小田急電鉄8000形「更新車」
生まれが平成初期の私にとって、「小田急」と言えばいまだに白地に青帯の車両が真っ先に思い起こされる今日この頃です。そんな昔ながらの塗装を令和の時代まで残していたのが、この小田急8000形です。
2002年頃から更新工事が施行され、全編成に波及。2020年代に入っても1両の廃車もなかった8000形ですが、2022年から徐々に廃車が進行しています。2023年5月現在では、依然まとまった数の車両が活躍していますが、そろそろこの車両も今後が気になる時期に入ってきたような気がします。いずれにしても、記録するならお早めに、ということなのでしょう。
さて、さっそく車内に入ります。
モケット
(左)一般席 (中)優先席 (右)床
撮影日時・場所
撮影日:2017年11月5日
撮影場所:小田急電鉄多摩線 唐木田駅 車内
備考
特にありません。
車内全景
では車内に入ります。元々8000形は内装を薄い青、床材を薄いグリーン、座席は青系と全体的に寒色系でまとめていました。しかし、更新工事に伴って化粧板は白系に一新。車内は更新工事前の8000形と比べ、かなり明るい雰囲気になっています。
内装面のカラーリングは全面的に更新されているとはいえ、車内の窓配置や座席両端のポール、荷物棚などは変更されておらず、更新工事前の“面影”が随所に残っているのがこの車両の面白いところです。どことなく「一昔前の車両」の雰囲気がぬぐえていないのは、それゆえなのかもしれません。
座席
座席の様子。座席は更新工事時に、派手な赤系のモケットをまとった張りの強いバケットシートに交換されています。
写真は2008年度に更新された8264編成で撮影しており、座席間の手すりは曲線を描いた4000形に近いデザインです。ただ、更新時期によっては「手すりが直線」の車両もあるらしく、この車両も何だかんだ車内的に奥が深いと感じます(笑)。
座り心地はかなり固め。座席モケットがフワッというよりはざらざらした雰囲気に近いので、全体的な身体のホールド性としてはまずまずと言ったところでしょうか。
座席の手すりのアップ(左/上)と非常用ドアコックの様子(右/下)。
車端部
車端部は4人がけとなっています。
この区画のみ床材の色が青系ですが、これは優先席区画を示す小田急共通のサイン。もともとこちらの区画が、更新工事当初は優先席だった名残です。
かつて「小田急の車両は優先席が新宿寄り」にあったものの、「(千代田線経由で乗り入れてくる)東京メトロの車両は優先席が小田原寄り」にあり、優先席を利用する利用者から不評でした。そのため、2009年に「小田急の車両も東京メトロの車両に合わせて優先席を小田原寄りに統一」。
この際、それぞれの座席は移設されたものの(床材を含めた交換となると手間がかかるためか)床だけは”優先席時代”のまま残っています。
撮影した8264編成は2008年に更新工事を受けているためにこのような内装となっていますが、8000形の更新は2013年まで続いていました。
そのため、優先席位置の変更が行われた後に更新された車両は、一般席の車端部が通常の床材となっているようです。
優先席
で、こちらが優先席の様子。基本的な見付は一般の車端部に同じですが、「座席モケットが濃紺」「つり革を黄色いものに変更」「黄色の手すりを増設」などの違いがあります。
フリースペース
更新工事に伴い、先頭車両には車いすやベビーカー利用者向けのフリースペースが新設されました。7人がけ座席のうち、片側3人分をフリースペースとしています。
フリースペース部分の四角いクッションのようなものは、元々跳ね上げ式の補助席だったもの。2010年頃から、座席は折りたたんだ状態で固定。上から座席モケットと同じ色のカバーがかけられ、補助席としては廃止されています。
フリースペースの設置に伴い、非常通報器(左/上)が新設されました。
またフリースペース隣の手すりのポールは、この区画でのみ見られる形状となっています(右/下)。
その他の車内設備
天井の様子(左/上)と荷物棚の様子(右/下)。
天井は更新工事に伴って化粧板を貼り替えていますが、それ以外は大きく変わった点はなさそうです。
一般席(左/上)と優先席(右/下)のつり革の様子。一部のつり革はやや低めの位置に設置されており、背の低い人でも握りやすくなっています。
更新工事の時につり革は総入れ替えされており、見た限りでは3000形で見られるのと同一の仕様です。
ドア
乗降用ドアの様子。「戸袋脇に縦に黄色のラインを追加」「ドア上にLED表示装置の新設」以外、大きな変化はありません。
概説
デビュー年:1982年
輸送力増強を狙いつつ、各停から急行まで幅広く運用できる車両として1982年にデビュー。以後、1987年まで6両編成・4両編成ともに増備された。
制御方式に当時としては先進的であった界磁チョッパ制御を取り入れている。
2002年以降から車体更新が始まっており、現在は全編成が更新済みとなっている。この際、一部編成を除き足回りはVVVFインバーダー制御に交換された。更新工事の時期が長期に及んだため、更新時期により制御方式や各種機器が異なっているほか、内装についても細かい差異が見られるのが特徴。
小田急線全線で運用されている。