浅草線」

直通先に成田空港と羽田空港を持ち、近年は通勤客はもとより訪日外国人の利用が増えつつあるという都営浅草線。2010年代後半、京成や京急は毎年のように新型車両を導入し、スカイアクセス向けの高速運転に対応したり、訪日外国人向けに車内LCDモニタなどを用いて情報提供したり、様々な新機軸を多数取り入れてきました。

しかし浅草線を運営する都営地下鉄が持つ編成は、旧来からの5300形の独壇場。さすがの都営地下鉄もこのままではマズいと踏んだのか2017年に浅草線用の新車を送り出しました。それがこの5500形です。

写真は西馬込駅を発車していく5500形。正面のデザインは歌舞伎をイメージしたものだそうです。都営地下鉄の車両は昔から“実用重視”、かつ10-300形に見られるような“開発費抑制”など、車内マニア的にもあまり面白みのない車両が多かったのですが(苦笑)、この5500形は内外装ともかなり意欲的な仕上がりになっているように感じます。さっそく車内を見ていきましょう。

モケット

(左)一般席 (中)優先席 (右)床材

撮影日時・場所

撮影日:2018年9月5日
撮影場所:浅草駅 西馬込駅 車内

備考

特にありません。

車内

車内に入ります。車内は白とベージュを基本カラーとしており、パッと見はシンプルですがあまり殺風景さを感じないデザインに仕上がっているように感じます。浅草線のラインカラーである赤色をあしらった背もたれが視覚上のアクセントになっており、全体的にメリハリのある雰囲気です。

本系列の製造はJR東日本グループの総合車両製作所(いわゆるJ-TREC)が担当していますが、そのせいか車内全体の雰囲気にどことなくE233系やE235系の面影を感じる気がします。

座席

座席の様子(左/上)と座面のアップ(右/下)。座席は7人がけで、座面と背もたれが一人一人の着座位置に合わせて成型されたいわゆるバケット構造が採用されています。新造まもないということもあってか、座面は適度にハリがあり、どちらかというと固めの座り心地です。浅草線、行先によってはそこそこ長時間乗車することも想定されるので、これくらい固めの方がかえって疲れにくい気がします。

座面の模様は「亀甲模様」、背もたれは「寄せ小紋」をイメージしたデザインが導入されており、これは「日本らしさ」を強調したものだとか。また、カーテンにも「浅草」の文字が入ったちょうちんや花火など、浅草線沿線に関係するデザインが取り入れられています。隅々まで「日本らしさ」にこだわった作りとなっているところからも、東京都交通局の5500形にかける想いが垣間見える気がします。

座席の手すり(左/上)と両端の仕切り(右/下)の様子。手すりは表面がデコデコした滑り止めつきのものとなっています。優先席では近年よく見られる仕様ですが、一般席区画に導入されているのは珍しいのではないでしょうか。

座席両端の仕切は、車内全体の見通しを良くするため、E235系でも取り入れられたガラス窓つきのものになっています。こちらには、江戸切子をイメージした柄があしらわれています。

優先席 車端部

車端部区画を見ていきます。5500形は車端部の区画が全て優先席となっていますが、これは近年都営地下鉄の車両では全体的にみられる仕様です。
こちらは5人がけとなっており、直通先の京急・京成の仕様に準じています。5人がけながら手すりは座席上に2本、貫通扉と座席の仕切を合わせれば4本設けられており、どの席に座ってもいずれかの手すりが使えるよう配慮されている、ということのようです。

また車端部に関連して、貫通扉脇の化粧板は木目調のようなベージュ色となっていますが、これは竹をイメージした柄とのこと。コンセプトとしては悪くなさそうですが、何の予備知識もなかった私は、撮影中「なんでこんなところに木目調を導入したんだろう?」と本気で思ってしまいました。何らかの“竹”と分かるような工夫があってもいいような気はします。

フリースペース

フリースペースは先頭車は運転台直後、中間車は全車両の西馬込寄りに設けられています。こちらも手すりが多数設けられており、車いすやベビーカー利用者はもとより、混雑時の立ち客の便も図られているようです。

優先席とフリースペースの間には、しゃもじをひっくり返したような謎の仕切板(←これ以外的確な表現が見つからなかった)がありますが、これは車内の立ち客が寄りかかるためのものだそう。窓と干渉せず、かつ仕切の役目も果たす…という二つの条件を両立させるとこのデザインになった、ということなのでしょうか(笑)。

フリースペースは運転台直後の区画にも設けられています。こちらは7人がけのうち、運転台寄りの3人分のスペースを潰してフリースペースとしており、手すりやヒーターなどの各種設備は車端部のそれに準じています。例のしゃもじ型仕切板もしっかりありますねぇ。

その他の車内設備

天井の様子(左/上)と荷物棚の様子(右/下)。照明は全てLEDとなっており、そのためか地下区間を走行中もかなり明るい車内となっています。省エネ性はもちろん、暗い地下を走行する車両ならではの仕様と言えそうです。

また、荷物棚は写真右のような感じで、特段目新しさはありません。E233系やE235系で見られる「棚」タイプではなく、旧来からのパイプ棒式が採用されています。このあたりは各社の考え方の違いなのでしょうか。

つり革

一般席区画のつり革の様子(左/上)と優先席のつり革の様子(右/下)。一般席のつり革は茶色のものが使われていますが、これは何をイメージしたものなのでしょう?(笑)つり革は一定間隔で低めに配置されており、背の低い人でも握りやすいよう配慮されています。

ドア

乗降用ドアの様子(左/上)。ドアの窓形状は、下部分が斜めになる珍しい形状をしています。5500形のトータルイメージが歌舞伎の化粧法である「隈取」ですが、つりあがった眉毛を描くことから、それをイメージしたものと思われます。「隈取」を知らなければ、その意味を理解するのはやや難しそうですが…(笑)。

また、ドア上にはLCDによるモニタ画面が2つ設けられており(右/下)、左側が広告、右側が次駅案内を表示しています。従来の5300形にあったLED案内表示装置は浅草線内でのみ稼働していましたが、5500形では直通先でも各社の体裁に沿ったデザインで表示されます。

車両概説

デビュー年:2018年(営業運転でのデビュー年)

東京都交通局が推進する「浅草線リニューアル・プロジェクト」の一環として、また老朽化した5300形の置換を目的として2017年にデビュー。
外観は「浅草線リニューアル・プロジェクト」が標榜する浅草線のトータルコンセプト「TOKYOと世界を結ぶ地下鉄」に沿って、日本のイメージかつ浅草線沿線ゆかりの歌舞伎の隈取をイメージしたデザインとなっている。また、内装も和紙、江戸切子など、東京かつ歴史のあるイラストを多数採用しており、日本らしいイメージを内外ともに取り入れているのが特徴。

5300形では最高速度が110km/h(一部編成のみ120km/h)であったが、本系列では120km/hに引き上げられており、全車両が成田スカイアクセス線への直通に対応する。

2017年には第一編成が落成し、浅草線へ搬入。各種調整などを経て2018年6月30日より、浅草線の泉岳寺~西馬込間の限定運用に導入された。

その後、浅草線と直通運用のある京急・京成・北総での乗務員訓練などを経て、9月中に成田スカイアクセス線を除く浅草線直通先の全社への乗り入れ運用も開始されている。
今後、2021年度まで27編成が導入され、5300形はこれに伴って姿を消す見込み。

タイトルとURLをコピーしました