キハ58系「こがね」
「グラシア」を改造して2003年に登場したのがこの「こがね」です。基本的には土日に仙台と気仙沼を結ぶ「こがねふかひれ」で使用されていますが、臨時列車として山形地区で使用されるなど、なんだかんだで結構いろいろなところで活躍しています。 さすがに登場から30年近くが経過し、車体のところどころに錆が浮きまくっていますが、それでも金色の車体は「こがね」の名に負けず、いい感じに輝いています。ですが、やはり最近は老朽化が酷いようで、2010年12月を持って引退しました。一見短命な「こがね」ですが、元々1989年に「グラシア」として登場したことを考えると、かなり長生きだった車両といえるのではないでしょうか。
車体側面のロゴ。
普通車
さて車内の様子です。車内は基本的に「グラシア」時代を踏襲しており、モケットやカーペットが変わったぐらいです。車両の片方に3列のシートが並ぶのは、かなり珍しい光景と言えるでしょう。ただ、本当に窓に近い席はともかくとして、通路に面したところも「窓側」として販売されているので注意が必要です。
座席配置は1+2と2+1が交互に配置されている変則的なものです。
2人がけ席の様子。付帯設備はインアームテーブルと、珍しくレッグレストがついています。レッグレストは角度固定であり、フルリクライニングとレッグレストを併用するとかなり快適です。快速の「普通席」としては、まさに破格の設備です。 ただ、庶民である私には、レッグレストは普段あまりお目にかからないだけにどうも使いづらいです。実際私も、レッグレストのところに足をかけて体操座りに近い格好でくつろいでいました。このほうが本を読むの楽なんです、というのは冗談ですが、実際車内を回ってみたところでも、使っている人は鉄道ファンらしき人だけでした。使えばかなり快適なレッグレストですが、如何せんある場所が分かりづらく、「知る人ぞ知る設備」になっているのが現状のようです。
1人がけの様子。とくに2人がけ席とこれといった差はありません。 座面はやや固めです。元々「グラシア」時代はグリーン車として使われていたので、当たり前なのですが非常にゆったりとしています。気仙沼までの3時間弱にはもったいないほどです。
あまり知られていませんが、この座席は45度単位で回転ができるようになっています。つまりこんな感じの配置も可能。 景色を見るための便宜を図ったもののようですが、窓側席で窓に向けて45度回転すると、足元が非常に狭いです。かといって通路側で45度回転すると、今度は通路に足を投げ出す格好になるので、車掌さんや他のお客さんと多少気まずくなります。アイデアはかなりイイ設備なのですが、私が乗ったときは、この「45度機構」で長時間過ごす人は全くいませんでした。多くが数分45度にしてすぐに…という感じでしたね(笑)。
天井の様子。照明装置にはカバーがつけられ、またエアコン部分は完全なカバーで覆われています。荷物棚も交換されていますが、通路側にはやっぱり無いんですね。当然といえばそうなのですが、大荷物だと荷物の置き場に困りそうです。
車内からデッキへのアプローチを撮影。テレビは最近のジョイフルトレインではよく見かける設備ですが、私が乗車した時は全く使用されていませんでした。
一部の窓は、冷房故障時などに備えて、見ての通り開放機構が残されています。他の窓が全て固定化された中、数少ない「急行型車両」を感じる場所です(笑)。
窓の間にはコートかけがありますが、何気デザインがかなりおしゃれなのが目を引きます。その下にはマイクジャックがあります。観光バスよろしく、団体列車でレクリエーションの放送などに使われたりするのでしょう。マイクジャックは全車両にありますが、ここから差して話すと3両いっぺんに聞こえるのか、あるいは1両ごとに別系統になっているのか気になるところです。
荷棚部分の座席表示。一応「通路側」と書いてありますが、マルスでは窓側として発売されているようです。しかし「中央」の表示は、2+3で座席が並ぶ新幹線以外ではなかなか見られません。何気にレアな表記なので乗ったときは是非チェックしてみてください。
2号車のテレビ脇にはなぜか魚のシールが貼ってあります。他の車両にはなく、なぜこの場所にだけ貼ってあるのか本当に謎です(笑)。
トイレの使用表示は、こんな可愛らしい絵柄が使用されています。隣はかつて和式トイレの絵柄があり、こちらも「洋式」に負けず劣らず可愛かったのですが、「こがね」へリニューアルされる時に和式トイレは全廃され、現在は単なる黒い板になっています。
展望コーナー
先頭部分にはこんな感じの展望席があります。入口はこんな感じ。
さて展望席の様子です。展望席は普通車のモケットの色違いが使われています。8人ほど入ったらいっぱいになりそうなこぢんまりとした空間です。
で、そのソファーの様子。座り心地は本当にただのソファーです(笑)。
先頭部分にはこんな感じの丸みを帯びた可愛らしい座席が2脚置いてあります。晴れていればなかなかいい景色を拝むことができます。
展望コーナーの入口方面を見てみます。ドア脇には電照広告(後ろから照明で照らす広告)があります。一般車内とは違い、妙に木目調が多用されているのが目を引きます。
天井には気仙沼のお祭りで使われたタコのようなものが展示されています。このあたりのさりげない「地元アピール」に萌え。
展望デッキは車両の先頭部分を完全に独占する形で設置されています。そのため、進行方向によっては、車掌さんが展望デッキまで出てきて、乗客の脇でドア扱いをしています。展望コーナー内に業務用のゴツゴツしたドアがあるのはかなり珍しいですが、同時に、車掌さんのドア扱いを間近で見られる貴重な機会です。乗ったときはよく見てみてください(笑)。
デッキ
数々の改造の中、デッキ部分は完全に取り残されて昔のままの姿を保っています。写真では見づらいですが、床や壁はかなり痛んでおり、老朽化が進んでいるのは否めません。
一部の車両には、ゴツゴツした床を隠すためか、こんな感じのマットが敷いてあります。ホテルや病院などではよく見かけますが、列車の中ではあまり見かけないシロモノです。
洗面台
洗面所は白を基調としたデザインにリニューアルされています。鏡は一面。手入れは行き届いているようで、かなり清潔な印象を受けました。
喫煙・電話・記念乗車スタンプコーナー
2号車には喫煙コーナーがあり、スモーカー需要への対応もバッチリです。
その中の様子。かなり狭い空間ですが、頑張れば4人は入れます。特に飾り気もない、オーソドックスな空間です。
喫煙コーナーの脇には乗車記念スタンプコーナーがあり、専用の台紙もセットされています。
その台紙とスタンプの様子。台紙は本のようになっており、表紙の片方に「グラシア」時代の塗色が、もう片方に「こがね」が描かれています。スタンプは引退にあわせたものが用意されていました。
その反対側には電話コーナーがあります。JR東日本全体では、公衆電話は撤去されていく方向にありますが、この「こがね」は元々引退が近かったせいか、最後まで公衆電話が残っていました。電話用の椅子も用意されており、何気にけっこう本格的なつくりになっています。
車内の掲示物
2010年12月の引退にあわせ、車内には引退を告知するポスターが貼られています。左側は「こがね」の別れを惜しむ「ストーリー」が展開されており、一ジョイフルトレインの引退にしてはかなり手の込んだつくりになっています。右側は「こがね」の引退にあわせて行われるイベントの告知ですが、車内放送体験など、なかなかこちらも面白そうなイベントが多そう。仙台支社が、この「こがね」をいかに売り込んでいたかが分かりますね。 なお、この写真はクリックすると大きな写真で見られます。(139KB。新しいウィンドウで開きます)
で、こっちは展望スペースに貼られているもの。展望席で席を譲り合うよう促したポスターです。 私が乗車した時は乗車率60%ぐらいで、「行けばどこかに座れる」状態でしたが、こんなポスターが貼られている以上、満席になることも多いのでしょう。
運転席
運転席の様子。技術はかなり古いですが、車体の改造に伴ってリニューアルされており、国鉄型気動車のそれにしては、かなりすっきりとまとまっていると思います。
撮影日時・場所
車両概説
仙台地区で活躍していた「グラシア」をリニューアルして2003年に登場。主に仙台〜気仙沼、山形地区の臨時列車、団体列車を中心に活躍した。老朽化のため2010年いっぱいで退役。