小田急電鉄8000形「更新車」


生まれが平成初期の私にとって、「小田急」と言えばいまだに白地に青帯の車両が真っ先に思い起こされる今日この頃です。そんな昔ながらの塗装を令和の時代まで残していたのが、この小田急8000形です。
長年小田急の輸送を支えてきた同車ですが、後継の5000形に押される形で2022年から廃車がスタート。2025年現在は半数程度にまで数を減らしており、今後が気になる車両です。さて、さっそく車内に入っていきましょう。
モケット



(左)一般席 (中)優先席 (右)床
撮影日時・場所
撮影日:2017年11月5日
撮影場所:小田急電鉄多摩線 唐木田駅 車内
備考
特にありません。
車内全景

車内の様子。
元々8000形は内装を薄い青・床材を薄いグリーン・座席は青系と全体的に寒色系でまとめていました。しかし、更新工事に伴って化粧板は白系に一新。車内は更新工事前の8000形と比べ、かなり明るい雰囲気になっています。
内装面のカラーリングは全面的に更新されているとはいえ、車内の窓配置や座席両端のポール、荷物棚などは更新工事前からのものを流用しています。どことなく「一昔前の車両」の雰囲気がぬぐえないように感じるのは、それゆえなのかもしれません。
座席


座席の様子。座席は更新工事時に、派手な赤系のモケットをまとった張りの強いバケットシートに交換されています。
写真は2008年度に更新された8264編成で撮影しており、座席間の手すりは曲線を描いた4000形に近いデザインです。ただ、更新時期によっては「手すりが直線」の車両もあるらしく、この車両も何だかんだ車内的に奥が深いと感じます(笑)。
座り心地はかなり固め。座席モケットがフワッというよりはざらざらした雰囲気に近いので、全体的な身体のホールド性としてはまずまずと言ったところでしょうか。


座席の手すりのアップ(左/上)と非常用ドアコックの様子(右/下)。
車端部


車端部区画の全景(左/上)と、座席のアップ(右/下)。この区画のみ床材の色が青系ですが、これは優先席の区画を示す小田急共通のサインです。
「あれ、ここ一般席だよね…?」と思ったアナタは正解です。これについては下記に長々としたためましたので、興味のある方は読んでみてください(→「備考」も参照)。
【備考:ちぐはぐ優先席が生まれたワケ】
かつて小田急の車両は、各号車の「新宿寄り」に優先席を設置していました。しかし(千代田線経由で乗り入れてくる)東京メトロの車両は優先席が「小田原寄り」にあり、区間によっては「列車によって優先席の位置が真逆」という状態が発生していました。
これを解消するため、2009年に行われたのが「小田急の車両も(東京メトロに合わせる形で)優先席を小田原寄りに移設」する工事です。
この工事によって一般席→優先席となった区画は、床も優先席仕様の青いタイプになった(後述)一方で、優先席→一般席区画の床は”元・優先席時代”のまま存置されています。
(さらに備考)
ちなみに、撮影した8264編成は(優先席の位置が変わる前の)2008年に更新工事を受けたためにこのような内装になりましたが、8000形の更新は2013年まで続いていました。そのため、優先席位置が変更された後に更新工事を受けた編成は、一般席の車端部が通常の床材となっているようです。
優先席


で、こちらが優先席の様子。
基本的な見付は一般の車端部に同じですが、「座席モケットが濃紺」「つり革を黄色いものに変更」「黄色の手すりを増設」などの違いがあります。
フリースペース


更新工事に伴い、先頭車両には車いすやベビーカー利用者向けのフリースペースが新設されました。7人がけ座席のうち、片側3人分をフリースペースとしています。
フリースペース部分の四角いクッションのようなものは、元々跳ね上げ式の補助席だったもの。2010年頃から使用中止となり、現在は上から座席モケットと同じ色のカバーがかけられて補助席としては廃止されています。


フリースペースの設置に伴い、非常通報器(左/上)が新設されました。
またフリースペース隣の手すりのポールは、この区画でのみ見られる形状となっています(右/下)。
その他の車内設備


天井の様子(左/上)と荷物棚の様子(右/下)。
天井は更新工事に伴って化粧板を貼り替えていますが、それ以外は大きく変わった点はなさそうです。


一般席(左/上)と優先席(右/下)のつり革の様子。
一部のつり革はやや低めの位置に設置されており、背の低い人でも握りやすくなっています。また更新工事の時につり革は総入れ替えされており、見た限りでは>>3000形で見られるのと同一仕様のようです。
ドア


乗降用ドアの様子。
「戸袋脇に縦に黄色のラインを追加」「ドア上にLED表示装置の新設」以外、大きな変化はありません。
概説
デビュー年:1982年
輸送力増強を狙いつつ、各停から急行まで幅広く運用できる車両として1982年にデビュー。以後、1987年まで6両編成・4両編成ともに増備された。
制御方式に当時としては先進的であった界磁チョッパ制御を取り入れている。
2002年以降から車体更新が始まっており、現在は全編成が更新済みとなっている。この際、一部編成を除き足回りはVVVFインバーダー制御に交換された。更新工事の時期が長期に及んだため、更新時期により制御方式や各種機器が異なっているほか、内装についても細かい差異が見られるのが特徴。
小田急線全線で運用されている。