251系「スーパービュー踊り子」 – グリーン車 / 個室・サロン / 普通車・その他


伊豆急下田駅で発車を待つ「スーパービュー踊り子」。老朽化のためか、末期は塗装の剥げやサビが目立っていました。
モケット



(左)グリーン席 (中)カーペット (右)カーテン
撮影日時・場所
撮影日:2014年3月15日、2016年4月19日、2019年12月10日ほか
撮影場所:熱海駅 「スーパービュー踊り子」5号 車内ほか
備考
特にありません。
2号車1階 グリーン個室


2号車1階にはグリーン個室が3部屋設けられています。定員は各部屋4名で、個室単位での販売。実際に乗車してみると、各個室の防音はわりとしっかりしているようで、普通の声で話している分には他の個室まで届いてしまう、ということはなさそうに感じました。
そういえば昼行特急の「個室」は、1980~1990年頃にかけて一つの“トレンド”と言えるもので、本系列のほか100系新幹線やJR北海道の「とかち」「おおぞら」のキサロハ182形も見られました。昨今の新型車両ではすっかり目にしなくなった気がしませんが、これも時代の流れでしょうか。

というわけで個室内部の様子。テーブルをはさんで2人がけの座席が向き合う形です。一人当たりの占有スペースはグリーン車と比較した場合、やや手狭です。また、車内に荷物置き場がないので大荷物だとやや難儀しそうな印象を上Kました。
もっとも、ドアを閉めれば個室内はかすかにレールのジョイント音が響く程度で、とても静かです。私は取材のためだけに7,710円多く払って乗りましたが(苦笑)、一人だとちょっとした寝台個室にも近い雰囲気で、コスパを抜きにすれば文句なく快適でした。決して手軽に楽しめる価格ではありませんが、列車の“個室”というのはそれだけで格別な気がします。


座席の様子。2人がけ(左/上)と1人がけ(右/下)の様子となり、雰囲気の比較用に1人がけはトンネル走行中に撮影したものを紹介します。


座席の様子。(左/上)がそのまま、(右/下)が全展開時の様子となります。リクライニングは電動となっており、スイッチを押すと座面が前にせり出します。
座り心地は、座席というよりかはソファに近い印象を感じました。もちろん、適度に張りのある座面・背もたれのおかげで、「グリーン車」としてのステータスには十分相応しい座り心地です。
しかし、普通のグリーン車の座席と比較すれば、どうしても普通のグリーン車に比べて横方向、縦方向ともスペースの面で見劣りするのは否めないところです。この個室はどちらかというと、外部から“隔絶”された空間、ということが価値なのでしょう。
個室内の設備


室内の暖房スイッチ(左/上)と座席のリクライニングボタン(右/下)。
室内の空調は利用者サイドで調整できますが、車両全体の暖房がそもそもオンになっていないと動作しないとのこと。そのため、寒い時はアテンダントに声をかける旨の案内表記があります。このスイッチのデザインも、どことなく一昔前といった感じがします。


個室の天井(左/上)と室内の空気清浄機の様子(右/下)。
ちなみに(右)写真、ドア脇にあるドアベルはアテンダントを呼び出す時に使うもの。一般家庭にありそうなデザインなのが面白いです…というか、本当に一般家庭用のものなのかもしれません(笑)。
2号車1階 非常出口


2号車1階の個室通路は、伊豆急下田方からのみ入ることができ、東京方からは繋がっていません。では、通路奥が単なる「行き止まり」かと言うとそうでもなく、ご覧のように非常用の出口があります。
ちなみに、気さくに話しかけてきて下さった伊豆急行の乗務員の方に(失礼を承知で)伺ったところ、(その方の知る限り)実際に非常口として使われたことはないとのことです。確かに、何らかの理由で「伊豆急下田方のデッキが使えない場合」を除けばわざわざここを使う必要がありません。
何よりそのような事態が起きないに越したことはなく、実際に使用されることなく引退できたことは幸運だったということなのでしょう。
1号車1階 サロン

1号車1階にはサロンが設けられており、グリーン車とグリーン個室の利用者のみが利用できます。写真奥には売店を兼ねたギャレーがあり、ドリンクサービスのコーヒーや(後述する)車内での食事はこちらで準備されるようです。
ちなみにこの区画、かつては喫煙可能となっており、実質的な喫煙スペースの役割もあったようです。しかし、サロンと2階グリーン車の間には特に仕切もないことから、煙は当然高い方へ流れます。結果、2階の“禁煙”グリーン車がタバコ臭くなるという、困った事情を抱えていました。
リニューアル改造を機にサロンは完全禁煙となり、現在はその心配もなくなっています。もっとも、仕切がないのはそのままなので、ここであまり盛り上がりすぎると2階席に普通に聞こえてしまいます。あまり騒がない程度に楽しみましょう。


売店側から見た様子(左/上)とサロンの天井(右/下)の様子。グリーン車で各種サービスに当たるアテンダントはこの厨房を基地としており、1人は必ず常駐していました。
こういった人的サービスの手厚さも、「グリーン車に乗っている」という“ステータス”を感じる要素であったように思います。
サロン 座席


ソファの様子。定員外設備なので座り心地についてとやかく言うつもりはありませんが、座り心地はやや固めのソファといった感じでした。
長時間座ったら疲れそうな気もしますが、長い時間居座る前提の設備ではないのでこれで良いのでしょう。
サロン 各種車内設備


運転台側には仕切扉が設けられており、その左右には空気清浄機とテレビが備わります(左/上)。空気清浄機は、ここが喫煙可能だった時代に設けられたものでしょうか。テレビは、かつてここで映画などが放映された時代もあったようですが、私が乗車した時は「故障中」のシールが貼られていました。
(右/下)はサロン内のランプシェードの様子。その上、いかにも「ご自由にお取りください」と言わんばかりにお菓子が置いてありますが、こちらは売店の売り物です。間違っても持ち出さないように。
サロンでの食事


かつて「スーパービュー踊り子」のサロン室で、“隠れた名物”でもあったのがこのビーフカレーです。700~750円(消費増税など時期による)で販売されており、グリーン車の利用者はサロンでも座席でも食べることができました。
写真(左/上)はサロンでの食事を希望した場合、(右/下)は座席でのそれを希望した場合となり、前者は皿もグラスも陶器、後者はどちらもプラスチック製の容器となっています。
カレーそのものは具がほぼない、安いレトルトカレーのような感じ。それに700~750円という価格が相応しかったかはさておくにしても、グリーン車で食べる温かいカレーは格別でした。全国的に列車内での供食設備が消えゆく中、寝台列車でも何でもない“普通の特急”で温かい食事が提供される珍しい例だったのですが、2018年春のダイヤ改正で販売終了となっています。
もっとも、このカレーを注文する人はそこまで多くなかったようです。私が注文した時も、アテンダントも慣れていなかったのか、茅ケ崎あたりで注文したのが根府川を過ぎたころに出てきました(苦笑)。


サロンのもう一つの名物が、このプレミアムアイスクリーム(左/上)。350円で販売されており、上にかけるソースはラズベリーとブルーベリーから選ぶことができました。専用の器に盛って提供され、見た目もおしゃれだったのですが、アイスクリーム本体はスジャータのいわゆる「シンカンセンスゴクカタイアイス」。出された直後はとてもスプーンの刺さらないシロモノでした。
その他、車内で食べられる温かい食事として崎陽軒のシウマイもあったようですが、残念ながらそれについては撮影し損ねています。というわけで、メニューの写真をご紹介(右/下)。いずれも2018年春の改正で販売終了となりました。
>>このページは3ページ構成です。次は>>「普通車・プレイルーム・その他」 編 です。
概説
デビュー年:1990年(車両)
「乗ったらそこは伊豆」をコンセプトとして、伊豆方面への特急列車用の車両として1990年にデビュー。
編成は10両編成で、全てハイデッカー構造となっているのが特筆される。窓を天井付近まで回り込ませ、乗客が景色を楽しめるよう配慮された。また、9・10号車には大型テーブルを設けたボックス席を、10号車には子供用のプレイルームを設置してファミリー層に配慮するなど、観光輸送に特化した設計になっているのが特徴。
1990~1992年にかけて10両編成4本が製造され、登場以来、一貫して「スーパービュー踊り子」で運用された。
2002~2004年にかけてリニューアル工事が行われ、座席の交換、塗色の変更、ボックス席の一般席化などが施され、「おはようライナー新宿」「ホームライナー小田原」にも導入されるようになった。また、過去に「デラックスビュー南房総」(新宿~千倉)、「ビュー草津」(上野~万座・鹿沢口)、「ビュー谷川」(上野~水上)など、多数の臨時列車に充当された経歴がある。
直接の後継となる「サフィール踊り子」のデビューにより、2020年3月に「スーパービュー踊り子」は廃止。本系列は同年4~9月にかけて全車が廃車され、全車解体となった。