117系 – 京都地区「湖西・草津・琵琶湖線」

117系 – 京都地区「湖西・草津・琵琶湖線」

それまで153系が担っていた京阪神の新快速のイメージアップ(という名の老朽化置換)を目的に1979年から製造されたのがこの117系です。並行する私鉄への対抗を主眼において開発された車両のため、近郊型車両に分類されながらも「全車クロスシート」「片側2扉」など、当時の国鉄からしたら「異色」といってもいいほどに、さまざまな新機軸が導入されているのが特徴です。

車体のデザインにしてもそうで、半流線形を取り入れたスマートなデザインは当時はかなり話題になったとのこと。1990年代頭まで「新快速」として華々しい活躍を遂げましたが、後継車のデビューにより現在はローカル線での活躍がメインになっています。

さて、前置きが長くなりましたが、このページでは京都地区のローカル輸送を担う117系を扱います。最近まではデビュー当初の「新快速」カラーでしたが、近年は見ての通り緑一色への塗り替えが進行。やや残念な感は否めない気がしますが…ともあれ、さっそく車内を見ていくことにしましょう。

車体側面と行先表示の様子。窓は基本的には2段窓になっています。行先表示は行先と種別が分割されているタイプで、これは現在の223系や313系など「西の標準スタイル」になりつつある気がします。
なお、後述する100番台は1段下降の窓になっていますが、詳説は別項に譲ります。

モケット

(左)普通席 (中)床 (右)カーテン

撮影日時・場所

撮影日:2017年6月14日

撮影場所:湖西線 近江舞子駅 車内ほか

備考

特にありません。

車内全景(セミクロスシート)

では車内の様子。かつては全席クロスシートでしたが、京都地区で活躍する117系は、大半がご覧のようにセミクロスシートへの改装が実施されています。その際に新設されたロングシート部分にはつり革も設けられるなど、ラッシュ時間帯にも対応した設備になっているのが特徴です。

車内はベージュと白を基調としていますが、写真奥の化粧板(壁部分)の木目調に注目。かつての国鉄型車両では、木目調の内装はグリーン車でたまに見られる程度でした。それが、仮にも近郊型である本系列で採用されただけに、登場当初の鉄道雑誌でもかなり注目されたようです。こういうところからも、国鉄が117系にかけた“意気込み”が感じられる気がします。

座席

続いて座席を見ていきます。写真は0番台から改造された300番台で撮影しているため、117系の最初期から存在するタイプです。
この転換クロスシートは、座席の向きを転換するとそれに合わせて座面が微妙に傾くようになっています。これによって、座席に深く座れる…という触れ込みのようですが、現在は座席の詰め物がヘタっていることもあって、黙っていても深く座れてしまうのが現状です(苦笑)。

写真右はクロスシートとロングシートの境目部分の座席。こちらは向き固定ですが、背もたれの角度がかなり自然になることから「知る人ぞ知る」人気席のようです。私も柘植駅や近江舞子駅で観察していましたが、地元民風の方々はわりとここを好んで座るように見受けられました。

座席を向かい合わせにした状態(左/上)の様子。窓側にある肘掛の形状は、ロングシートとの境目部分の区画(壁に据付方式)とその他(金属棒2本で支える方式)で形状が異なっています。ロングシートとの境目部分は、座席そのものを壁に密着させる必要があるためでしょうか。そのためか、この写真ではかなり分かりづらいですが写真右の座席の肘掛が、微妙に手前に来ています。
写真(右/下)は座席肩部の手すりのアップ。気をつけないと通路側のお客さんの頭とゴッツンしそうな位置にあるので、使う時には注意が必要そうです。

車端部・運転台直後の区画

車端部(左/上)と運転台直後の区画(右/下)の様子。ドア側には手すりが設けられており、ドア付近の立ち客への便が図られています。

上項目の内容と被りますが、お時間のある方は左側の写真をクリックして、拡大して見てみてください。3列ある座席のうち、ドア脇と壁側の座席についているひじ掛けより、中間の座席のそれが通路側に張り出しているのがお分かりいただけるかと思います。

運転台後ろの座席(左/上)の様子と、運転台後ろになぜかある温度計(右/下)の様子。この温度計の古めかしいデザインが、後ろのノスタルジーあふれる木目調によくマッチしているように見えます。

優先席

車端部の一部は優先席となっており、優先席区画には緑色の座席カバーがかけられています。座席そのものは全く同一です。

ロングシート

続いて300番台への改造時に新設されたロングシートをご紹介。こちらは3人席が2つ並んだ6人がけとなっています。300番台への改造は1992年頃に行われていますが、そのためかソデ体(座席の端にある肘掛)や座席は、当時の新鋭車両だった205系に似ているように見えます。

つり革(左/上)と、ロングシートとクロスシートの境目部分(右/下)。境目部分には機器室のようなものが設けられていますが、中に何が収められているのか気になるところです。ロングシートの新設時に、余ってしまったスペースを埋めるための、単なるスペーサーにも見えます。

車内全景と座席ほか(全クロスシート):京キトS3編成

京都地区の117系は、先述の通り大半が300番台化(セミクロスシート化改造)されていますが、ごく一部に登場当初からの「全クロスシート」を残した車両も存在します。写真がその様子。ズラッと並ぶロングシートはもはや壮観で、とても近郊型車両とは思えないゆったりした雰囲気です。この座席を京都地区で残しているのは、2017年6月現在でS3編成(6両編成)のうち2両、及び8両編成2本のみとなっており、「貴重な車内」といえるでしょう。

座席の様子。京キトS3編成のうち、2両のみがこの座席となっています。この2両は117系の中では最後期に製造された100番台のため、バケット構造の座席、座席下に空間があり脚を伸ばして座ることができる、など設備面での改善がなされているのが特徴です。
あえて普段は撮らないアングルから撮影してみましたが、このアングルだとバケット構造と座席下のスペースが分かりやすいかと思います。

その他の車内設備

天井(左/上)と荷物棚(右/下)の様子。照明はルーバー付き、空調設備を中に収めたすっきりしたデザインの天井など、こちらも近郊型車両にはもはや「破格」といっていいほどの設備が整っています。

窓間のコートかけ(左/上)と座席番号表記(右/下)の様子。座席番号のプレートは金属製のものが使われています。

通路(左/上)と窓を車内から見た様子(右/下)。一見では料金不要の普通列車の車内とは思えない作りで、地方私鉄の「有料特急の車内」出しても全く違和感のない作りなのが凄いところです。

※ 以後、トイレ内部の画像が含まれます。

トイレ

(京都起点に見た)大阪寄りの先頭車にはトイレの設備が設けられています。写真左はトイレのある車端部の全景、右がトイレ個室部分のアップ。木目調のせいで遠近感があまりないためか、一見トイレがあると分かりづらいのは単なる写真の都合ではなさそうです。

トイレ内部の様子。床面や便器の左右の滑り止めを兼ねたマットは近年交換されたためか、非常にきれいな状態でした。見た目にも古めかしい、「国鉄型車両の列車便所」といった雰囲気です。

車両概説

デビュー年:1979年

京阪神地区の新快速で使用されてきた153系が老朽化・陳腐化により置換の時期を迎えたことから、それらの後継として1979年にデビュー。
分類上は近郊型電車の一つであるが、並行する私鉄各線の高い車内設備水準に対抗するため、内装は転換クロスシートを採用し、木目調を基調として高級感を出すなど、他の近郊型電車とは内装面で一線を画しているのが特徴。その他、足回りにも当時の最新技術がふんだんに取り入れられており、最高速度は110km/hと急行列車に比肩する性能を持つ。

京阪神地区と名古屋地区に集中的に導入され、JR東海・西日本に引き継がれた。最近は後継車の登場から、JR東海からは2013年に退役。JR西日本でも湖西線、草津線、紀勢本線などをはじめとしたローカル線へ転用されるなど、近年は数を減らしつつある。

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