東武鉄道14系「SL大樹」「DL大樹」

東武鉄道14系「SL大樹」「DL大樹」

2017年8月にデビューした、下今市~鬼怒川温泉間を結ぶ「SL大樹」。蒸気機関車・客車の手配・乗務員研修など、日本全国の鉄道会社の協力によって実現した列車で、客車はJR四国に所属していた14系が使用されています。

実際に車内に足を踏み入れると、(下今市~鬼怒川温泉の40分だけと言わず)もっと長く体験したくなるような古き良き“国鉄時代の車内”がそこにありました。さっそく車内を見ていくことにしましょう。

車体側面の様子。

東武では、14系座席車のトップナンバー車が動態で保存されているのも特筆に値します。東武への移籍にあたり、外装も徹底的に整備されたようで、まさに新製当初と変わらないような輝きを保っています。

モケット

(左)普通席 (中)カーテン (右)床材

撮影日時・場所

撮影日:2018年11月16日

撮影場所:東武日光線 「DL大樹」6号 鬼怒川温泉駅 車内

備考

・14系は元々国鉄・JRが保有していた車両ですが、現在は東武鉄道の保有であることから当サイトでは便宜上「東武14系」の名称を用います。

・私が乗車した時はSLの故障により通常は補機のDE10が牽引する「DL大樹」として運行されていましたが、客車は同一であることから当サイトでは便宜上「SL大樹」として紹介していきます。

車内全景

車内の全景。

「SL大樹」運行開始にあたり、車内は新製時に極力近づけるリニューアルが施されたとのこと。車内に足を踏み入れると、国鉄時代の普通席を象徴する濃紺のシート、リノリウムのような飾り気のない床、殺風景な化粧板(笑)など、とても現代とは思えない空間がそこにあります。

車内を反対から見た様子(左/上)と天井の様子(右/下)。

車内は白とグレー・座席は濃紺のモノトーンな車内に、オレンジ系のカーテンが視覚上のアクセントになっているように感じます。

座席

では座席の様子。一般区画(左/上)と車端部区画(右/下)です。

国鉄特急型車両ではよく見られた、簡易リクライニングシート(R51)がデビュー当時の仕様で残されています。この座席にはリクライニングの固定機能がなく、ちょっとでも身体を起こすと「バッターン」とかなり大きな音を立ててリクライニングが戻ってしまうのが特徴でした(→「備考」も参照)

写真でリクライニングが展開されていないのはそのためで、決して私が忘れたというわけではありません(笑)。

【備考:バッタンコシートの思い出】

この座席は、当時ファンの間で「バッタンシート」「バッタンコシート」などと呼ばれていました。

JR四国には、2000年代半ば頃までこの座席の14系がチラホラ残っており、ときおり「ムーンライト松山」「ムーンライト高知」に入ることも。もっとも、当時の評判は「(座席の戻る音が)うるさくて眠れない」が大半だったようです。

当時の掲示板でも「〇〇日発のムーンライト〇〇は、●号車がバッタンコシート」的な情報交換が行われており、それだけ当時の利用者の間では‟重要な情報”だったのが垣間見えました。

続いて座面のアップ(左/上)と座席を回転させた様子(右/下)。

座席回りの付帯設備は窓側の小テーブル網ポケット程度。「SL大樹」ではそれも‟風情”と割り切って楽しむのが良さそうです。シートピッチは910mmで、座席を回転して4人で座るとやや狭苦しい感は否めません。

足元スペースの様子(左/上)と窓枠のアップ(右/下)。

テーブルは壁面に固定されていますが、窓枠にも缶飲料くらいなら置ける幅が確保されています。

荷物棚と座席番号表示

荷物棚(左/上)と座席番号表示(右/下)の様子。

荷物棚は、デビュー当初からこのようなパイプ式だったようです。

仕切扉・荷物スペース

各車両のデッキ脇には、大型の荷物置き場が設置されています。全景(左/上)と、荷物置き場のアップ(右/下)。

写真にはありませんが、2号車のこの区画にはスロープが設置されていました。車いす利用者と車内販売のカート積込みに使われているようです。

荷物置き場の表記(左/上)と、比較用に荷物置き場のない区画(右/下)の様子。

大型携帯品はこちらへ」と「忘れ物・盗難にご注意ください」の書体が異なるのは、後者が後付けされたことによるものでしょうか。

デッキ

続いてデッキ回りをまとめてご紹介。

一部の洗面台は車内販売の準備室として閉鎖されており、ご覧のようにじゃばら式のカーテンが新設されています。洗面台脇に鏡があるのは、国鉄型車両の“定番”ともいえる仕様です。

「くずもの入れ」・ドアの開閉に関する表記(左/上)と、乗降口のステップに設けられているフットライト(右/下)。

この「くずもの入れ」は、現在もくずもの入れとして使用されています。

乗務員室

緩急車(客車の最後尾で車掌用の非常ブレーキを設ける車両)の乗務員室の様子。

曇りガラスに貼り付けられた「乗務員室」の文字も最近ではめっきり見なくなりましたねぇ。

トイレ

トイレ内部の様子。

トイレは真空式洗浄装置を備えたウォームレットに改装されています。「ながす」ボタンのセンサー式化・ハンドソープ入れの新設など、この区画だけ妙に現代的になっているのが特徴です。

「SL大樹」の客車は「運行に当たり、デビュー当初の雰囲気に極力近づけた」と謳われていますが、さすがにトイレはそうもいかなかったようですねぇ(苦笑)。

ヘッドマーク・サボ類

以降はおまけとして、「SL大樹」の外装その他を紹介していきます。

まず、ヘッドマークとテールマーク。テールマークは写真は赤ですが、他サイトを見ていると青などいくつか種類があるようです。こちらは撮影でき次第紹介します。

行先表示(左/上)と大樹のサボ(右/下)。

行先表示は折り返し時の手間を省くためか、区間式の表記が採用されています。

おまけ:リーフレット類と指定券

車内販売リーフレット(左/上)と、座席指定券の様子(右/下)。

「SL大樹」の車内リーフレットは、ほぼ乗務員の方々の「手作り」だそうです。

おまけ:「大樹」写真展

最後に私が乗車した際の「DL大樹」運行時の光景をいくつかご紹介。

客車への誘導は、駅係員の合図灯によって行われます。出発を前に、「DL大樹」の牽引機であるDE10がゆっくりと近づいてきました(左/上)。連結作業にあたり、慎重にDLを進める運転士の‟腕”が発揮されています(右/下)。

鬼怒川温泉駅には、JR西日本より譲渡された転車台が新たに設置され、ここで折り返し時に行うSLの方向転換のデモンストレーションが行われています(左/上)。私が乗車した時は代打のディーゼル機関車でしたが、その場合もDLの方向転換を見ることができます(笑)。

(右/下)は下今市駅での一コマ。「大樹」の運行開始に伴い、運行区間の駅名板は一部が国鉄時代の書式に似せたものに交換されていました。

車両概説

デビュー年:2017年(「大樹」としてのデビュー年)

「SL大樹」「DL大樹」とは、東武鉄道が運行する臨時列車。蒸気機関車の復活運転を主眼としており、C11 207が牽引する場合は「SL大樹」として運行。同機の検査などで使用できない場合はディーゼル機関車DE10による牽引となり、「DL大樹」と名称が変わる。「大樹」の名称は将軍を意味しており、東武沿線ゆかりの日光東照宮(徳川家を祀っている)にちなんだものだという。

本列車に使用される14系座席車は、元々JR四国が保有していたもの。2005年にJR東海がJR四国へ譲渡したが、2016年3月いっぱいで除籍となり、その後東武鉄道へ移籍した。移籍にあたり、14系デビュー当時の外装や内装に極力近づけたリニューアル工事が施されている。

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