空港送迎「ニアミー」に乗ってみた
タクシーと言うと「1人or1グループにつき1台」というのが典型、かつもっとも浸透している利用方法だろう。しかし、世の中には「2人or2グループ以上が1台をシェアする」という利用方法も存在する。そのサービスを提供しているのが、今回取り上げる「>>ニアミー(NearMe)」だ。
同社は2018年に、タクシー相乗りアプリ「nearMe」をリリース。タクシー相乗りとは、(読んで字のごとく)同じ方向に向かう複数の人・グループが1台のタクシーをシェアする利用形態だ。
利用者にとっては、料金はほかの人と分担になるのでタクシー代が安上がり・鉄道やバスの乗換えがなく現地まで直行できるメリットがある。
ニアミーは、この「同じ方向に向かう複数の人・グループ」をいわば“マッチング”するサービスだ。
さて、私は2025年5月にニアミーが提供する「>>ニアミーエアポートシャトル(空港送迎タクシー)」を利用する機会があった。当ページではその時の様子を紹介していく。
なお、当ページは個人的な体験をまとめたものであり、現時点でのサービスとは異なる点があるかもしれないことをご了承いただきたい。
公式アプリから予約
今回、予約はニアミーの公式アプリから行った。
利用区間や人数、時間帯などを選ぶとまず仮予約となり、それから24時間以内に予約が確定。その後、前日までに当日のタクシーの情報や流れなどが記載されたメールが届く、が乗車前までの基本的な流れである。
乗車区間は、羽田空港国内線第1ターミナル~有明ガーデン(東京都江東区:ゆりかもめ有明駅付近)で、走行距離は約13km。今回は取材なので、自分が土地勘のある場所でトライしてみることにした。


24時間以内に予約確定というが、私が予約した時は仮予約~予約確定まで20分もかからなかった。
料金は3,980円。定価は6,480円のところ、シェア割1,500円と初回クーポン1,000円でこの値段になるという。この区間はふつうのタクシーでも7,000円前後かかるため、割引適用後ならばかなり安いと言えよう。
当日は羽田近辺で用事を済ませてから、さっそく乗車場所へ向かった。
のりばは一番奥の「0番」
さて、当日のりばに指定されたのは羽田空港国内線第1ターミナルの「0番ハイヤーのりば」である。南ウイング側の、リムジンバスやタクシー乗り場を通り過ぎた一番はしっこだ。


余談だが、北ウイング側の19番のりばもハイヤー乗り場となっている。ほかの人の利用レポートを見ると、のりばに19番が指定される場合もあるようだ。
当日は11:50頃に到着したがそれらしきタクシーはまだ来ていなかったので、適当に時間をつぶしながら待つ。このエリアは人の姿もまばらで、いつもごった返している羽田空港とは思えないほど閑散としている。
乗車
ロータリーに滑り込んでくるリムジンバスや、白ナンバーの高級ワゴン車がタクシー乗り場で中国人観光客を降ろしているのを横目に待つことしばし、12:05頃になって白いハイエースが0番のりばに滑り込んできた。


ハイエースは白一色で、外観には社名表示は見当たらなかったが、都内の緑ナンバーをつけた事業用車両だった。ナンバーの番号は事前にメールで送られてくるため、見つけるのに手間取ることはない。
しかし、真っ白なハイエースでタクシーとはなかなか珍しい。果たしてどんな会社なのか?と思いつつハイエースに近づいた。
若い運転手が降りてきたので声をかけたところ、「ア、抜け蔵サンネ、ハイ、ハイ」とドアをごろごろと手動で開けてくれる。イントネーションから外国人のようだが、やり取りには差し支えない。
運転手の身なりは、黒スラックスに白ワイシャツ。無難にこぎれいではあるが、名札はつけていなかったので、社名はやはり分からなかった。
乗りこむときに「荷物、ナイネ」と確認され、車内へ。好きなところに座っていいと言われたので、とりあえず運転席の直後に陣取る。
客の定員は9名で、車内はちょっとしたバスのような雰囲気だ。ちょうど、旅館の送迎車のようなアレを想像していただいて差し支えない。


私が乗ったのを確認して運転手はドアを閉め、運転席のスマホで経路を確認していた。かと思えば、いつの間にスマホの画面はチャット形式のアプリに変わっており、(断定はできないが)wechatと思われる。
送りあっている画像は外から見る限りカジュアルな印象だが、これが業務連絡なのか私には知るよしもない。そもそも、停車中の利用は違法ではないので気にしないことにした。
ほかのお客さんはいますかと聞いてみたが、こちらを見ずに「ヒトリ」と言われただけ。これをきっかけに軽くニアミーの話でも聞ければ…と思っていたが、運転手はチャットに集中しているようだ。話しかけるタイミングは、どうも測りにくい。
思いきって「おたくは何て会社ですか」とでも聞いてみたかったが、いまのやり取りのこともあったのでやめておいた(後日調べたところでは、予約番号を添えてニアミーに問い合わせれば分かるらしい。もっとも、聞いたところで私の興味本位でしかなく、実際の問い合わせは控えている)。
そもそもニアミーはあくまでタクシー会社と利用者を“仲介”するだけなので、直接的な運行管理は行っていないのだ。とりあえず今は、このタクシーを楽しんだほうがいいだろう。タクシーの会社名については、深追いしないことにした。
出発
12:10頃になって、キャリーケースを引いた女性が乗り込んできた。女性は物腰の柔らかそうな方で、運転手に加えて私にも「こんにちは、よろしくお願いします」と挨拶してくださった。こちらも丁重にお返しする。
先述の通り、運転手氏によれば私以外の利用者は「ヒトリ」とのこと。これで乗客は確定だ。
運転手は女性のキャリーケースをうしろに詰めたあと、ニアミーのドライバーアプリで女性の行先をチェックしたと思われ(さすがにそこは見ないようにした)、続いてGoogle Mapのナビに「有明花园(有明ガーデン)」を設定した。どうやら、私が先に降りることになるらしい。
12:14、運転手の「ジャ、発車シマス」の声かけで出発。リムジンバスに混ざって羽田空港のターミナルを抜けたあと、12:17に空港中央ICから首都高速湾岸線に入った。


私を乗せたハイエースは、湾岸道に流入するなりさっそうと追越車線へ。車線変更やカーブでのハンドル操作こそやや急なことはあったものの、全体的には安定感のある走りと評せそうだ。速度は100km/hを超えることはなかったし、後ろからライトバンが弾丸のように接近してきたときは、素直に進路をゆずっていた。
12:24に臨海副都心ICを流出、有明橋西・交差点を左折~海浜公園入口を右折と、きわめてオーソドックスな経路で有明ガーデンを目指す。まぁ運転手はGoogle Mapのナビに従って走っているようだったので、当然といえば当然か。
ところで、お台場~有明の一般道は、ひとたび信号でとまるとやたら待たされることがある。私のときも止められたが、運転手はクルマを停車させるとスマホのナビ画面を閉じ、また何やら操作しているように見えた。
同乗している女性はというと、私のすぐ後に座っているので見えないはずがないのだが、特に気にしていないらしい。まぁ業務連絡のメッセージが入ったのかもしれないし、繰り返すが信号待ち時のスマホ使用は(直接的には)法令違反ではないのだ。
受け止め方は人それぞれだし、今回はそのような場面があったという一体験として記しておく。
そして12:33、羽田空港から19分で有明ガーデンに到着。私をおろしたハイエースはしばらく停車したのち、次の目的地へと走り去っていった。

で、実際どうだったのか
① コンセプトそのものは悪くない
というわけで初めてのニアミーだったが、コンセプトは決して悪くないというのが率直な感想である。今回はたまたま自分以外の利用者が一人だったという前提にはなるが、
・バス停でとまらないのでリムジンバスよりも速く
・鉄道よりもゆったりと移動でき
・タクシーよりも安い
というのは、ニアミーならではの強みと言えそうだ。
今回は取材が目的なので「有明ガーデン」を下車地にしたが、ニアミーでは(空港行きなら)乗車地・(空港発なら)下車地が自由に設定できる。
家まで来てもらうといった乗り方も可能で、(軽くSNSで調べた限り)多くの利用者は自分の家~空港といった乗り方をしているようだ。
言うなればタクシーより安い値段でタクシー並みの移動ができるわけで、おトク感は大きい。ニアミーのコンセプトは、今後の発展が非常に期待できそうだ。
② マイルがたまる
タクシーという本筋からはズレるが、ニアミーの利用料金に応じて航空会社のマイルがたまるのも大きい(条件あり)。
私は何も考えずに普段使いのANAのマイル(200円/1マイル)につけてしまったが、JALだと100円/1マイルだという。私のニアミー料金は3,980円なのでANAだと19マイルのところ、JALなら39マイルだ。
これは私の完全な手落ちである。20マイルは「高い勉強代」として諦めることにした。
※ANAの「>>旅CUBE」経由で予約すると、ANAでもニアミーの利用料金100円あたり1マイルを獲得できる。これも恥ずかしながら利用後に知った。
それにしても
…と、とりあえずニアミーの良いところをなるべく書いてはみたが、個人的に気になった点は以下の通り。
① シェア割は「運」の要素が大きい
シェア割とは、「希望日時やルート等の条件から、他の同乗者がいる確率が高い場合(nearme公式より)」に適用される割引だ。
私が乗車したときのシェア割は1,500円だったが、時間帯によって1,700〜2,700円、まれに4,000円近いシェア割が適用されている予約枠もあった。


これなら一人でも十分オトクだし、複数人での利用なら一人あたりの料金はリムジンバスと大差ない価格にもなりうる。大幅値引きのシェア割を引き当てられたのなら、ニアミーを選ぶ価値は十分ありそうだ。
この「シェア割」の基準はいまいち不明だが、あえて傾向を見出すならば東京駅や六本木などメジャーな行先(とその近辺)で割引率が高めになることが多いように見えた。
無論、これは利用する時間帯・そのときの予約状況にも大きく左右される。利用の際は、ニアミー以外のタクシーアプリも見ながら比較検討するのがいいかもしれない。
② タクシー会社は分かるようにしてほしい
乗車前に届くメール・アプリの画面には、当日乗るタクシーのナンバーが記載されている。
加えてメール・アプリには(恐らくタクシー会社の)代表番号のほか、運転手とじかに連絡できる当日の緊急連絡先も併記されている。乗車時になにかあっても、すぐ連絡先がわかるのは利用者としては心強く、安心だ。
ただ私の乗車時にとどいたメールは、代表番号の表記が「-」となっていた。“恐らくタクシー会社の”と記載したのはこういう理由からだが、これでは車内に忘れ物したなどといった(本当に必要な)問い合わせもしにくい。


アプリの「乗車履歴」を見ると、当日の緊急連絡先はいまでも表示されていた。乗車後に何かあれば、ということなのだろうが、いきなりスマホに電話してこられても運転手は困るだけだろう。それに、走行中で取れないこともありえる。
まだ社名が分かれば自力で電話番号を探して…といったこともできなくはない。幸いにも私は忘れ物などはなかったものの、実際の運行を担うタクシー会社の社名が分かりやすいと、より安心して利用できそうと感じた。
③ タクシーの水準の均一化
ニアミーの運行には国内の名だたる大手法人タクシーも参画している。
そういったタクシーに今回当たっていたら、このページの内容はもしかしたら多少異なっていたかもしれない。先述のシェア割を運よく引き当てて、サービス水準の高い(傾向にある)大手タクシーに乗れるなら本当におトクだからだ。それくらい、ニアミーのコンセプトは悪くないと感じている。
サービス内容にばらつきが生じる可能性がある点は、(ニアミーで配車された)どのクルマでも一定の品質が保たれるように改善されると、より安心に感じる利用者もいるかもしれない。
あるいは、予約時に「大手タクシー会社のみ」「どの会社でも可」などと利用者に選ばせるのも一つの手だろう。安心を取りたい利用者は前者を、行ければ何でもいいという私のような人は後者を選べばよく、どちらも一定の需要はありそうだからだ。
おわりに
近年、日本でも徐々に導入が進んできた「ライドシェア」。今回は、その一形態である“相乗り”を提供するニアミーを体験してみた。
同じ方向に向かう複数の利用者・グループを仲介するというニアミーのサービスは、電車やバスではカバーしきれない移動需要を捉えるものであり、実乗して改めて興味が深まった。
今後も機会があれば、ニアミーのサービスを実際に利用しながら、その現状や変化を見守っていきたい。
なお、本記事は2025年5月に私が実際に乗車した「ニアミーエアポートシャトル」での体験に基づいたものであり、ニアミーで配車されるタクシー全てがそうというわけでは断じてない。現在とは状況が異なっている可能性もあり、あくまで「一つの体験談」程度に読んでいただければ幸いである。