富山地方鉄道17480形


東急田園都市線・大井町線などで活躍した8590系を譲り受け、2013年に富山地方鉄道でデビューした17480形。譲渡時の改造は、保安装置やワンマン機器の設置など最低限にとどまっており、内外装とも東急時代の雰囲気をよく残しています。
写真は、上市駅で肩をならべる2本の17480形。東急時代のカラーリングはそのまま使用されており、編成によって大井町線カラー(写真右:第1~2編成)と田園都市線カラー(同左:第3~4編成)が存在するのが特徴です。さて、さっそく車内に入りましょう。
モケット



(左)座席 (中)カーテン (右)カーテン
撮影日時・場所
撮影日:2025年2月
撮影場所:富山地方鉄道線 上市駅 車内
備考
特にありません。
車内全景

車内の全景。
車内は、後述のワンマン機器を除いて東急時代ほぼのそままと言っても過言ではないでしょう。富山地方鉄道ではワンマン運転が行われており、乗車口として使用されるドア脇には整理券発行機・ICカードリーダーが設置されています(→「備考」も参照)。
【備考:富山地方鉄道のICカード事情】
富山地方鉄道の電車で使えるICカードは、2025年7月現在で「えこまいか」のみです。
※路面電車のみSuica・PASMO・ICOCA等の全国交通系ICカードが使用可能
座席


座席の全景(左/上)と、座面部分のアップ(右/下)。
座席は茶色とマルーン色で、3人がけ・4人がけの間に仕切りが入った形状です。東急時代はわりとハリのある座り心地だったと記憶しているのですが、経年ゆえでしょうか、取材時はやや柔らかめのそれでした。
そのほか、(右/下)のように座面のスレが見受けられる個体もチラホラあるなど、ところどころ年季を感じる状態なのは否めないようです。


座席中央の中仕切(左/上)と、両端の仕切棒(右/下)のそれぞれアップ。
この中仕切は1986年に登場した東急9000系で初導入され、同時期の8590系・8000系の内装更新車にも水平展開されたものです。いわば「平成の東急の象徴」とも言える仕様で、上部分に肘あて(恐らく樹脂製)もついた立派な‟ひじ掛け”でした。
車端部


車端部は優先席となっています。全景(左/上)と、カーテンの様子(右/下)。
カーテンには優先席のピクトグラムがじかに貼り付けられていますが、これは東急時代からのもの。携帯電話の使用に関する表記も、いまや懐かしの「優先席付近では携帯電話の電源をお切りください」(2015年10月以前の案内)が残っていました。


座席の様子。マルーン色(左/上)と茶色版(右/下)です。
座席モケットは一般席と共通で、つり革の色を黄色として区別しています。東急時代にはこれに加えて、座席上の壁部分に黄色の太いシールが貼られていたものの、富山地方鉄道への移籍後しばらくして撤去されたようです。
車いすスペース


17480形は片側4ドアですが、富山地方鉄道ではワンマン運転を行う関係で両端の2か所のみを使用しています。残った中間の2つのドアは締切となっており、(どうせ締切なら…ということなのかは知りませんが)見てのとおり「車いす」のピクトグラムを貼り付けて、即席の車いすスペースとして転用されています(→「備考」も参照)。
写真がその全景(左/上)と、車いすピクトグラムのアップ(右/下)。該当のドアには「このドアは開きません」の案内が貼られています。コストをかけずにバリアフリー設備を実現する、同社の柔軟な発想を感じます(笑)。
【備考:17480形の締切ドア事情】
後年、中間ドアは鉄板をはめ込んで、完全に埋め込んだ編成も登場しています。
車内設備


天井(左/上)と荷物棚のアップ(右/下)。
こちらは東急時代からそのまま使用されており、特に変わった点はなさそうです。


通路(左/上)と、座席下のカバーの様子(右/下)。
床面には随所に補修した跡が見受けられますが、これは東急時代からこんな感じだったように記憶しています。この補修跡そのものが東急時代からのものかもしれません。
ワンマン機器


最後に、運転台直後にあるワンマン機器類を見ていきます。全景(左/上)と、運転台上の運賃表示器様子(右/下)。
運賃箱・運賃表示器は他の系列と共通のものが採用されており、(こんにち‟定番”となったLCDタイプではなく)昔ながらのデジタル表示・LED表示装置のそれがまだまだ頑張っています。


ドア脇の運賃箱(左/上)と、駅停車中の様子(右/下)。
写真は有人駅の上市駅で撮影したため(富山地方鉄道で使用されている)全てのドアが開いていますが、無人駅での乗降時は進行方向一番うしろのドアのみが開きます。
おまけ:運転席と車内の銘板


おまけで運転席の様子(左/上)と、車内の銘板・非常用ドアコックなど(右/下)。
移籍後に自動放送や車内監視用のモニター類が追設されていますが、こちらも東急時代の雰囲気をよく残しています。
概説
デビュー年:2013年(富山地方鉄道でのビュー)
東急電鉄で使用されていた8590系を譲り受けて、2013年にデビュー。
東急時代は田園都市線や大井町線などで運用されていた車両で、カラーリングは東急時代のまま流用されている。そのため、同じ17480形ながら前面が田園都市線カラー(赤帯)と大井町線カラー(オレンジ・イエロー)の編成が存在するのが特徴。
富山地方鉄道への入線にあたっては、富山地方鉄道の保安装置搭載・ワンマン改造程度にとどまっており、内装は東急時代と大きな差はない。富山地方鉄道では初のオールロングシート車である。
2013年に2編成が運用を開始し、その後2019年に追加で2編成が増備され、2025年現在は4編成8両が運用中。保守用部品取りとしての1両(デハ8181)を含めた合計9両が、富山地方鉄道に譲渡されている。
運用は普通列車が中心だが、まれに特急「くろべ」「立山」にも使用されるなど、富山地方鉄道の全線で幅広く使用されている。