弘南鉄道7000系「大鰐線」

弘南鉄道7000系「大鰐線」

奥羽本線の大鰐温泉駅に隣接する大鰐駅から、中央弘前までを結ぶ弘南鉄道大鰐線。車両は1988年に移籍してきた元・東急電鉄の7000系が使用されており、弘南鉄道でも7000系を名乗っています。

いずれも1963~1964年の製造で、全車がすでに‟還暦”入りしているのは特筆すべきポイントでしょう。長年にわたって大鰐線を支えてきた同車ですが、大鰐線自体の存廃が危ぶまれている昨今、この車両の行く末も決して安泰とは言えないようです。

さて、写真は真冬の大鰐駅でのカット。さっそく車内に入っていきます。

モケット

(左)座席 (中)優先席 (右)カーテン

撮影日時・場所

撮影日時:2024年12月

場所:弘南鉄道大鰐線 大鰐駅 車内

備考

特にありません。

普通車 車内

車内の全景。すおう色のロングシートがズラッと展開しています。

やけに天井がすっきりしていますが、それもそのはずでこの7000系には冷房がありません。他方、座席下にはヒーター(暖房)があるので冬場の利用はご安心ください。暖房は、弘南鉄道への移籍時に性能強化も行われたとのことです。

大鰐線沿線の平均気温は真夏でも26~27℃なので、非冷房でもなんとかなる範囲という同線ならではの仕様と言えるかもしれません(→「備考」も参照)

【備考:乗客の「手」で、涼をとる試みも行われています】

もっとも、毎年のように猛暑続きの昨今ではそうも言っていられなくなったようで、近年では夏場に「弘南鉄道応援うちわ」の配布が行われています。

協賛者から資金を集めて作った「うちわ」を乗客に配布する取り組みで、2021年度からスタート。協賛(=出資)個人でも可能とのことなので、興味のある方はぜひ出資してみてください。

例年5~7月ごろになると、弘南鉄道の公式サイトにて協賛者の募集が行われます。

座席

座席(左/上)と、座面のアップ(右/下)。

座席は5人がけを二つ並べた10人がけです。かつてはモケットの擦れや明らかな補修跡が残る座席が多かったのですが、私が取材した2024年12月時点では状態のよい座席ばかりでした。

車端部

続いて車端部区画の4人がけ。全景(左/上)と、座席の様子(右/下)。

貫通路(隣の車両との通路)はやけに広いですが、これは昔の東急車の‟象徴”とも言える仕様です。東急8000・8500系まで採用されましたが、9000系以降は一般的な幅の通路になりました。

車端部 優先席

続いて優先席区画。例によって全景(左/上)と、座席のアップ(右/下)です。

写真は片側だけ(+背もたれのみ)がシルバーシートとなっていますが、別編成では両側がシルバーシートになっているものも存在するなど、車端部にも何パターンかあるようです。

車内設備

天井(左/上)と、荷物棚のアップ(右/下)。

扇風機と照明のみのすっきりした天井、文字通りの‟網”棚といったノスタルジーが溢れる光景となっています。このあたりはデビュー時からこんな感じなのでしょう。

大鰐線では、列車内に自転車を持ち込める「サイクルトレイン」というサービスが行われており、各座席の両端には自転車固定用のベルトが設置されています。

ベルトのアップ(左/上)と、利用案内(右/下)。「サイクルトレイン」が実施されるのは毎年4/1~11/30(※一部日除く)ですが、ベルト自体は実施期間外の真冬でもそのまま設置されているようでした。

通路(左/上)と座席下の様子(右/下)。

製造からすでに60年超え、さすがに‟年季”は否めませんがメンテナンスはしっかりされているようです。実際に見ると、写真で見る以上にきれいに維持されている印象でした。

つり革

つり革(左/上)と、1両に一つだけあるハート形のつり革(右/下)。つり革本体は「りんご」イメージののフェルトは沿線の岩手山をイメージしたものだそうです。

つり革同士の間隔がだいぶ開いているのは、かつての新型コロナウィルス流行時の「密」回避のなごり。2020年頃に一部のつり革が撤去されており、5類移行後の現在もそのままとなっています。

連結部分

連結部分の渡り板(左/上)と、貫通面の窓のアップ(右/下)。

車内はかなりきれいに保たれているとはいえ、サビの浮いた渡り板にはこの車両の‟長い歴史”を感じます。

非常用ボタン2種

車内の非常用ボタンを2種類紹介。連結面上(左/上)と、一部ドア脇(右/下)です。

ドア脇のボタンは単なる通報ボタンですが、連結面上はそれに加えて一斉開放コック(写真左)も設置されています。

運転台直後・ワンマン機器

運転台直後の様子。デハ7039(左/上)と、デハ7040(右/下)の様子です。

一見同じかと思いきや、運転席側の台の色味・禁煙プレートの有無・運賃箱の向き・案内表示の体裁など、細かいところが異なるのは面白いところです。

運賃箱のアップ(左/上)と、運転席の様子(右/下)。

運転台はデハ7040で撮影しています。こちらも(他の方が撮影された写真を見る限り)車両により、ワンマン機器などの配置が多少異なるようです。

ドア

乗降用ドア(左/上)と、ドアスイッチの様子(右/下)。

ドアスイッチは、弘南鉄道移籍後の1995年に設置されたもの。どこか、家庭用の照明スイッチのようなデザインなのが特徴です。

概説

デビュー年:1988年(弘南鉄道7000系としてのデビュー)

弘南鉄道で使用されてきた旧型車両の置換を目的として、1988年にデビュー。東急電鉄で使用されていた7000系の譲受車である。

車体のフォルムは東急時代から大差ないが、弘南鉄道での運用にあたって耐寒耐雪化改造が施されている。1991年のワンマン改造、1995年のドア半自動化を経て2025年現在も現役。

このほか、弘南鉄道への入線にあたって先頭車化改造を行った7100・7150形が存在する。

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