東武30000系
東京メトロ(当時は営団)半蔵門線・東急田園都市線への直通運転用として1996年にデビューしたものの、様々な要因により結局“地下鉄乗り入れ車両”としての本領を発揮したのはわずか数年という、ちょっと不運な車両がこの東武30000系です。現在はほとんどの車両が地上区間である東武東上線で活躍しており、良くも悪くも「単なる通勤型電車」の座に落ち着いてしまった感があります。
編成に関してもそうで、元々6両編成と4両編成が存在しましたが、現在は一部を除き10両編成固定での運用が行われています。ここまで「本来持っていたはずの強みを全く生かせていない」車両というのも、近年ではかなり珍しいのではないでしょうか。
写真は夜の小川町駅に停車中の様子。このページでは、そんな30000系の車内を詳しく見ていくことにしましょう。
モケット
(左)普通席 (中)優先席 (右)床
撮影日時・場所
撮影日:2018年7月25日
撮影場所:東武東上駅 小川町駅 車内
備考
特にありません。
車内全景
さて車内に入っていきます。東武の30000系には大きく分けて2パターンの内装がありますが、当サイトではそのうち比較的中期~後期に製造された編成の車内を見ていくことにします。
車内は基本的に白とグレーで構成されていますが、座席回りに青系が多用されているという、メリハリのある雰囲気な車内です。元々地下鉄線内での走行が前提だったためかは分かりませんが、車内は1990年代デビューの車両にしては比較的明るめな印象を感じます。
座席
座席の様子。両端の仕切りはそこそこ新しい雰囲気でありながら、座席が妙に“一昔前”を感じるデザインというのは、この車両がデビューした1990年代の、良くも悪くも(内装面での)過渡期らしさを感じます。
肝心の座席ですが、バケット構造のため座り心地は悪くはありません。池袋から小川町まで乗り通した時もそこまで疲れを感じなかったように記憶しています。
写真(右)は座面のアップ。バケット構造とはいっても、座面の盛り上がりはかなりおとなしめになっており、本来の着座位置からズレて座ってもそこまでの違和感は感じません。
車端部
車端部区画は3人掛けとなっています。連結面の窓や、貫通扉(隣の車両との間を行き来するドア)上になぜか広告枠が設けられているなど、東武独自の仕様が随所に見られるのは面白いところです。
優先席
変わって優先席区画はこんな感じ。座席モケットが灰色、つり革が全国的に流行っている黄色いものに交換されている程度を除けば、一般の車端部区画と大きな差はありません。車内が白っぽいためか、このグレーのモケットの方が全体的なコーディネートという意味でしっくりくるように思います。
なお、写真では窓に貼られた「優先席」のシールを写真に入れるため、意図的にカーテンを開けたまま撮影しています。
フリースペース
一部車両には車いすやベビーカーの利用者向けのフリースペースが設けられています。
天井と網棚
天井の様子(左/上)。空調装置より遥かに大きな幅がとられたラインデリアが特徴です。東武の車両はラインデリアが妙に凝っている車両が多いのですが、この30000系も例外ではありません。席に座った状態だと空調の吹き出し口がうまく隠れているあたり、ちょっとしたデザイン性も感じます。
写真(右/下)は荷物棚の様子。こちらは巷でよく見かけるスタイルです。
中間封じ込め先頭車
おまけとして、中間に封じ込められてしまった先頭車の様子を紹介します。もともと30000系は全て6両編成または4両編成で製造されましたが、東上線への転用で常時6両と4両を併結した10両での運用となることから、中間に入る先頭車は不随車扱いに改造され、中間に封じ込められてしまっています。
写真がその様子。一応乗務員室は残っているものの、転落防止幌も設置されており、実質的にもうこの車両が「先頭に立たない」前提で改造されているようです。
ドア
乗降用ドアの様子(左/上)とドア上の表示器の様子(右/下)。種別、行先、案内表示がいずれも別個に独立した表示板となっており、情報量はかなり多くなっています。
概説
デビュー年:1996年
東武線から東京メトロ半蔵門線、東急田園都市線への乗り入れ用として1996年にデビュー。
元々東京メトロ半蔵門線への乗り入れを主眼に置いて製造されているため、運転台周りや急行灯の設置など、直通先に合わせた設備が搭載されているのが特徴。だが、半蔵門線の開業が遅れたことから、実際の直通運用は2003年までずれ込むこととなった。
その後、後継である50050系のデビューにより、東京メトロへの直通運用からはすでに外れており、現在は東武線内のみで運用されている。現在は伊勢崎線、日光線での運用がメインだが、一部編成が東上線に転属しており、東武線の幅広いエリアで目にすることができる。