目次
E3系1000番台「つばさ」(L53~55編成)グリーン車 編
E3系0番台「こまち」を、山形新幹線用にアレンジして登場したのがこのE3系1000番台です。12編成あるE3系2000番台に対し、1000番台は実に3編成のみ(→「備考」も参照)とちょっとした「異端児」でした。
2024年3月改正以後は、デビューしたE8系と入れ替わる形で運用から完全に離脱。同年8月末までに全編成が解体線入りし、事実上の「サイレント引退」となりました。
さて、写真は赤湯駅に入線してくるE3系1000番台。E3系1000番台には大きく分けて、「1999年増備組(L51・L52編成)」と「2005年以降増備組(L53・L54・L55編成)」の2グループが存在しますが、当ページではこのうち「2005年以降増備組(L53・L54・L55編成)」を扱います。
【備考:同じ1000番台?ぜんぜん違う1000番台?】
この表記は、2015年から2024年まで続いた「E3系2000番台12編成 + E3系1000番台3編成」の状況を指します。そもそもE3系1000番台は、
・山形~新庄の延伸開業時に増備された2編成(L51・L52編成)
・2005年に輸送力強化のために増備された1編成(L53編成)
・2014~2015年にL51・L52編成の置換用として「こまち」から転用された2編成(L54・L55編成)
の3グループが存在しました。編成によって増備時期・経緯・出身が全く異なり、そこがこの番台の面白いところと言えます。また、同じE3系1000番台ながら全5編成が同時に在籍したことはありません。
当ページでは、内装がほぼ共通なL53・L54・L55の3編成をひと括りにして紹介します。
モケット
(左)座席 (中)カーテン (右)床
撮影日時・場所
撮影日時:2024年3月、一部2022年9月
場所:山形新幹線「つばさ」141・160号 車内
備考
・「つばさ」用のE3系1000番台のうち、当サイトではL53~55編成の車内を取り扱います。
・>>E3系2000番台「つばさ」の項も併せてご覧ください。
11号車 グリーン車
車内に入ります。
グリーン車のある11号車は、運転台・トイレ・洗面台などいろいろなものを搭載している関係で、車内は合計6列23名(1人掛けの車いす対応席含む)のコンパクトな空間です。
しかし、2+1配置だった400系のグリーン車からの‟退化”はどうしても否めません。400系がまだ「つばさ」の主役を張っていた頃は、ネット上で「ハズレグリーン車」的な扱いを受けていたように記憶しています(→「備考」も参照)。
車内を反対から見た様子(左/上)と、天井のアップ(右/下)。
車内は座席・カーペット・化粧板に至るまでブラック系で統一されているため、写真のような夜間帯は薄暗い車内になります。
グリーン車 座席
グリーン車の一般席区画(左/上)と車端部区画(右/下)。
柔らかめの座面に対し、背もたれはやや固めの設えになっており、着座したときの安定感は悪くありません。シートピッチは1,160mm、付帯設備はインアームテーブル・背面テーブル・フットレスト・読書灯・ピローとなっており、座った時の居住性も含め「新幹線のグリーン車」水準の設備(当時)は一通り持っていると言えそうです。
一方で、アームレストは見ての通りなんとも頼りない細さです。限られた車体幅ゆえ仕方ないのかもしれませんが、腕を置いたときの感覚は「普通車」のそれに近いというのが率直な感想でした。
11号車 グリーン車 車いす対応区画(6D)
新庄寄りの6D席は車いすでの利用に対応した区画となっており、最寄りの乗降用ドア(左/上)・デッキと客室の仕切扉(右/下)は通常よりもやや広めに取られています。
車いす対応席の全景(左/上)と、全展開状態(右/下)。
基本的な設備は同一ですが、車いすでの利用に備えて固定用ベルトなどが設けられているのが特徴です。なお、余談ですがかつての400系では、車いす対応席が7A席にありました(→「備考」も参照)。
【備考:400系とE3系が共通運用されていた頃の「つばさ」グリーン車事情】
※ 1人掛けの車いす対応席含む
かつて「つばさ」で使用された400系のグリーン車は「2+1配置が7列の合計20席(※)」なのに対し、E3系1000・2000番台は「2+2配置が6列の合計23席(※)」と定員が異なっていました。
この2系列は共通に運用されていたため、当時は「最初は400系・E3系どちらにもある席のみ発売」「残りの席は、車種が確定したタイミング(おおむね前日)で改めて発売」という取り扱いが行われていたそうです。
400系・E3系1000・2000番台の座席配置を比較すると、以下のようになります。
ちなみにE8系のグリーン車では「2+2配置が7列の合計26席(※)」と、400系ぶりに7列に戻りました。もっとも、2024年現在でE8系とE3系2000番台の運用は完全に分かれているため、上記のような取り扱いは特段行われていないものと思われます。
グリーン車 座席周り
…長々語り過ぎました。すみません。続いて、座席を正面から見た様子(左/上)と、ピロー部分のアップ(右/下)です。
正面から見ると、座面のクッションがセンターアームレスト方向に「斜めにカット」されたような形状になっているのが分かります。座席回転時のスペースを確保するためでしょうか。この座席も開発にあたっていろいろ苦労したのだろうな…というのが垣間見えるポイントです。
座席肩部の手すり(左/上)と、フットレストのアップ(右/下)。
座席肩部の手すりはE3系の後期増備車(2005年以降)から追加されたもの。色こそ異なりますが、>>E2系1000番台で採用された手すりと同一品と思われます。
その他の車内設備
通路(左/上)と、窓間のコートかけの様子(右/下)。
在来線サイズでただでさえ狭い車内に、普通車より大型のグリーン席を配置しているため、正直なところ通路幅はかなり狭いです。特に車内販売のワゴン脇をすり抜けるのは不可能に近く、(実体験として)乗車中に急にトイレに行きたくなった場合はワゴンが出るまで待つしかありません(苦笑)。
読書灯(左/上)と荷物棚のアップ(右/下)。
荷物棚は、ガラス部分が広めに取られた開放感のあるデザインです。
運転台方向を見た様子(左/上)と、扉上のLED案内表示(右/下)。
かつてはよく見かけた3色LED案内表示(緑・オレンジ・赤)ですが、気づけばJR東日本の新幹線からは絶滅危惧種になっています(→「備考」も参照)。
【備考:JR東日本の新幹線における3色LED案内表示事情】
2024年3月改正以降、JR東日本の新幹線は基本的に全車がフルカラーLEDの案内表示装置を装備していますが、>>E2系1000番台のJ66編成には唯一3色LEDタイプのそれが残っています。
基本的に回送扱いの「つばさ」滑走防止車両でのみ運用されていますが、きわめてまれに営業列車に入った事例があるため、本項では(「絶滅」ではなく)「絶滅危惧種」として記載しました。
(さらに補足)
東京~福島間では基本的に「やまびこ」と併結する「つばさ」ですが、早朝深夜には全区間単独で走行する「つばさ」があります。2022年冬、この単独運転時にブレーキが十分に効かないまま滑走~郡山駅でオーバーランした一件を受けてE3系のブレーキ改修が決定。全編成が完了するまでの間、滑走防止のために単独運転の「つばさ」に回送のE2系1000番台を「ブレーキ補助&重り要員」として連結する措置が取られていました。
しかし改修が終了した矢先の2024年3月6日、単独運転の「つばさ」121号が郡山駅で500m大過走するトラブルが発生します。原因究明まで再びE2系1000番台の連結でしのごうにも、すでに引退が進んだ同車には予備車がほぼありません。そこで、廃車前提で新潟に回送されていたJ66編成が急遽呼び戻され、滑走防止の専用編成として“復帰”しました。
ちなみにこのJ66編成は2024年ゴールデンウィークに営業列車に充当され、まさかの‟完全復活”を果たしています。このような経緯から、3色LEDの案内表示はいまだ完全な”絶滅”には至っていません。
デッキ
…本項、(いつものことながら)‟話の脱線”が多くてすみません。続いてデッキを見ていきます。
デッキはグレーとブラックが基調となっており、JR東日本の新幹線ではE1~E4系にかけて‟トレンド”だった内装になります。よく言えばシック、悪く言えば殺風景なのは否めませんが…(苦笑)。
乗降用ドア(左/上)と、デッキ部分の手すりのアップ(右/下)。
「こまち」時代、デッキのゴミ箱は圧縮機構付きのリサイクルダストボックスとなっていましたが、「つばさ」用への改造時に一般的なゴミ箱に交換されています。元リサイクルダストボックスだった部分は荷物置き場に転用されていますが、予備知識がなければ分からないほど‟自然”に改造されていました。
で、その荷物置き場のアップ(左/上)と、トイレ・洗面台などサニタリーコーナー部の通路(右/下)。
天井照明は少ないため、特に夜間の走行時は写真で見る以上に薄暗い空間でした。
おまけ
おまけ。E3系1000番台を取材した際に撮影した、新庄駅と東京駅でのカットです。
このページは3ページ構成です。次は>>普通車 編 です。
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概説
デビュー年:1999年(E3系1000番台のデビュー)
E3系1000番台は山形新幹線「つばさ」用の車両。1999年の新庄延伸に伴って増備されたL51・52編成、2005年の輸送力向上に伴って増備されたL53編成、2014年に「こまち」用編成からの転用で登場したL54・55編成の3グループがある。
「こまち」用のE3系0番台をベースに7両編成で登場したL51・52編成が2014年に老朽化のため廃車されたのに伴い、余剰となっていた「こまち」用編成を転用したのがL54・55編成。なお、L53~55は製造時期が(L55編成の14・15号車を除き)同じ2005年であり、基本的な仕様は共通である。
E3系2000番台と共通運用が組まれ、「つばさ」「なすの」で活躍。2024年3月のダイヤ改正以降は定期運用から離脱(JR東日本が運営するネットショップ「>>JRE MALL」上の記載による)した。L53・L55編成は改正後ほどなくして解体線に入り、L54編成は改正後もしばらく残存したが運用に入ることはなく、同年8月暮れから解体が開始された。
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