205系1100番台「鶴見線」

205系1100番台「鶴見線」

鶴見線で使用されていた103系の後継として、2004年から導入されたのがこの205系1100番台です。

埼京線や山手線で余剰となっていた205系の中間車を先頭車化改造し、2004~2005年にかけて9編成を投入。以後、数多くの工場を沿線に抱える鶴見線の輸送を担い続けてきました。

この205系1100番台、鶴見寄りの1・2号車は元山手線、扇町・海芝浦・大川寄りの3号車は元埼京線と、号車により出自・製造時期が異なるのが特徴です。それゆえ車内も1・2号車と3号車で細かい違いがあり、内装を通じて205系の歴史が垣間見えるという意味でマニア的にも面白い車両でした。

そんな205系1100番台ですが、車両の老朽化に加えて近年JR東日本が急激に推進しているワンマン化の流れを受け、すでに2023年12月以降の置換が決定。というわけで、このページでは同年11月上旬に取材に行った時の写真をご紹介します。

モケット

(左)座席 (右)カーテン

撮影日時・場所

撮影日時:2023年11月上旬

場所:鶴見線 鶴見駅ほか

備考

特にありません。

普通車 車内

車内の様子。

座席モケットの換装などが行われていますが、それ以外はクリーム色の内装色、薄茶色の床材など、205系デビュー当時からの雰囲気をよく残しています。

天井の様子(左/上)とラインデリア部分のアップ(右/下)。

ラインデリアの吹出口はFRPなのでしょうか、経年からかやや黄ばんで見えました。

普通車 座席

座席の全景(左/上)と座面のアップ(右/下)。

デビュー当時はこげ茶色と薄橙色のモケットだったのですが、2000年代にJR東日本所属の205系は大半が写真の緑系のモケットに換装されています(→「備考」も参照)

座面表面はきれいに維持されていますが、実際に掛けてみた印象は「座ると座面がバフッと沈み込む“国鉄型通勤電車の座り心地”」そのものです。座席内部のスプリングの限界が近いのを感じずにはいられませんでした。

【備考:205系1100番台の座席事情】

鶴見線ではT14編成が最後まで原型のモケットを残していましたが、2010年代中盤に換装されて現存しません。

普通車 車端部

車端部3人掛け席の様子。(左/上)が全景、(右/下)が座席のアップです。

座席とは何も関係ありませんが、私の取材時は車両の貫通扉(=車両間を行き来する扉)全て開放状態で固定されていました。車掌の方の車内監視、回送前の車内点検の便を考慮すると、この方が理に適っているのかもしれません。

優先席

優先席区画の様子。全景(左/上)と座席のアップ(右/下)です。

座席モケットがJR東日本の優先席標準になっているほか、2010年代後半につり革が黄色いものに交換されています。交換されたつり革はE233系以降の車両に準じた大型のものとなっているのが特徴です。

座面のアップ(左/上)と、黄色いつり革のアップ(右/下)。

座席前のつり革はE233系以降の大型タイプなのに対し、通路上のそれはE231系以前の小型タイプです。どういった理由で、この2タイプが使い分けられているのかは気になるところです。

3号車 フリースペース

鶴見寄り3号車には車いすやベビーカーでの利用に対応したフリースペースが設けられています。

車外から見た様子(左/上)とフリースペースの様子(右/下)。インターホンと手すりが増設されており、フリースペースとして必要な設備は一通り揃っています。

フリースペースの全景(左/上)と、床面シールのアップ(右/下)。

205系1100番台では(理由は不明ながら)フリースペース部分のつり革が省略されています。鶴見線、どの時間帯に乗っても比較的混んでいますが、あえてつり革を省略したのはどのような理由からなのでしょう?(笑)

荷物棚とドア2種

205系1100番台の内装は、各車両の新造時期によって細かな違いが見られるのが特徴です。というわけで、まずは「ドアの窓」を比較していきましょう。

(左/上)は元・山手線で見られた小窓タイプ、(右/下)はそれ以外の線区で見られた大窓タイプになります。205系1100番台は「元・山手線の1・2号車は小窓、元・埼京線の3号車は大窓」で統一されていました。

続いて「荷物棚」。見ての通り、(左/上)とパイプ(右/下)の2種類があります。

205系は新造当初、山手線に集中投入されましたが、国鉄時代に製造された前期型の205系は「」の荷物棚、JR化後に製造の後期型は「パイプ」のそれです。

…「ドアの窓」では「元・山手線の1・2号車は~」と書いたのに、「荷物棚」で「前期型」という言い回しにしたのは、決して表記のゆれではありません(笑)。このあたりは備考としてまとめましたので、興味のある方はぜひ読んでみてください(→「備考」も参照)

【備考:205系1100番台の荷物棚と窓の関係】

国鉄時代の1985年に製造が始まった205系は、まず山手線に10両編成34本が投入されました(前期型)。この34本はいずれも「荷物棚は、ドアの窓は小窓」で製造されており、国鉄時代に製造された205系は全車がこの仕様です。

その後、分割民営化を経て誕生したJR東日本は、205系のさらなる増備を決定。同時に「荷物棚をからパイプに」「ドアの窓を小窓から大窓に」というマイナーチェンジを行い、引き続き山手線のほか総武緩行線・埼京線などにも配備を進めることにします(後期型)。

しかし後期型の205系のうち、山手線に投入された車両だけは前期型と同じ)小窓」のドアが引き続いて採用されました。既に「小窓」の205系が走っていた山手線に「大窓」の後期型をそのまま投入すると、ドアの窓が小さい編成大きい編成同じ路線の同じ車種に混在することになり、当時はこれが良くないと判断されたようです。

従って、205系の車内には大きく分けて

①【前期型 元・山 手 線】荷物棚は   ドアの窓は小窓
②【後期型 元・山 手 線】荷物棚はパイプ ドアの窓は小窓
③【後期型 元・山手線以外】荷物棚はパイプ ドアの窓は大窓

の3パターンが存在。鶴見線の205系1100番台は1・2号車は①または②、3号車は③の内装と、3パターン全ての内装が現代まで継承されていることになります。

3号車はともかく、1・2号車は編成によってこの組み合わせが変わります。乗車した際にはぜひ見比べてみてください。

運転席直前の様子

運転台を外から見た様子(左/上)と車内から見た様子(右/下)。

中間車から先頭車への改造は、車端部の区画(3人掛け席がある場所)を切除~新造の先頭部分を取り付ける形で行われました。それゆえ、運転台周辺は当時増備されていたE231系に近い構造になっているのが特徴です(→「備考」も参照)

【備考:運転台後ろの仕切り壁】

この運転台と客室の仕切ですが、よく見ると運転台の真後ろ部分に枠付きの仕切り壁があるのが分かります。

これは、運転台に強い衝撃が加わるとこの壁が客室側に抜けて、乗務員が圧死するのを防ぐための構造。分割民営化後、JR東日本が初めて自社開発した通勤型車両の209系(厳密にはその量産先行車の901系)で初採用され、現代のE235系まで受け継がれている「JR東日本の通勤・近郊型車両の標準」とも言える仕様です。

某趣味誌によると、205系1100番台の運転台周りは改造当時メインで増備されていたE231系のそれに準拠したとのこと。車内から運転台方向を見た時の雰囲気は確かによく似ていました。

国鉄時代に設計された古めかしい車内に、JR化後の思想を取り入れた真新しい運転台という、「いかにも改造車」な雰囲気なのが面白いところです。

その他の車内設備

床面の点検フタ(左/上)と。ソデ体(座席両端の仕切り)のアップ(右/下)。

国鉄型車両では必ずと言って良いほど見られた「床面のフタ」。現在、首都圏のJR線で日常的にこれが拝めるのは(南武支線を除くと)鶴見線の205系1100番台が唯一となりました。

座席下のカバー(左/上)と車両番号の表記(右/下)。

かつて車両番号の表記はプレートでしたが、盗難防止からか近年になってシール式への交換が行われました。シールとはいえ車番や文字はいわゆる「国鉄書体」なので、一見ではほとんど違和感のない仕上がりになっているのが面白いところです。

非常用ドアコック(左/上)と「急停車注意」のプレート(右/下)。

車内の表記類が、(シールではなく)全てプレートで記載されているのが時代を感じる気がします。

防犯カメラ(左/上)とドア上の路線図(右/下)。

「ドア上の路線図」も、LED・LCD表示装置が標準装備となった感のある首都圏の各線ではめっきり見かけなくなった気がします。路線図は特に更新していないのか、すっかり色あせて鶴見線のラインカラーたる黄色は完全に飛んでいました(苦笑)。

おまけ

深夜の浅野駅に入線してくる205系1100番台(左/上)と、海芝浦駅でのカット(右/下)。

2004年のデビュー以降、20年近くに渡って鶴見線を支え続けた205系1100番台もまもなくファイナルランを迎えます。

概説

デビュー年:2004年(鶴見線での営業運転開始)

鶴見線で使用されてきた103系の老朽化取替を目的として2004年にデビュー。

山手線、総武緩行線への新型車両投入に伴い、当時余剰となっていた205系を種車としている。先頭車は全て中間車からの改造車。

3両編成9本27両が導入され、2004~2005年にかけて同線で使用されていた103系を置き換えた。鶴見線の全線(鶴見~扇町・海芝浦・大川)で使用されている。

2024年以降、後継となるE131系1000番台に順次置き替えられる見通し。

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