伊豆急行100系「クモハ103」
伊豆急行の観光鉄道としての「礎」を築き、20世紀後半の伊豆急行を支え続けたのがこの100系です。
100系の定期運用は2002年に終了しましたが、このクモハ103は事業用車として残存。その後、2011年に「伊豆急行の開業50周年」を記念して、不死鳥のごとく“復活”。以後、団体列車やイベント列車で活躍を続けてきましたが、さすがに寄る年派には敵わず2019年7月に完全引退となりました。
写真は片瀬白田駅でのカット。淡いブルーの車体が、海沿いの伊豆急行によく似合っていました。
【備考：当ページ掲載の写真につきまして】
当ページで掲載する写真は、個人的な知り合いから招かれた貸切運転時の様子となります。団体行動の合間を縫って撮影した写真のため、構図などにズレがある写真がありますがご了承ください。
モケット
（左）座席 （右）カーテン
撮影日時・場所
撮影日：2019年初頭
撮影場所：片瀬白田駅 車内
備考
本項で紹介する写真は、個人的な知り合いから招いていただいた「貸切列車」での様子となります。そのため、撮影日につきましては明確な日付を公開しておりません。
車内全景
車内の全景。
車内は、デビュー当時からの青モケットが展開しています。2011年の“復活”時に、登場当初の雰囲気に近づける改修工事を行ったとのことで、製造から60年近いとは全く感じないほどに綺麗な状態でした。
車内はドア脇はロングシートが申し訳程度にありますが、メインはあくまでクロスシートです。伊豆急行は地域輸送というよりも「観光輸送」としての側面が大きいだけに、これはこれで理にかなった構造なのでしょう。
座席
クロスシート（左／上）とロングシート（右／下）の様子。
背もたれは完全に直立に近い角度であり、このボックスに4人でぎっちり座ると正直かなり狭苦しいです。窓際のテーブルにはセンヌキがついており、これは国鉄の急行型車両では“標準”ともいえる設備でした。
【備考：100系になぜセンヌキが？】
伊豆急行は、直通先の熱海駅（JR伊東線）～伊豆急下田まで乗り通すと2時間近くかかります。
それなりの乗車時間が見込まれることから、100系の開発にあたっては当時の“急行型車両”に準じた車内設備を取り入れたとのこと。このセンヌキは、それをもっとも端的に表している設備と言えそうです。
車内設備
天井（左／上）と荷物棚（右／下）の様子。
かつてクモハ103には冷房装置（電源の関係で使用はできない）が天井にありましたが、今回の“復活”に伴い撤去され、2010年代に新たに非冷房になったという全国的にも珍しい車両だったりします。
天井まわりは冷房があった痕跡が全く分からず、伊豆急の復活にかける“意気込み”を垣間見た気がしました。
通路の様子（左／上）と座席肩部の握り手（右／下）。
握り手も“復活”時に整備されたためか、新品のような輝きを保っていました。
扇風機（左／上）と、車内に掲示されている復活整備中の写真（右／下）。
扇風機の広告は、昔のものをあえて残しているとのことです。
運転台後ろの様子
運転台後ろの全景（左／上）と、窓上の号車札・温度計・掲示など（右／下）。
貫通扉上には100系の「復活」に関する掲示のほか、温度計・号車表記などが配されています（→「備考」も参照）。
【備考：この2枚は異なる運転台で撮影しています】
乗車したのが仲間内での貸切列車であり、片側の運転台には貸切列車で使う“小道具”などが多数置いてありました。
そのため、写真（左／上）と写真（右／下）は異なる側の運転台で撮影しています。写真左には温度計がないなど、設備に違いがありますがご了承ください。
温度計のアップ（左／上）と100系に関する掲示の様子（右／下）。
いずれもクリック・タップすると大きな画像でご覧いただけます。温度計はデビュー当初からあったものでしょうか。
おまけ 貸切列車での設備と演出
最後におまけとして、貸切列車固有で見られる設備を紹介します。仮設テーブル（左／上）と、引退記念のサボ（右／下）。
貸切の申込み時に車内で飲食する旨を事前に伝えておくと、一部区画に写真のような仮設テーブルを設置してもらえます。荷物棚から吊り下げて窓際のテーブルで固定する方式ですが、存外安定していて使いやすかったように感じました。
次に行先表示の様子（右／下）。写真は引退記念のサボとなっていますが、参加者側で事前に作成＆伊豆急の審査をクリアすれば、別料金で自作のサボも掲出することもできました。
※上記はイベントにより異なる場合があり、全てのイベントで実施されることを保証するものではありません。
おまけ：その他
海沿いを快走する100系の車内からの写真（左／上）と、伊豆急下田駅での並び（右／下）。
185系と251系がどちらも引退した今、この光景もすっかり「平成の思い出」となってしまった気がします。
概説
デビュー年：1961年
伊豆急行線の開業当初から使用されている車両。
伊豆急行線と相互直通運転を行っているJR伊東線の熱海から伊豆急下田まで通しで乗車した場合、乗車時間が1～2時間となることから、車内は大半がクロスシートとされ、長距離利用に特化した作りとなっている。
2000年から後継となる200系の導入が始まり、2002年までに両運転台を持つクモハ103を除き全車が引退。
クモハ103は一旦は事業用牽引車扱いとされ、構内での入換牽引などに使用されていたが、2011年に伊豆急行の開業50周年を記念し、整備されて「復活」したのが特筆される。
その後は各種のイベント列車や団体貸切列車を中心に運用されていたが、老朽化と保安装置の更新に対応するには多額の費用や手間がかかることから、2019年7月限りで再度引退。引退後は、再び伊豆高原駅の構内で牽引車として使用された時期もあったが、現在は伊豆高原駅の側線に留置されている。
