2号車の先頭部分の様子（左）。2号車は種車時代の先頭形状を残していますが、（1・3号車がATS-Psを装備しているのに対し）搭載する保安装置が旧式のATS-Snのみであることから、事実上2号車が営業列車で先頭に立つことはほぼできず、実質の“中間封じ込め”となっているようです。
写真（右）は、展望席部分を外から見た様子。窓の位置が一般席区画と比べて明らかに高いのがお分かりいただけるかと思います。また、この部分には岩手県のイメージキャラクターである「わんこきょうだい」があしらわれていますが、これは「Kenji」が岩手県の盛岡支社所属であることによるもの。現在の真っ青塗装になる前のころから、この部分にいたようです。

さて、本項目では座席以外のデッキ・トイレなどを紹介していきます。まずはデッキ部分の通路から。写真左が3号車部分、写真右が車いす対応トイレを備える1号車の通路部分となります。一般に、車いす対応トイレがある区画は通路が目に見えて広くなっているのが、近年はもはや「スタンダード」ですが、「Kenji」の場合は改造された時期が時期ということもあってか、わずかな拡幅のみにとどまっています。

2号車の連結部分は運転台があることから、「車内から先頭部分の貫通扉が拝める」貴重な空間となっています。運転台直後にはかつては自動販売機が設置されていましたが、近年では利用を中止しており、中にあった飲料サンプルも全て撤去されています。いっそのこと、自動販売機ごと撤去してしまっても良かったような気がしますねぇ。

トイレと洗面所は編成中に2箇所設けられていますが、まずは通常のトイレを持つ3号車からご紹介します。トイレは洋式に改造されており、また洗浄方式も近年流行りの真空式であることから、トイレだけを見れば一見ではキハ58系列とはとても思えない作りになっています。
他方、洗面台はご覧の通り、洗面台と鏡の位置が完全にズレてしまっています。元々キハ58系列の洗面台は、線路と平行に設置されていたのですが、改造時にわざわざ（線路に対して）横向きに作り直したものと思われます。こちらの方が、洗面台周りにいろいろ置けるという意味ではいいのかもしれませんが、それなら鏡もシンク上に移設してしまっても良い気がしますが…。ともあれ、なかなか不思議な構造なので、乗車した時は要チェックです（笑）。

かわって1号車の車いす対応トイレはこんな感じ。トイレ本体、洗面台、ジェットタオルが個室内に全て揃っており、（近年の車いすトイレの基準からすると）狭いながらも機能的に仕上がっています。

んで、車いすトイレ向かいにある元々洗面台だったスペースは多目的室として転用がなされました。「多目的室」というとお堅い印象ですが、内部は今風にいうところの「パウダールーム」然とした空間に大改装されています。入口から一段上がったところにあり、一見ではいかにも土足禁止のエリアに見えますが、室内には土足禁止を明確に示す注意書きは見当たりませんでした。実際のところどのように運用されているのかは気になるところです。
洗面台脇にはヒーターも設けられており、私が取材した時も現役で稼働していました。

子ども用のベビーチェア（左）とパウダールーム内のコートかけの様子（右）。コートかけは金色のおしゃれなデザインであり、かなり力を入れて改造されたのが垣間見える気がします（笑）。

取材時に、車内から見えた窓のフチ部分（左）。近年塗装が塗り直されたとはいえ、痛みの出やすいフチ部分はかなり錆びが進行しており、老朽化の進行は否めないようです。（右）は展望席からの眺望。窓上部分は、運転席が眩しくなりすぎないように黒い半透明のフィルムが貼られています。

キハ28形・58形を改造してデビューしたジョイフルトレインで盛岡支社に所属する。3両編成。

元は「サロンエクスプレスアルカディア」として1987年4月にデビューし、新潟を中心に運用されていたが、翌年1988年3月に3両編成のうち1号車（キロ59 508）が、営業運行中に火災事故を起こして全燃。火災を免れた2両は長らく休車となっていたが、1992年に1両を追加改造し、盛岡へ転属したうえで「Kenji」として再デビューしたという経緯がある。

3両編成のうち、中間のキハ29 505の種車であるキハ28 2010は1961年に製造されており、既に50年以上の運用実績を持つ点が特筆される。