115系1000番台「岡山地区」(30N施工車)

115系1000番台「岡山地区」(30N施工車)

2010年代に入っても各地で見られたJR西日本の115系ですが、2024年現在の配置は岡山・下関のみとなっています。今回取り上げるのは、岡山地区を中心に活躍している115系1000番台(30N施工車)です。

写真は夜の岡山駅・備前片上駅にて発車待ちの115系1000番台。一部の先頭車両は、中間車から改造された(右)タイプとなっており、編成の前後で‟顔”が異なっていました。

車両番号のアップ(左)と、車体側面の様子(右/下)。

JR西日本のローカル線では、2012年頃からエリアごとの単色塗装への変更が進められており、115系も対象となりました。岡山地区を含めた中国地域は「黄色」で、山陽本線では姫路から三原まで、また伯備線や赤穂線、宇野線など非常に広範囲で見られます(→「余談」も参照)

【余談:黄色い115系、もっと西でも見られます】

ちなみに、山口・広島エリアで活躍する115系にもこの黄色い塗装が施されており、もっとも西では下関まで顔を出しています。

モケット

(左)座席 (中)カーテン (右)床材

撮影日時・場所

撮影日時:2024年5月上旬

場所:山陽本線 岡山駅ほか

備考

特にありません。

普通車 車内

では車内に入ります。

岡山地区に所属している115系の多くは、2000年代に40N体質改善工事または30N体質改善工事(→「備考」も参照)が施行されており、車内はご覧のように223系に近い内装になっているのが特徴です。

なお、当ページで紹介する写真は全て「30N体質改善工事」施行車で撮影しています。

【備考:30N体質改善工事って?】

1990~2000年代のJR西日本は、自社が保有する「今後しばらく使う予定の国鉄型車両」にさまざまなリニューアル工事を施していました。

改造内容は時期・内容によって非常に細分化されていますが、当ページで取り上げられる115系1000番台には「30N体質改善工事(通称30N)が施されています。これは「新造から30年使う」想定で、主に車内設備を現代の水準に合わせた工事。2002年以降、115系を含めた多くの国鉄型車両に施されました。

(さらに補足)
ちなみにそれ以前は、よく似た名前の「40N体質改善工事」(通称40N)が施行されていました。これは「新造から40年使う」ことを想定し、内装はもとより外装も抜本的に近代化したもの。劣化部品を総交換するなど、相当に手間のかかった工事でした。

ただ費用も高くついたこと、JR西日本も新車を導入する資金的余裕が出始めたことなどの理由で、2002年以降はいわば「40Nよりコストを抑えた簡易版」とも言える30Nに移行しています。
また、(これは流説の域を出ませんが)40Nから30Nへの移行にあたっては「2000年代に入った今、今さら大金をかけて40N工事をしてもどれだけ使うのか」というのも無視できない要因としてあったそうです。

比較用に、先頭車で撮影した様子(左/上)と天井部分のアップ(右/下)。

荷物棚までは全面的に交換されていますが、一天井まわりは化粧板の張り替え程度にとどまっています。照明・空調の吹出口も含めて総交換された40N工事施行車と比べ、ここは(40Nの簡易版たる)30Nならではの仕様と言えそうです。

普通車 座席

座席(左/上)と、ボックス状態の様子(右/下)。

223系2000番台のそれと同じ座席が、これまた同じ910mmで展開しています。窓割は115系そのままなので、座席と窓の配置は必ずしも一致していません。

座席を正面から見た様子(左/上)と、座席下のアップ(右/下)。

座席転換時に窓枠との干渉を避けるためか、窓際の座席と壁の間にスペーサーが入っているのが特徴です。

普通車 車端部

車端部の全景(左/上)と、3人がけ席(右/下)。

妻面(壁側)も転換クロスシートが設置されていますが、これは直後にキセカバー(機器箱)があるためでしょうか。私が取材した際はロックがかかっており転換できませんでした…が、転換しても現実的に座れないので正しい処置だと思います(苦笑)。

優先席 車端部

優先席区画の全景(左/上)と座席の様子(右/下)。

下り方(※山陽本線基準)の車端部は、見ての通り優先席区画となっています。枕カバーが異なるだけで、座席としての使用は共通です。

優先席

で、こちらが優先席区画のまた別の例。

下り方(※山陽本線基準)の先頭車は、車端部がトイレ・フリースペースとなっている関係で優先席はドア間に設置されています。

フリースペースつき車端部

続いて、(上で半ばフライング的に紹介してしまった)先頭車の車端部を見ていきます。全景(左/上)とフリースペースのアップ(右/下)。

この区画は、編成内で唯一ロングシートが設置されているのが特徴です。もともとトイレ脇の座席は3人掛けなので、30N体質改善工事施行時に2人がけに改造されたものと思われます。

で、ロングシートのアップ(左/上)と、座席下の様子(右/下)。

座席は仕切り板の増設・モケットの換装・手すり~荷物棚部分の交換が行われており、改造前から同じなのは座り心地だけと言っても過言ではありません(苦笑)。他方、座席下のカバーは改造前からそのままで、「工事前」の面影を残す数少ない存在と言えそうです。

運転台後ろの比較

続いて運転台直後を見ていきます。原型の先頭車(左/上)と、中間車から改造された先頭車(右/下)の様子。

かつて(左/上)タイプの運転台直後に設置されていた、2人がけ又は3人がけロングシートは撤去されていました(→「参考」も参照)

また、先頭車化改造された運転台はよ~く見ると完全に仕切られておらず、天井部分が筒抜けの構造になっています。改造車らしいポイントと言えるでしょう。

【参考:運転台直後のロングシートが撤去された理由諸説】

これは私が色々調べてみた限りで、確たる情報源による理由は掴めませんでしたが、各ファンサイトやSNS上などで提唱されている「説」「推測」として、

① 混雑緩和のため
② 将来的なワンマン化改造(運賃箱設置など)を見据えたもの
③ 単なるコストカット
(③-α 30N体質改善工事時に3人がけから2人がけに変更されたフリースペース脇のロングシートに鑑みると、2人がけのこの区画は1人がけとせねばならず、それなら最初から設置しない方がコスパが良かった)
④ 運転台助手席側に機器箱が設置されたため

大方の見立てのようです。参考として記載します。

その他の車内設備

荷物棚(左/上)と、座席番号の表記(右/下)。

30N体質改善工事に伴い、荷物棚は(例によって)223系以降の車両と同じモノに交換されています。

窓・つり革の様子(左/上)と、車内放送のスピーカー(左/上)。

つり革はドア間に渡って設置されており、座席肩部の手すりも合わせて「つかまる場所」にはえらく恵まれた車内となっています(笑)。また、車内が抜本的に改装されていながら車内放送のスピーカーは昔からのまま。このアンバランスが面白いところと言えそうです。

半自動ボタン(左/上)と、SOSボタン(右/下)。

ドアボタンは223系の仕様に近いものですが、一方で緊急通報ボタンは製造当時からのモノが今でも現役でした。

ドア

乗降用ドア(左/上)と、ドア開閉ボタンのアップ(右/下)。

車外のドアボタンはLEDライトが採用されており、特に夜間は写真のようにものすごく明るいボタンになります(苦笑)。

トイレ

トイレの全景(左/上)と、内部の設備類など(右/下)。

手すりが3つに増設されているほか、トイレットペーパーホルダーが予備ロールも入るモノに交換されています。内部の化粧板が30N体質改善工事時にブラウンに塗り直されたものの、おおむねデビュー時からの雰囲気をよく残しているように感じます。

おまけ

おまけとして、岡山駅と備前片上駅で撮影した115系の様子。

岡山地区の115系もすでに置換方針が発表されており、今後の行く末は決して安泰ではないようです。取材・乗車はお早めに。

概説

デビュー年:1964年(車両)

岡山地区における115系の歴史は古く、1976年から配置が始まっている。かつては荷物電車クモニ143形と115系の連結運転も行われていた。

塗色は湘南色、その後はJR西日本の自社塗色に変わったが2009年以降、黄色の単色塗装となっている。2024年以降、227系の導入により順次置き換えられる見通し。

現在、岡山地区の115系は300・1000番台が主な陣容となっており、山陽本線(姫路~三原)、伯備線、山陰本線、福塩線、赤穂線、宇野線などで運用されている。以前は広島や四国まで乗り入れる運用も存在した。

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