14系・24系「はまなす」

14系・24系「はまなす」 – カーペットカー/B寝台普通車

青森から青函トンネルを抜けて、札幌までを結んでいた夜行急行列車がこの急行「はまなす」です。他の寝台列車があらかた廃止された後も、「はまなす」は北海道新幹線が開業する2016年まで生き永らえてきました(→「備考」も参照)

写真は札幌~函館間を牽引したDD51形。「はまなす」は通常7両ですが、繁忙期は最大12両編成で運転される場合があり、その場合はDD51形重連での牽引となります。

【備考:「はまなす」が2016年まで生き残れた理由】

私が個人的に調べた限りでは、「海峡を挟むことから競合交通機関が発達しにくく、他の夜行列車と比較して乗車率が高かった」というのが、2010年代まで生き残れた理由のようです。

要するに「無くすに無くせなかった」というのが本当のところらしく、実際に2010年代に入っても常に混雑していました。

結果として「はまなす」は、「最後の定期急行」「最後の客車夜行」「最後の寝台急行」「最後の国鉄型寝台列車」「最後の14系定期運用」など、数々の「最後」の冠を得た点が特筆されます。

客車の連結部分(左/上)と、行先表示の様子(右/下)。

座席車は14系、寝台車は24系だったため、高さが異なる車両同士が連結されているのも「はまなす」の特徴でした。

撮影日時・場所

撮影日:2006年3月、2012年1月・9月、2016年2月ほか

撮影場所:青森駅 「はまなす」号 車内

備考

・特にありません。

4号車 カーペットカー(指定席) 車体

まずは4号車に連結されていた「カーペットカー」から。

元々は14系座席車だった車両を改造したものであり、廊下側は座席車時代の面影が残っていました。

4号車 カーペットカー(指定席) 車内

さっそく車内へ。このカーペットカーは、フェリーなどで見られる「桟敷席」に着想を得たと言われており、車内はカーペット敷きの「座席」がズラッと展開しています。

カーペットの区切りが「1席」の扱いになっており、寝台券のいらない指定席急行券で利用できる「座席」としての専有面積はズバ抜けた広さとなっていました。

特に2階席(写真右手側)は非常にプライバシー性が高く、発売開始と同時に売り切れてしまう例も多かったように記憶しています。

天井(左/上)と、なぜか設けられている空気清浄機(右/下)の様子。

今でこそ特急などでは一般的になった空気清浄機ですが、国鉄型車両の夜行列車では珍しい設備でした。カーペットカーのみに設置されており、どのような趣旨で設置されたものかは不明です(→「備考」も参照)

【備考:空気清浄機が設置された理由は?】

この空気清浄機が設置された理由として、昔の個人ファンサイトで見かけた“一説”に

「靴を脱いで利用するカーペットカーの性質上、特に夏場の車内で“足の臭い”が漂うことがあり、そのための対策だった」

というのがありました。ただ公式の資料などでその旨の記載を見つけることはできなかったため、当サイトでは「参考」として記載します。

4号車 カーペットカー(指定席) 座席

カーペット席の様子。

各区画には毛布・枕・ハンガー(+通路にスリッパ)がセットされており、B寝台にも劣らないサービスが提供されていました。各区画は頭の部分だけがカーテンで区切られており、視覚上は一人の空間が出来上がるようになっています。

カーペットの下は単なる「床」なので、横になった感覚は普通に「固かった」です。また、実際にゴロ寝すると意外に隣の区画を侵犯しやすく、寝相には注意が必要な「座席」でした。

階段脇の区画(左/上)とカーペット部分のアップ(右/下)。階段下のスペースを使って、荷物置き場と業務用コンセントが備わっていました(→「補足」も参照)

各区画には天井部分に読書灯がついているほか、窓下の部分には、足を投げ出して座る時によっかかる時用のクッションが設けられているのが特徴です。一応「座席」なので、着座での利用を想定した設備もあるということなのでしょう。

【備考:「はまなす」の業務用コンセント事情】

荷物置き場の脇にある銀色のカバー下には、「業務用コンセント」が隠れています。他サイトで「コンセント付きの座席」として紹介されている例がありますが、あくまで「業務用」であり、利用者向けに公式に案内されているものではありません。

もっとも、このコンセントでスマホなどを充電する利用者に対して、車掌の方が注意している様子は(私が見た限り)ありませんでした。「瞬間停電などのリスクは承知の上、あくまで自己責任で利用黙認」となっていたようです。

2階席への階段

2階席への階段(左/上)と、階段下のフットライト(右/下)。

階段には手すりのようなものがついていますが、手すりというより「視覚的な区切り」の意味合いが大きそうです。

4号車 カーペットカー(指定席) 2階席

続いて2階席の様子を見ていきます(→「備考」も参照)

2階席は、線路と並行に8区画が存在。高めの仕切りが設けられていることから「個室感覚」で利用でき、一貫して高い人気に支えられえていました。

【備考:「2階席」の記載について】

他サイト等でこの区画が「上段」として紹介される場合がありますが、当サイトではカーペットカーの指定席券に記載される表記に合わせ「2階」としています。

2階席の全景(左/上)と、寝具を敷いた状態(左/下)。

掛け布団は元々B寝台用のモノをそのまま流用したためなののかは知りませんが、カーペット席の幅と微妙に合致していませんでした。

起き上がっていると向かい側の人と目が合ってしまい気まずいですが(笑)、就寝時は隣の人と干渉する心配がなく、横になれば完全に一人の空間です。この“個室感”こそ、まさに「2階の特権」でした。

枕側の小窓(左/上)と読書灯・ハンガーの様子(右/下)。

4号車 カーペットカー(指定席) 車端部区画

車端部の区画は、構造の関係で階段が1席専用となっており、またスペースが奥まで張り出していることから、プライバシー性が非常に高くなる区画として有名でした。21番と28番の席がそれですが、21番は女性専用の区画となっています。

もっとも「はまなす」カーペットカーの利用者はもとから男性が多めで、私が廃止間近に乗車した時も女性専用の21番(右/下)は終点まで空席でした。

一応、撮影にあたっては発車前に通りかかった車掌の方に許可&立ち会いをいただいています。念のため。

その他の車内設備

ホットカーペットの操作盤(左/上)と通路の様子(右/下)。

冬場は通常のカーペット上に、ホットカーペットが敷かれていました(→「備考」も参照)

【備考:「はまなす」のホットカーペット事情】

このホットカーペットは温度を7段階で設定可能です。ただ、元電源が深夜の消灯と同時に切れていまうため、ぬくぬくと寝るには減光前に毛布を「暖めておく」必要がありました。

一番暖かくなるモードにして毛布にくるまれば、そこは“幸せ”以外の何物でもない空間。凍てつく寒さのホームで「はまなす」を待った身体には、本当にありがたい設備だったように記憶しています。

このページは3ページ構成です。次は>>B寝台 編です。
>>普通車 編もご覧いただけます。

概説

デビュー年:1972年(車両)

寝台列車の主力車両。当初B寝台は3段式で登場したが、その後寝台列車の需要減少や設備改善のために、現在は全てが2段式になっている。

車体構造はその前に登場した14系とほぼ同様だが、1972年11月の北陸トンネル火災事故の教訓をきっかけに防火対策を強化したほか、電源は集中電源式が使用されている。

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