流鉄5000形 – 5001編成「さくら」

流鉄5000形 – 5001編成「さくら」

JR常磐緩行線の馬橋駅を起点に、武蔵野線と交差する幸谷駅(JR側は新松戸駅)を経て流山までを結んでいるのが流鉄流山線です。車両は長年、西武鉄道からの譲受車でまかなわれており、現在も新101系を改造した5000形5編成が、日々のんびりと馬橋と流山の間を往復しています。

車両こそ元・西武鉄道ですが、同社は創立より「大手鉄道会社の傘下ではない」「日本民鉄協会にも非加盟」「PASMO・Suicaにも非加盟」と、首都圏の鉄道会社ではかなり珍しい“完全独自路線”を貫いているのが特筆されます。(公式サイトを見る限り)不動産業も手掛けているようですが、メインは鉄道一本。近年の鉄道会社にありがちな“事業多角化”とは完全に真逆の戦略です。
一時はつくばエクスプレスの開業などで逆風にさらされましたが、沿線の根強い需要に支えられ、今日まで安定的に事業を継続してきました。

さて、流鉄の会社紹介はこのあたりまでにして、写真は深夜の流山駅に佇む流鉄5000形。本系列には一編成ごとに愛称がつけられており、当ページではそのうち「さくら」の車内を扱います。基本的には2編成が往復するダイヤとなっているので、乗車の時はどれが来るかという“楽しみ”があるのもマニアとしては嬉しいところ。さっそく車内を見ていきましょう。

モケット

(左)普通席 (右)優先席

撮影日時・場所

撮影日:2020年9月29日
撮影場所:流鉄流山線 流山駅 車内

備考

特にありません。

車内全景

車内に入ります。車内は西武鉄道時代から大きく変わった点はなく、デビュー当初からの雰囲気を色濃く残しています。焦げ茶色の座席モケット、年季の入ったリノリウムの床と、ノスタルジー満載な内装が堪りません。

なお、写真は前述の通り「さくら」編成で撮影しているため、つり革がところどころピンク色のものに交換されているのが特徴です。それ以外にも、化粧板の色合いが微妙に異なるなど細かい違いは編成ごとに存在するようですが、こちらは撮影でき次第ご紹介します。

座席

座席の様子(左/上)と座面のアップ(右/下)。ドア間の座席は5人がけを2つ並べた10人がけと思われますが、着座位置が区分されているわけでは特段ないので実際のところはよく分かりません(苦笑)。実際、ラッシュ時間帯に乗った時はトータル8人がけ程度で使用されている印象でした。

西武時代と比較して、座席の中央部分に手すり(スタンションポール)が新設されているのが特徴ですが、それ以外は昔ながらの雰囲気をよく残している印象です。座面も経年からか、個体によっては写真(右/下)のようにシワが寄っているものも見られました。もっとも、古めかしい車内の中では、これも一つの“風情”としていい味を出している気がします。

流山寄り先頭車:車端部

車端部区画はこのような感じです。背もたれと座面が完全に分離している構造で、背もたれの張りがけっこう強いのに加え、座席と腰の間に空間ができることから負担がかかりにくく、座った感じは見た目以上に快適です。

馬橋寄り先頭車:車端部優先席

変わってこちらが優先席の様子。座席モケットとつり革が黄色いほかは、上で紹介した一般席の車端部と同一です。

ちなみに、座面と背もたれの色が微妙に異なって見えるのは、決して写真の都合ではありません(笑)。単に座席本体の個体差にも見えますが、ここまで色が違うというのもかなり珍しいのではないでしょうか。

座面のアップ(左/上)とつり革の様子(右/下)。優先席のピクトグラム(窓に貼られているもの)は、他の鉄道会社と同一のものを採用しています。

流山寄り先頭車:運転台直後の区画

運転台直後の区画はご覧のようになっており、このうち流山寄り先頭車は2人がけ一般席が左右に展開しています。荷棚部分には非常用のハシゴと思われるものが固定されており、荷物は置けません…もっとも流鉄としての乗車時間は11分程度なので、大した問題にはなることはないのでしょう。

馬橋寄り先頭車:運転台直後の区画(フリースペース)

反対側の馬橋寄り先頭車は、片側の座席を撤去して車いすやベビーカーを使用する利用者向けのフリースペースとなっています(左/上)。(右/下)は貫通路かも居部にあるLED表示装置。次駅案内表示のほか、途中停車駅の案内もされています。

その他の車内設備

天井の様子(左/上)と網棚の様子(右/下)。西武時代から特に変わった点はなさそうです。

床面(左/上)と座席下(右/下)の様子。いずれも西武時代からのものをそのまま使っていると思われますが、年季が入っていながらもきれいに維持されているように感じます。

座席を横から見るとこんな感じです(左/上)。「座面と背もたれが完全に分離している」と上で書きましたが、こういうことです(笑)。

(右/下)は「非常停車装置」なるもので、どうやらこのツマミを下に引き下ろすと、列車が非常停止するようです。元々西武時代から設置されていたもので、今でいう非常通報機に相当するものでしょうか。古めかしい書体に無骨な箱と、なかなか味のあるデザインですが、下手に触れて電車を非常停止させるわけにもいかないので、楽しむのは拝むだけにしましょう。
余談ですが、折り返し時に運転台を覗いてみたところ、車掌用の非常ブレーキ(いわゆる車掌弁)も全く同じものがついていました。

5001編成「さくら」号ならではの仕様として、3色あるつり革をご紹介(左/上)。赤、ピンク、白の順番で並んでおり、これまで飾り気のカケラもない殺風景だった車内(殴)に“彩り”という概念を添えています。なお、バレンタインなど期間限定でつり革が一つだけハート形のものになっていることもあるとのこと。こちらは取材する機会があれば今後ご紹介します。

写真(右/下)は、今や珍しくなった連結面窓のアップ。折からのコロナ禍で、こちらの窓もしっかり開いていました。そういえば編集中に気づきましたが(笑)、消火器が随分と珍しい位置に吊り下げてあります。これは西武時代からの仕様なのでしょうか?

ドア

ドアの様子(左/上)と、ドア手前の滑り止めの様子(右/下)。近年、挟み込み注意の黄色いラインが貼られましたが、それ以外はデビュー当初からの雰囲気をよく残しています。

ちなみにドアチャイムも鳴るのですが、そのスピーカーは座席下にある縦長の出っ張り部分(写真左の優先席下)に埋め込まれている模様。誰もいないのを良いことに、その部分で耳を澄ませてみたところ、確かにこの出っ張り部分から聴こえたので間違いないはずです(笑)。

おまけ

東京から上野東京ラインで40分弱でアクセスできる馬橋が起点の流鉄流山線。とても「東京から40分」とは思えない、ローカルな風情が各駅に残っています。その風情を感じつつ、昔ながらの5000形でのんびりと車窓を楽しむのも決して悪くはありません。

(右/下)はおまけで、流山駅発車時の様子を動画で。私以外、誰もいない車内で撮影しました。写真では伝わり切らない、車内の雰囲気をぜひ感じてみてください。

車両概説

デビュー年:2009年(総武流山電鉄でのデビュー)

つくばエクスプレス線開業後の合理化の一環として、2009年から2013年にかけて2両×5編成が導入された。西武鉄道で余剰となっていた新101系を譲り受けたもの。なお、かつて同じ新101系を譲り受けた3両編成の3000形が流鉄(総武流山電鉄時代)に在籍していたが、本系列と入れ替わる形で廃車されている。

譲り受けに際し、ワンマン運転対応などの工事を施行。1編成ごとに塗色が異なるほか、それぞれに愛称がつけられており、「さくら」「流星」「あかぎ」「若葉」「なの花」と称する。

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