目次
・グランクラス
・グリーン車
・普通車
・トイレ・洗面台
E5系「はやぶさ」ほか – グランクラス編


それまで275km/hだった東北新幹線の最高速度を、320km/hまで一気に引き上げたのがこのE5系です。最高速度320km/hは営業列車としては日本最速であり、世界的に見ても中国の京滬高速鉄道に次いで2位となっています。
2011年のデビューから怒涛の勢いで増備が進められ、200系・E2系など昭和~平成時代の新幹線車両を一気に置き換えました。2025年現在で51編成510両が在籍しており、JR東日本の新幹線としては最多勢力です。
写真は、深夜の新青森駅に停車中のE5系。さっそく車内を見ていきましょう。
モケット



(左)座席 (中)カーペット (右)カーテン
撮影日時・場所
撮影日時:2024年12月
場所:東北新幹線 新青森駅 車内
備考
特にありません。
グランクラス 車内

車内に入ります。
暗めの電球色照明・レッドカーペットに2+1配置の大型のバックシェル席の組み合わせは、視覚上にもラグジュアリーを感じます。バックシェル座席も新幹線では初の採用で、当時チラシなどで謳われていた「新幹線のファーストクラス」にふさわしい雰囲気の仕上がりと言えるでしょう。
座席は本革を使っている関係で、車内は(“靴屋の匂い”ほどではありませんが)革の匂いがほんのり残っています。


車内を反対から見た様子(左/上)と、天井を見上げたカット(右/下)。
天井の照明は横に向かって走る(=枕木と平行)デザインですが、これは新幹線に限らず鉄道全体でも珍しいデザインのように感じます。
グランクラス – 座席


続いて座席を見ていきます。1人がけ席の全景(左/上)と、全展開状態(右/下)。
座席の付帯設備は(これから各々詳しく紹介していきますが)レッグレスト・ピロー・カクテルトレイ・引出式のダイニングテーブル・読書灯などとなっています。また、リクライニングやレッグレストの動作は全て電動で、ひじ掛け先端にあるパネルで操作できます。
シートピッチは1,300mm。グリーン車の1,160mm・普通車の1,040mm(E4系以前は980mm)と比較すると、その差は歴然としています。


続いて2人がけ席の全景(左/上)と、その全展開状態(右/下)。
座席と座席の間にはパーティションがついており、特にリクライニングすると視覚上は一人の空間が出来上がります。基本的な仕様は1人がけ席に共通で、違いは車内誌・スリッパ入れが前席のシェル中央に設置されている程度でしょうか。
グランクラス – 座席(車端部)


車端部の一人がけの全景(左/上)と、全展開状態(右/下)。
座席の座り心地ですが、座席の形状自体はかなり作りこまれているように感じました。リクライニングをすると座面がチルトする構造(パネルで微調整可)になっており、腰にかかる負担も少なくなっています。


車端部の2人がけ席(左/上)と、全展開状態(右/下)。
肝心の座り心地ですが、座面がどうにも滑りやすいのは‟革”の宿命でしょうか。また隣席側のひじ掛けは、リクライニング機構とのかねあいからかパーティション付近でバッサリ終わっています。リクライニング時はこれが特に問題となり、(右/下)のようにひじかけが全く使えません。
ファンサイトを謳った実質アフィリエイトサイトなどでグランクラスを絶賛する記事はたまに見かけますが、細かい部分にはかなり‟荒削り”な要素が垣間見えます。それが面白いところでもあるのですが、座席単体としてはやや難と言わざるを得ないというのが率直な感想でした。
グランクラス – 座席の正面


2人がけ(左/上)と1人がけ(右/下)を、それぞれ正面から見た様子。
1人がけ席の方が通路側のひじ掛けが大きく、一人あたりの専有スペースではこちらが勝っています。微々たる差ではありますが…(苦笑)。
グランクラス – 座席まわりの設備


枕部分(左/上)と、読書灯(右/下)のアップ。
読書灯のアームはフレキシブルアームで、自分の(ある程度)好きな位置まで持ってきて照らすことができます。読書灯の先端をクルッと回すことて入切しますが、その部分に「ON/OFF」的な記載があるわけではないので初見では迷うこと必至です(苦笑)。


カクテルテーブル(左/上)と、ダイニングテーブルの展開状態(右/下)。いずれも片面・両面で使用できるほか、ダイニングテーブルは利用者の身体に合わせて位置が変えられる構造です。
ダイニングテーブルは、センターアームレスト下のパネルに収納されています。ただこのパネル周り、正直なところかなりチャチっぽい作りなので展開時はていねいに扱いましょう(→「備考」も参照)。
【備考:E7系のダイニングテーブル事情】
ちなみに後に登場した北陸新幹線のE7系では、(理由は不明ですが)ダイニングテーブル周りの構造が変更されています。


ひじかけ部分(左/上)と、リクライニング・レッグレストなどの操作パネル(右/下)。
グランクラスではリクライニング・レッグレスト・座面の3つが調整できますが、パネル上の「たおす」「おこす」を押すとこの3つが同時に展開・収納されるようになっています。パネル下半分で個別調整も可能ですが、私のようにこだわりでもない限りは「たおす」「おこす」ボタンだけで基本的に事足りるかと思います(笑)。


ひじかけ下のコンセントのアップ(左/上)と、2人がけ中ひじかけの様子(右/下)。
コンセントの位置から、カクテルテーブルは充電時のスマホ置き場などとしても使えそうです。
グランクラス – その他の車内設備


通路(左/上)と、窓周りのアップ(右/下)。
床面は赤じゅうたんとなっており、高級感の演出に一役買っています。窓も、後ろから窓枠・荷物棚を照らす凝った構造。昼間の時間帯はそこまで目立ちませんが、写真のような夜間・トンネル内走行時はかなり幻想的に浮かび上がるように感じます。


荷物棚(左/上)と座席番号の表記(右/下)。
荷物棚は、航空機などで見かけるハットトラック式です。ハットトラックの表面はワインゴールドになっており、隅々まで高級感にこだわった作りなのが垣間見えます。ややバブリーにも見えなくはないですが…(苦笑)。
グランクラス – デッキと客室の仕切扉


運転席側のデッキと客室の仕切扉の全景(左/上)と、非常通報器などの様子(右/下)。
ドア脇には、非常用のSOSボタンや通話器・懐中電灯などが備わります。


運転席側から見た、仕切扉の全景(左/上)と、マガジンラックの様子(右/下)。
仕切扉は左右からLEDで照らされており、車内側のそれとは対照的に明るい設計になっています。ドア脇にはマガジンラックがあり、開業当初は新聞・雑誌・時刻表のサービスが行われていたようですが、私が取材した2025年当時は(JR東日本の車内誌の)「トランヴェール」がぎっしり詰まっていました(苦笑)。


9号車側から見た仕切扉の全景(左/上)と、マガジンラック・ゴミ箱の様子(右/下)。
グランクラスの乗客は10号車からの乗車・降車が前提らしく、こちらは上と比較してかなりあっさりした作りになっています。基本はグランクラスの乗客がトイレ・洗面台を利用する際にしか通らないためか、こちらのマガジンラックはカラッポでした。
グランクラス – 乗降扉


10号車のデッキの全景(左/上)と、手すりのアップ(右/下)。
手すりは本革が巻かれており、さわった時のひんやり感は全くありません。隅々まで‟他とは違う”が盛り込まれた車内なのが面白いところです。
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・グリーン車
・普通車
・トイレ・洗面台
概説
デビュー年:2011年
東北新幹線を始めとするJR東日本管内の新幹線の高速化、及びE2系などの後継車として2011年3月にデビュー。
先に登場していた試験車両「FASTECH 360S」の試験データを反映し、走行性能と快適性の両立を図った。高速運転に伴う騒音防止のため、ロングノーズの先頭形状や、車両連結部分の全周ホロなど数々の新機軸を備える一方で、フルアクティブサスペンションや車体傾斜装置を導入するなど快適性にも配慮している。
編成は10両で東京寄りが1号車。9号車はグリーン車、10号車はファーストクラスのような位置づけである「グランクラス」が国内で初めて設定されている。
インテリアのコンセプトは「Exclusive Dream-特別な旅のひとときをあなたに」であり、普通車にも全席に上下可動式のピローがついたり、女性専用の洗面台スペース設置など、車内設備にも新しい取り組みが多く見られるのが特徴。
現在は東北・北海道新幹線の全線で、「はやぶさ」「はやて」「やまびこ」「なすの」に幅広く運用。このうち「はやぶさ」(一部除く)ではグランクラスアテンダントによるフリードリンクなどの車内サービスも実施されている。