富山地方鉄道16010形(第1編成)


かつて西武鉄道の”顔”として君臨した「レッドアロー」の車体を譲り受けて登場したのが、この富山地方鉄道16010系です。富山地方鉄道には1995~1996年にかけて2編成が移籍し、長らく「うなづき」号などの特急列車に使用されていました。
2011年に第2編成が「アルプスエキスプレス」に改装され、オリジナル仕様のままの第1編成は普通列車をメインに運用されているようです。
写真は上市駅に停車中のカット。細部の違いは挙げればキリがありませんが、初代「レッドアロー」の雰囲気が今もよく残っていました。さっそく車内を見ていきましょう。
モケット



(左)座席 (中)カーテン (右)カーテン
撮影日時・場所
撮影日:2025年2月
撮影場所:富山地方鉄道線 上市駅 車内
備考
当ページでは、西武鉄道時代の雰囲気をよく残している第1編成の内装を取り扱います。
車内全景

車内の全景。
シートカバーがポケット式となって雰囲気はいくぶん変わりましたが、座席や天井まわりに限っては西武時代末期の仕様がそのまま残っています。
この仕様は、1987年に(今で言うところの)リニューアル工事を受けたときのもので、西武での引退までこの仕様で運用されていました。
座席


座席に移ります。全景(左/上)と、リクライニング状態(右/下)。
どことなく(内装の更新工事を行った)国鉄型の特急車両でも見られそうな座席ですが、これが改造当時のトレンドだったのかもしれません。
取材時は、一部の座席でリクライニングが動作しない・復帰しない個体がチラホラ見受けられ、座席本体にもだいぶ”年季”が入っているのは否めないようでした。


非ボックス状態でのカット(左/上)と、座席を正面から見た様子(右/下)。
富山地方鉄道では近年、折返し時の手間を省略するためかボックス状態に座席をセットしているようす。回転機構そのものは生きており、私の取材時もあえて片方の座席をまわして(左/上)の状態で乗っている方を見かけました。
【備考:特急運用時の座席事情】
富山地方鉄道の特急列車は「立山」(電鉄富山~立山)・「くろべ」(電鉄黒部~宇奈月温泉)が運行されており、この16010形もときおり使用されることがあります。
別日に16010形の特急運用を観察したのですが、座席は普通列車運用時と同じくボックス状態でセットされていました。


車端部のテーブルのアップ(左/上)。
ほかではあまり見かけない形状だなと感じましたが、座席を回してみて納得(右/下)。回転時のクリアランスを確保するために、この形状になったようです。
ちなみに表面も白地と木目調の2種類あるようですが、これは西武時代からの仕様なのでしょうか?
車端部


続いて上市寄り車両の車端部の様子。全景(左/上)と座席のアップ(右/下)です。
西武時代はトイレ・車販準備室がありましたが、富山地方鉄道では撤去~ボックス席のスペースとして使用されています。
座席は壁に寄せて設置されているため、リクライニングや回転は現実的に使用できません。
車内設備


天井(左/上)と荷物棚の様子(右/下)。
天井は、大型の照明を中央に1本ドンッと通し、左右に空調の吹出口を配する構造です。これと逆の構造(照明が左右に2本、中央に空調)はよく見かけますが、このタイプはなかなか珍しい気がします。


窓間のコートかけ(左/上)と通路の様子(右/下)。
床材は西武時代のまま使用されています。かつてはもう少し赤みが強く、高級感を感じるように記憶しているのですが、最近はちょっと色あせ気味のようでした。
車端部 立席スペース


富山寄りの車両の車端部。全景(左/上)と天井の様子(右/下)です。
ボックス席を設置した上市寄り車両に対し、こちらはつり革・窓・ヒーターを配した立席スペースとなっています。


立席スペース(左/上)とつり革のアップ(右/下)。
この区画にはかつてコカ・コーラ~伊藤園(2021年の一時期)の自動販売機がありましたが、現在は撤去されたようです。
ワンマン機器


運転台後ろの全景(左/上)と運賃箱の様子(右/下)。
16010形は富山地方鉄道への移籍後しばらくはツーマン車(運転士と車掌が乗り組む形態)として運用されていましたが、2005~2006年にかけてワンマン化改造が行われています。
この運賃箱と運賃表(後述)はその際に設置されたもので、どちらも路線バスなどで見かけるのと同一のようです。


運賃表のアップ(左/上)と、ドア脇のフリースペース(右/下)。
このフリースペースは特段案内されていないようですが、私が乗車中に観察した限りでは、実質的に車いす・ベビーカー向けのスペースとして使用されているようです。
座席の撤去跡は黄色に目張りされており、見るから「かつて座席があった」と分かる設えになっています(苦笑)。
乗降扉・運転席


ドア(左/上)と、おまけで運転席のアップ(右/下)。
運転席のメーターは西武5000系時代のままですが、マスコンハンドル・ブレーキ弁は京急(旧)1000形から持ってきた部品とのこと。ハンドル間には後年ワンマン機器が、運転台中央には車内監視用のモニターが設置されるなど、運転台は西武時代から大きく変わっているようです。
概説
デビュー年:1995年(富山地方鉄道でのビュー)
西武鉄道5000系「レッドアロー」を譲り受けて1995年にデビュー。
西武5000系の走行機器が後継の10000系(ニューレッドアロー)に転用されることが決まっていたことや、西武時代は6両で運用されていたところ、富山地方鉄道では3両となり機器構成も大幅に変わることが想定されたため、車体・車内設備のみが富山地方鉄道に譲渡されている。
この経緯から、モーター・制御器・台車などはJR九州の485系、マスコンハンドル・ブレーキ弁は京急(旧)1000形、制御装置は営団3000系から流用。会社を超えて、さまざまな車種の機器を組み合わせた作りとなっているのが特徴である。
車内はおおむね西武鉄道時代を踏襲するが、トイレ・車内販売準備室は撤去されて立席スペースとなった。2005~2006年にかけてワンマン化改造・3両→2両への編成短縮、2011年には第2編成が内装を大幅に更新した「アルプスエキスプレス」に改造されるなど、時代に合わせた改造を経ながら2025年現在も現役。
2025年現在は、普通列車として富山地方鉄道全線で運用。このほか、特急「くろべ」「立山」などの優等列車に使用されることもある。