キハ40形1700番台「JR北海道」


JR北海道のローカル輸送を長年支えてきたのが、このキハ40形です。
JR北海道の非電化路線の普通列車といえばこれと言っても過言ではなく、2010年代に入っても稚内・根室から函館まで全道で見られました。もっとも、2020年代に入ると後継のH100系への置換が進み、徐々に引退が進行。2025年3月改正をもって、室蘭本線・日高本線を除く各線から撤退しています。
写真は函館駅で発車待ちのカット。当ページでは、JR北海道で最後まで残ったキハ40形1700番台の車内を見ていきます。
モケット


(左)座席 (右)カーテン
普通車 車内

車内の様子。
キハ40形1700番台は元々極寒地向けに改造されたキハ40形100番台が出自なので、車内はキハ40形ながらデッキ付きなのが特徴です。車内は優先席付近をのぞいてデビュー当時から大差ないと思われ、いわゆる「国鉄型」の内装を現代まで色濃く残していました。


またしても車内ですが、よく見るとこちらはクロスシートが2+1配置になっています(左/上)。
この2+1配置は通勤輸送への対応を目的としたもので、1991~1992年頃に17両が改造されたとのこと。現在も函館に7両が残っており、上の2+2と共通に運用されています(→「備考」も参照)。
【備考:キハ40形1700番台の2+1座席事情】
2025年3月時点で、キハ40 1803~1805・1813・1816・1818・1821の7両が2+1のクロスシートを搭載しています。
最末期は函館に全車が集結していましたが、かつては苗穂・釧路などにも配置がありJR北海道の各線で見ることができました。
※このほか、道南いさりび鉄道に譲渡されたキハ40 1807・1810・1812・1814・1815も2+1配置
クロスシート


ではクロスシートを見ていきます。2人がけ(左/上)と1人がけ(右/下)。
座席のフレーム・モケット・ひじ掛けは、最後まで擦れや剥げの類もなく非常にきれいに保たれていました。


座席をそれぞれ正面から見た様子。
1人がけは、2人がけを半分にカットしたような形状です。
車端部 片面クロスシート


クロスシートとロングシートの境目には、スペースの関係からか片面クロスシートとなっている区画が存在します。2+2配置(左/上)と、2+1配置(右/下)のそれぞれ全景。
座席まわりを除いた仕様は大差ありませんが、2+1配置の方がやや車内が広く見える気がします。


で、2人がけ席(左/上)と1人がけ席(右/下)のそれぞれアップ。
窓上の座席番号プレートには、1人がけ席には存在しない「6B 通路側」が(苦笑)。2+2→2+1の改造前からそのまま使っているものと思われます。ちょっとした‟見どころ”として紹介してみました。
ドア脇 ロングシート


変わって車端部のロングシートを見ていきます。比較用に、トイレあり(左/上)とトイレなしの区画(右/下)。
トイレのドアはデッキ側にあり、客室内から出入りすることはできません。これ自体はキハ40形共通の仕様ですが、客室とデッキ間に仕切りがある1700番台(←700番台←100番台)では、トイレの洗浄液のにおいが漂ってきにくいという副次的な効果も生んでいます。


ロングシートの全景(左/上)と座席のアップ(右/下)。
写真では6人がけ程度(3人がけ×2)に見えますが、窓上の座席番号プレートには「18A~18D」「20A・20B」の表記が。とはいっても、ここを7人で利用するのは現実的に難しそうです。先述の「存在しない1人がけ通路側の座席番号」も含め、座席番号は現実の配置と一致していないようでした(→「備考」も参照)。
【備考:キハ40形の座席番号事情】
このように‟ちぐはぐ”な座席番号ですが、キハ40形1700番台が座席指定列車に使用されること自体まれなためか、今日まであまり問題になっていないようです。
近年では花咲線(釧路~根室)で、キハ40形を使用した指定席つき列車が運行されましたが、その際も発売はボックス席のみ。ロングシート部分は自由席扱いとなっていました。
(さらに備考)
2025年現在も釧路に残るキハ40形は、全車が2+2のボックス席なのでこちらも問題にならなかったようです。
優先席


変わって優先席つきの区画を2種類。トイレなし区画(左/上)と、トイレあり区画(右/下)です。
優先席のつり革は、近年流行の黄色タイプではなくノーマルな白い丸型です。
車内設備


網棚(左/上)とつり革のアップ(右/下)。
2+1配置の車両は、1人がけクロスシート側にもつり革が。通勤輸送への対応で改造された車両らしい仕様と言えそうです。


窓間のコートかけ(左/上)と、扇風機スイッチのアップ(右/下)。
函館に最後まで残っていたキハ40形1700番台は、いずれも扇風機の代わりに送風ファンが設置されていましたが、スイッチの表記だけは「扇風機」のまま残っていました(→「備考」も参照)。
【備考:送風ファンの正式名称は?】
この送風ファンは、キハ40形1700番台への改造時に扇風機の代替として設置されたもの。一部の車両(釧路所属車)に、この「扇風機」表記の上からテプラで「クールファン」と貼った車両があり、どうやらこれが正式名称と思われます。
もっとも、中でシロッコファン(エアコンの送風口とかで見かける円筒形のアレ)が回るだけなので、現実問題そこまで‟クール”ファンではありませんでした。


通路の様子。2+2配置(左/上)と、2+1配置(右/下)です。
床面の色味が異なって見えますが、これは単なる個体差でしょうか。写真の都合ではなく、実際に2+1配置車の方が明るい床面でした。


窓枠のアップ(左/上)と、非常通報機ボタンなど(右/下)。
窓枠部分は一見テーブルのような形状ですが、冬季に使用する二重窓のスペースを確保するための仕様で、言うなれば「ただの大きい窓枠」です。
デッキ


デッキ部分の全景(左/上)と、整理券発行機などのワンマン機器(右/下)。
トイレ


デッキから客室側を見た様子(左/上)と、トイレ内部のアップ(右/下)。
トイレの扉は内開き式となっており、キハ40形では共通の仕様です。トイレ内部は昔ながらの「ザ・列車便所」ですが、丁寧に清掃・メンテされているためか非常に清潔でした。
概説
デビュー年:1977年(車両)
1950年代に製造されたキハ10系を初めとする通勤用気動車の後継として1977年にデビュー。1982年までに888両が製造され、日本全国の非電化区間で主に普通列車として用いられた。
1700番台は、キハ40形700番台(ワンマン化改造済)に機関換装などの延命工事を施行したもの。2003年から2013年まで84両に施行された。
JR北海道の各線で運用されていたが、2025年3月改正以降は室蘭本線(苫小牧~岩見沢)と日高本線(苫小牧~鵡川)を除いて撤退するなど、数を減らしつつある。