東武300・350系「しもつけ」「きりふり」「ゆのさと」「尾瀬夜行23:55」「スノーパル」ほか
「スペーシア」「リバティ」に代表される東武鉄道の特急ですが、それに混じって古くからの車両も活躍していました。その中も“老兵”だったのが、この東武300・350系です。
かつて「急行りょうもう」で活躍していた1800系に簡単な改造と塗色変更を施したもので、「きりふり」「ゆのさと」「尾瀬夜行23:55」など様々な列車で活躍してきました。
2017年に入って300系が全車引退し、350系も2020年6月の「しもつけ」廃止に伴い定期運用から撤退。以後はときおり臨時「きりふり」に充当されていましたが、2022年3月で正式に引退となりました。すでに全車が廃車・解体されています。
車体側面を2アングルから。
外観上の大きな差は塗色くらいで、それ以外は1800系時代の面影をよく残していました。
モケット
(左)座席 (中)カーテン (右)床材
撮影日時・場所
撮影日:2017年9月8日
撮影場所:東武宇都宮線 「しもつけ」283号 東武宇都宮駅 車内
備考
300系と350系は両数が異なるのみで内装はほぼ同一のため、当サイトでは「300・350系」として紹介します。
車内全景
車内に入ります。
300・350系への改造時に座席モケット・荷物棚の交換など細かいマイナーチェンジが図られていますが、基本的な見付は1800系時代と大差ありません。
車内を反対から見た様子(左/上)と天井の様子(右/下)。
車内の化粧板は白系、座席モケットと客室・デッキの仕切扉の窓(写真奥)が茶色系と、レトロな中にも統一感を感じる作りでした。
座席
座席(左/上)と、車端部区画の座席(右/下)。
一見ではいかにもリクライニングしそうに見えますが、リクライニング機構は設けられていません。
付帯設備は背面テーブル・カップホルダー(背面テーブル内)・窓側のテーブル・フットレストなどと、妙に充実。もっとも窓際のテーブルは背面テーブルと完全に干渉してしまうので、実際にはどちらか片方を使うことになります。
座席背面のアップ(左/上)とフットレスト部分の様子(右/下)。
フットレストは土足禁止面つきで、クルッと展開することで転換できます。もっともシートピッチが960mmのこの座席では、このフットレストが‟本領”を発揮する場面はそこまでなさそうに感じます(→「余談」も参照)。
【余談:持っている設備は良くても…】
この座席、使い分けできるテーブル、土足禁止面までついたフットレストなど、持っている設備ひとつひとつは悪くありません。ただ、全体としての使い勝手にはいまいち難があり、非常にもったいないなと感じてしまいます。
「一対一で話すと良い人だが、集団になると…」というのは世の中よくある話ですが、それと同じことがこの座席にも言えるかもしれません。
座席を正面から見た様子(左/上)と、座席台座の様子(右/下)。
写真右の座席台座ですが、台座本体が微妙に丸みを帯びています。この「丸みのある台座」は近年ほとんど見られなくなっており、とても貴重な存在でした。
デッキと客室の仕切扉
デッキと客室の仕切扉(左/上)と、のぞき窓から見た車内の様子(右/下)。
このあめ色の窓は、(東武の車両に限らず)古い特急型車両でよく見られた仕様でした。
その他の車内設備
荷物棚(左/上)とコートかけ(右/下)の様子。
荷物棚は300・350系への改造時に交換されているものと思われますが、これもやや一昔前の雰囲気を感じます。
通路(左/上)と車内から見た窓(右/下)の様子。
扇風機
天井部分のクーラー(左/上)と、吹出口のアップ(右/下)。
吹出口の「T」のロゴは、東武鉄道の旧ロゴか何かかと思いましたがどうやら違うようです。ご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひご教示ください。
戸袋窓
先頭車にある戸袋窓の、外観(左/上)と車内から見た様子(右/下)。
この区画のみ、窓が2分割されているのが特徴です。
デッキ部分通路・自動販売機
1・4号車にる、トイレ・洗面台自動販売機コーナー1・4号車の全景(左/上)と、連結部分の表記の様子(右/下)。
この連結部分の表記は「東武ならでは」とも言えるもので、他社ではおよそ見かけない注意書きでした。最近デビューの車両では見かけませんが、現在でも8000系や10000系でも見られます。
トイレ反対側の自動販売機(左/上)と、その脇にある「空缶入れ」のアップ(右/下)。
この空き缶入れは1800系時代からのものでしょうか。たばこの吸い殻に関する記述があるのが、時代を感じます。
※ 以後、トイレ内部の写真が含まれます。
トイレ
1・4号車(350系の場合)にはトイレが設けられています。
トイレは国鉄型の車両でもよく見かけた銀色の便器ですが、他方の洗面台は独自のデザインなのが面白いところです。
概説
デビュー年:1991年(300系・350系としてのデビュー年)
200系の増備で余剰となっていた1800系を短編成化し、伊勢崎線・日光線における急行列車用として1991年にデビュー。
6両編成と4両編成が存在し、前者は300系、後者は350系とされた。なお、あとに東武鉄道の急行列車は全て急行に格上げされている。
車両の走行機器類に、改造に伴って発電ブレーキ・抑速ブレーキなど勾配線区向けの改造が施されているのが特徴。
登場以降、300系は「きりふり」「ゆのさと」「スノーパル」「尾瀬夜行」、350系は「しもつけ」「南会津」などに運用されていたが、このうち300系が2017年4月で全編成引退。350系は2020年6月まで「しもつけ」(浅草~東武宇都宮)で定期運用があった。以後は臨時「きりふり」などで使用されていたが、2022年3月で引退。引退後は全車が廃車・解体された。