えちぜん鉄道MC7000形

えちぜん鉄道MC7000形

福井を起点として、三国港までを結ぶ三国芦原線と勝山までを結ぶ勝山永平寺線を運営しているのがえちぜん鉄道ですが、同社の車両の一つがこのMC7000形。一見ではまったく分かりませんが、この車両、実は元JR東海の119系5300番台を改造して登場しています。移籍に伴い、外観だけを取っても運転台が下げられたり、前面の行先表示をつぶして前照灯を配すなど、JR時代からかなりの変化が。パッと見では全く「元JRの車両」と気付かないのが面白いところです。

私は、鉄道とは全く関係のない所用でたまたま福井に立ち寄った際、中途半端に時間が空いたので取材していくか…という経緯でえちぜん鉄道に乗車。まさに、「何の予備知識もない」状態で乗ったので、車内に入ってビックリでした(笑)。

写真は日が暮れたばかりの三国港駅にたたずむMC7000形。移籍して5年(2019年現在)が経過しましたが、丁寧にメンテナンスされているようで、きれいな状態を維持しているように感じました。
車内に足を踏み入れると、改装こそされているものの、昔懐かしい国鉄メークの“近郊型電車”の車内がそこにあります。さっそく見ていくことにしましょう。

モケット

(左)一般席 (中)優先席 (右)カーテン

撮影日時・場所

撮影日:2019年10月5日

撮影場所:えちぜん鉄道 三国港駅 車内

備考

MC7000形は、偶数号車は電動機を搭載しないことから「MC7000+TC7000」と表現する場合もあるようですが、便宜上当サイトでの表記は「MC7000形」に統一します。

車内全景

では車内へ。どことなく“見覚え”のある方も多いと思われますが、3ドア+セミクロスシートのこの内装こそ、MC7000形が元119系である証です。
車内は床材、座席モケットの交換などが行われ、明るめのブルーを中心とした色調に。しかしそれ以外は大きく手を加えられた形跡はなく、車内に入ると昔ながらの雰囲気が随所に垣間見えます。

ちなみに車内とは何も関係ありませんが、MC7000形としての移籍時に、足回りは最近のVVVFインバーター制御に換装されています。そのため、車内こそ“どこか懐かしい”雰囲気なのに、走行音のおかげでその懐かしさがかき消されてしまう、奇妙な「ちぐはぐ」がこの車両の面白いところでもあります。乗車した際はぜひ感じてみてください(笑)。

クロスシート

最初にボックス席から。座席モケットこそ交換されているものの、基本的なフレームは119系時代から大差ありません。座席内部の詰め物はそのままのようで、腰掛けると「バフッ」と音を立てて腰が沈み込む、国鉄型の車両によくある座り心地(笑)もそのままです。

細かいところですが、窓際のテーブルもそのまま残されています。国鉄時代からの近郊型電車は、車内のリニューアル改造を受けた際にこのテーブルが撤去されてしまう例も多いだけに、珍しいパターンと言えそうです。

ドア脇ロングシート

ドア脇のロングシートはこんな感じ。MC7000形は片側3ドアですが、中央のドア脇は2人がけ(左/上)、両端のドア脇は3人がけ(右/下)と変則的な配置になっています。これは119系時代からの仕様ですが、なぜこのようになっているのかは気になるところです。

座席を真横から見た様子(左/上)と座面のアップ(右/下)。シートモケットは交換されてから間もないためか、波うちやしわは見られませんでした。

優先席

運転席直後は優先席(左/上)となっており、一般席と比較してやや淡いブルー、というより水色に近いモケットが採用されています。ドア脇は整理券発行機が設けられており、そのアップが(右/下)。他ではあまり見ない形をしているように感じます。

車端部

続いて車端部。こちらは4人がけ程度のロングシートが展開しています。座席とは関係ありませんが、MC7000形では貫通扉が全て開けられた状態で固定されていました。こちらの方が、ワンマン運転時に運転士が車内を見通しやすいのでしょう。

車端部 – フリースペース区画

またしても車端部ですが、こちらは119系時代にトイレが設けられていた区画。えちぜん鉄道への移籍に伴い、トイレが撤去されたほか、向かい側の座席も全て撤去されてフリースペースとなっています。

写真(右/下)はこの区画で“唯一の座席”となる2人がけロングシートの様子。座席がなく妙に広いので、実際に着座してみた感じでもどうにも落ち着きませんでした(苦笑)。

フリースペースのアップ(左/上)と元トイレだった場所(右/下)。トイレだった場所は車内と同じ化粧板が貼られ、一見では元々トイレがあったとはほとんど分かりません。いっそロングシートを引き延ばしてしまっても良かったのでは…と思わないこともありませんが、「新たに窓を作ってまで、プラス3人分の着座定員を確保すべきか」というコストパフォーマンスを考えると、これが“最適解”の形状なのかもしれません。

車内設備

続いて各種の車内設備の紹介に移ります。写真(左/上)が天井、(右/下)が荷物棚のアップです。モケットや床材の張り替えが行われた座席・床面とは対照的に、天井周りは元「国鉄型」の雰囲気が色濃く残っているように感じます。

窓間のコートかけ(左/上)と扇風機のスイッチ(右/下)。(周りに乗客がいないことを確認して)試しにスイッチを入れてみると普通に動きました。この「扇風機」の文字もいい味を出しているように感じます。

座席番号のプレート(左/上)と床面のアップ(右/下)。そういえば床面にあるこの金属製のカバーは何なのでしょう?

ワンマン機器

運転席直後にはワンマン機器が設けられており、(左/上)がその全景、(右/下)が運賃表です。あえて斜め撮りなのは、正面から撮ると窓に私が映りこんでしまうためです(笑)。運賃表はLCDモニタですが、どこかで見たデザインだなと思ったら、右下のロゴマークを見ても分かる通り、路線バスのそれでもよく使われている小田原機器製のものでした。

(ちなみにこれは超マニア的な話になるのですが、バスに搭載される小田原機器の運賃箱は運賃が切り替わる際に、独特の「プマ」(神奈川中央交通など、会社により「プマプマ」)というブザーが鳴ります。えちぜん鉄道でも聞けるかと期待していましたが、残念ながら鳴らない設定になっているようです。一応参考までに。)

乗降用ドア

運転台直後のドア周り。機器室や整理券発行機がある関係で、妙に狭苦しい感じの空間になっています。こちらにはなぜか車内放送用のマイク(右)と思われるものが配置されていますが、昼間を中心に乗務するアテンダント向けのものでしょうか。一般の利用者も普通に通る場所に、ここまで堂々とマイクが置いてあるのも珍しいので撮影してみました。

車両概説

デビュー年:2013年(MC7000形としてのデビュー)

老朽化したえちぜん鉄道の従来車置換を目的として2013年にデビュー。JR東海の飯田線で使用されていた119系5300番台の譲受車である。
えちぜん鉄道への入線にあたり、走行機器のVVVFインバーター制御化、トイレの撤去などを行った。また、改造時に運転台の位置を下げる工事が行われているため、前面形状は同車の6000形と近似している。

2013年から改造・導入が始まり、現在は6編成12両が在籍。勝山永平寺線、三国芦原線の全線で使用されている。

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