キハ47形8000番台「九州(唐津)」
長崎本線の久保田から、佐賀県の北西部・西唐津までを結ぶ唐津線。全列車が久保田から長崎本線に直通しており、運行系統上の唐津線は実質的に「佐賀~西唐津」となっています。
そんな同線のメインを担っているのが、唐津車両センター所属のキハ47形です。同所はキハ125形も在籍していますが、あちらは筑肥線での運用がメイン。他方の唐津線は、いまだにキハ47形のほぼ“独壇場”となっています(※2025年現在)。
写真は唐津駅にて発車待ちのキハ47形。利用促進をもくろんだ「>>ロマ佐賀列車」のラッピングが施されていますが、ベースの塗色は国鉄晩年から続く九州色を堅持しています。さっそく車内を見ていきましょう。
モケット

(左)座席 (右)カーテン
撮影日時・場所
撮影日:2025年10月
撮影場所:唐津線 唐津駅 車内
備考
説明の簡略化のため、基本構造は同一の「キハ40・47・48形」を総称して「キハ40系列」と呼称する場合があります。
車内全景

車内の全景。
車内はおおむねデビュー当時からの雰囲気を残していますが、通勤ラッシュ対策なのか、ドア脇の座席が撤去されています。
ボックス席を2区画撤去して、ロングシートをそれぞれ“寄せた”ような作りとなっており、これは鹿児島地区のキハ47形でよく見られた仕様でした(→「備考」も参照)。
【備考:取材した車両について】
取材中「これ鹿児島仕様の内装だよね…?」と思いながらシャッターを切っていた私でしたが(笑)、この車両の番号である「キハ47 8126」を検索したところ、2021年まで鹿児島に所属していた車両だったようです。
唐津への転属後も、そのままの仕様で運用されているのでしょう。
クロスシート


ボックスシートの様子。(左/上)が全景、(右/下)が座席単体のアップです。
JR九州の国鉄型車両の座席モケットは「青い市松模様」が主流ですが(>>103系1500番台など)、私が乗り合わせたキハ47形はなぜか茶色の市松模様でした。これもどうやら、鹿児島に所属するキハ47形の“仕様”だそうです。
もっとも、ゆえに交換用の座席は青いのしかすぐ手配できないのか、(左/上)のように一部が色違いになっている区画も存在しました(苦笑)。
ドア脇 – ロングシート


ドア脇のロングシート。ドア間(左/上)と、車端部寄り(右/下)です。
こちらの区画は、座席自体を移動したときに3人がけに統一されました。(左/上)が元・2人がけ、(右/下)が元・3人がけ区画であり、窓の並び方が異なることから見分けがつきます。
車端部


車端部の区画。比較用に、トイレなし(左/上)と、トイレあり(右/下)の様子です。
トイレ付きの区画は、水タンクを屋根に搭載している関係で天井がやや低いのが特徴です。


車端部のボックス席を横から見た様子(左/上)と、壁際の座席(右/下)。
壁際は、貫通扉の関係でやや狭くなっていますが、これはキハ47形共通の仕様ですね。実際に見ると、写真以上に狭いです(苦笑)。
運転台直後の区画


続いて運転台直後の区画。比較用に、運賃箱を展開した状態(左/上)と、収納した状態(右/下)。
座席は全て撤去されていますが、手前は荷物棚を残す一方でつり革は撤去、奥は荷物棚を撤去してつり革を残すと、なかなか不思議なしつらえになっているのが特徴です(苦笑)。
窓間には、スタンションポールを兼ねた思われる金属棒も。独特な構造なのが、改造車らしいポイントと言えそうです(→「備考」も参照)。
【備考:ここ、もともとはどんな仕様だったの?】
ワンマン機器が設置されていないキハ47形の車内は、(会社こそ異なりますが)>>キハ47形「四国(徳島)」、>>キハ47形「新潟地区 クロスシート車」の項目で紹介しています。ぜひ併せてご覧になってみてください。


運賃箱(左/上)と、運賃表示器(右/下)のそれぞれアップ。
車内設備


天井を見上げた様子(左/上)と、荷物棚のアップ(右/下)。
扇風機が残っているほか、冷房装置も独立機関式(後述)であり、天井自体はデビュー当時からのすっきりした雰囲気が残っています。


窓間のコートかけ(左/上)と、冷房装置の様子(右/下)。
冷房装置は荷物棚を完全にふさいでしまっていますが、これはJR九州のみならずキハ40系列で全国的に見られた仕様でした(→「備考」も参照)。
【備考:キハ40系列の冷房装置事情】
九州地区のキハ40系列は1987年から冷房化改造がスタートしており、いずれも独立機関式のAU34形(あとに機能強化版のAU600K)を搭載しています。
※ 冷房の独立機関式・機関直結式についての解説は>>キハ47形「四国(徳島)」の項で、機関直結式の冷房を搭載していたキハ40系列の内装は>>キハ40形「只見線・磐越西線」の項で、それぞれ紹介しています。


座席番号のプレート(左/上)と、非常通報ボタンや車番表記など(右/下)。
座席番号の表記は、オリジナルとは異なるゴシック体に近い書体になっています。近年交換されたのでしょうか。


通路(左/上)と、整理券発行機の様子(右/下)。
ドア


乗降用ドア(左/上)と、入口部分のステップ(右/下)。
キハ47形はキハ40系列の中で、唯一両開きのドアを備えているのが特徴です。
トイレ


トイレを外から見た様子(左/上)と、内部の様子(右/下)。
トイレはデビュー当時からこんな感じと思われ、特に手が加えられた形跡はありません。錆びや汚れがあちこちに見られるのは、この車両の経年を考えると致し方ないところでしょうか。トイレ自体はきれいに維持されていました。
概説
デビュー年:1977年(車両)
1950年代に製造されたキハ10系を初めとする通勤用気動車の後継として1977年にデビュー。1982年までに888両が製造され、日本全国の非電化区間で主に普通列車として用いられた。
基本は両運転台のキハ40系列、片運転台のキハ48形、両開きの乗降ドアを備えたキハ47系に大別されるが、製造後、各地へ転配されたことから必要に応じた改造を受ける車両も多く、番台区分は多岐に渡る。

